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のら犬余話  作者: 田村弥太郎
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温泉

遠隔地での基地局工事では、当然その地に泊まる事になる。ビジネスホテルや民宿に泊まるのが常であった。

時に温泉宿に基地局を設置する事があった。温泉地は一般的に山間にあり、エリアと示されながらも室内で使えない事が多い。これは、都市部でもビルの中や地下街も同様である。

その場合、各階、各フロアに小さな屋内アンテナを設置する。

 天井に直径十数センチメートルの白くて皿状の物を見掛ける事が有るかも知れない。

山の上にある大きな温泉ホテルにアンテナを設置することになった。隣接地にはゴルフ場もあり、山裾は冬にスキー場になる。

こういう場所は概して、ユーザーからの要望に依り、ホテル側も好意的であった。

大きな建物でクラブハウスも合わせれば、アンテナの数十ヶ所に設置することになり、期間は一ヶ月を超えた。

中田は、その期間をホテルに格安で泊まった。下請け業者は地元の会社で毎日通って来た。

中田は以前、出張で泊まった事があった。部長と一緒で、仕事が遅くなった事もあり、部長が泊まりたがった。

時間も遅く、宿を探した。麓の温泉宿に飛び込むと、ちょうど女将や仲居が玄関先に並んでいた。

「申し訳ございませんが、予約しか受け付けていないんです」

女将が言った。

「因みに一泊、如何程するので」

中田は聞いてみた。

「はい、お一人様五万円となります」

中田は、そそくさと退散した。

道を更に上るとそのホテルがあった。

 中田はフロントに行った。

部屋は空いていた。一泊、二万円近い。

部長に言うと、

「いいよ」とあっさり言った。

中田も出張規定の三倍近いがしようがないと泊まったのだった。

それから数年経っていた。ホテルは海外からの団体客を専門に扱う営業になっていた。その県の空港はアジアからの直行便があった。

団体客のない日は宿泊者がいないが、日中はレストラン等営業しており、中田一人のために昼食を用意してくれた。

中田も時折、作業員にその昼食を一緒に出した。レストランでの昼食に作業員も喜ぶ。工事中の中田の宿泊代はホテルから合算で精算されるので、それを含める事ができた。それでも格安であった。

しかし、団体客がある時は朝夕のバイキングがあり、外国語に交じって中田も相伴したが、他の日は山から下りてコンビニで買った弁当やカップ麺で済ます。

営業しない日は夜警が一人いるだけで、温泉に入る客は中田だけだった。

違う県では、温泉宿を紹介する雑誌には必ず載ると言っていい宿があった。規模は小さく一週間程だったが、名湯に日がな浸かっていた。

休憩時間にはロビーでコーヒーを出してくれた。

工事が終わると、事務所やロビーで電波の強さを測定する。

従業員はアンテナが三本立ち、大層、喜んだのだった。

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