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のら犬余話  作者: 田村弥太郎
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駄目でした

電波塔を建てられない地域がある。反対の看板があった。しかし、キャリア(携帯電話会社)としては是が非でもエリアとするため、あらゆる手段を使った。

大掛かりな鉄塔は建てられない。小さなコン柱を数キロメートル置きに建てる事にした。

中田は現場の責任者にされた。場所は四ヶ所、キャリア側で既に探し出していた。

夏に場所を見ていた。工事は秋に始まり、内二カ所は住宅地から離れ、無事に工事が済んだ。

一カ所は公園があり、高台になった、すぐ脇に建つ二階建てのアパートの陰に設置する。公園の向こうには住宅地だ。

夏に来て二ヶ月後、現場に来た中田は愕然とする。公園のプラタナスはすっかり葉を落とし、住宅地が丸見えになっていた。当然、住宅地からもこちらが丸見えである。

「公園の葉が落ちて丸見え。駄目かも」

中田は前もって加藤に伝えた。

工事が進み、コン柱が建つと民家の住民がこちらを見る事が多くなり、中田は気が気でない。

とりあえず、何事もなく終わりホッとした。

最後の一カ所は大きめな住宅街の端の民家の隅だった。コン柱を建てた途端、遠めに見に来る住民が増えて来た。しかし、電気か何か分からないためか近づいては来ない。

アンテナを取り付けると、一人の男が近づいて来た。

(来た)

中田は観念した。

「これは、なんだ」

誤魔化してもしようがない。正直に答える。

「携帯電話です」

「今日中にオーナーの所に行くからな」

男はそう言うと戻り、他の住民と話を始めた。

「来た。終わり。オーナーの所に行くそうだから伝えた方がいい」

加藤に電話をした。これはキャリアに伝えられ、撤去が即日決まった。

この場所の代替地が必要になる。用地の担当者が音を上げた。ならばと、加藤の会社が請け負って来た。代替地を探せば、キャリアに対して株が上がる。

「中ちゃん頼むよ」

加藤の上の奴が頼み込んできた。

中田は仕方なく、受ける。

一週間、歩き回った。中田は空地を見つかると周辺の民家に了解を打診した。

「近くに携帯電話のアンテナを設置したいのですが、特に反対とかの意見はないでしょうか」

一軒一軒、聞いた。

「今の世の中、いいんじゃないですか」と答える住民も、

「それで、どこに」

中田は近くの空地を指差す。住民の形相が変わった。

「家には子供もいる・・・」

玄関先で一時間以上、説教された。

近くの個人営業の電器店で、地域の状況も聞いた。電器店なら、少なくとも反対側ではないだろう。いろいろと聞いた。

 発端は送電鉄塔からだったらしい。反対を支援する市会議員もいて、特にこの地区は強固だと言った。

中田は、結局、住宅街から離れた場所でエリアが取れる場所を探し出したのだった。

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