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最終話(直樹ver)

そろそろ思考は落ち着いただろうかと、すみれの目を覗き込むと、思い切り目をそらされた。


―――顔を真っ赤にしながら。

その反応に直樹は確信した。

すみれの表情を見逃さないように、両手で頭を掴んで直樹に向けさせた。


「お前は俺が好きなんだな?」


どんだけオレ様だよと思われるようなセリフだ。

違ったらすみれに大笑いされるような態度だったが、そんなものは杞憂だった。

きゅーーっと音がしそうなほどすみれが赤く染まる。

顔だけじゃなくて、首筋から腕まで赤い。

何かを言いたそうに開いた唇は、音を出すこともせずに閉じてしまう。そしてまた開く。

可愛いからしばらく見ていようかとも考えたが、そんなものは、これからいつでも見つめていられる。

とにかく今は、一刻も早く彼女を抱きしめる権利が欲しい。

「昨日、酔っ払ったお前が、好きだ好きだと言いながら俺に抱き付いてきた」

すみれは視線を宙に向けたまま、唐突に立ち上がり、直樹に背を向けようとし―――たところを捕獲した。

今のは、まさか自然な仕草で立ち上がったとかいう気じゃないだろうな?

いきなり逃走を図るな。何かと思ったじゃないか。

「逃げれば、このバスタオルを剝く」

バスタオルの端を握って宣言すれば、すみれは、もうどうすればいいのか分からないというように、困った顔をして固まった。

「そもそも服もないのに逃げられるわけないだろう」

もう一度座るように促すと、すみれはおとなしく座って、大きなシャツの袖をまるめて顔を隠した。

「あううぅ」と漏れ聞こえてくる声と、真っ赤に染まった耳――ああ、もう、可愛いな!

抱きしめて触りまくりたい。

だけど、違う。今はその時ではないのだ。

「俺をそういう対象で見てたってことだよな」

もう一度確認するように聞くと、目だけのぞかせたすみれが、恨めしそうな視線を直樹に向けた。

「意地悪い」とか「嫌い」だとか考えている顔だなと思いながらも、返事をしないすみれが悪いんだ。しっかりと何度でも確認がしたい。


―――すみれは直樹のことが好きなのだと。


「俺をそういう対象として見られないって言うなら、無理矢理にでも男の良さを分からせてやろうと思っていたが」

「はっ?」

驚いた声を出しながら、赤く染まるすみれの頬に、嫌悪感がないことを見る。

もっと早くこうしていればよかったんだ。変に遠慮したから、何年も片想いを続けてしまう羽目になった。

「無理矢理じゃなくても大丈夫そうだな」

肩を引き寄せて目を覗き込むと、何を思ったか、ほっとしたようにすみれが微笑んだ。

大事にはする。大事にはする気でいるけれど―――

「数年ぶりだ。今までの我慢の分―――がんばれよ?」

野獣の腕の中で笑うすみれが悪い。

長いこと片想いしていた、こじれまくった恋心を受け止めてもらうことにしよう。

「直樹っ……!?」


そういえば、すみれは卒業まで恋愛しないと決めていたってことだし、直樹と出会ってから男の影はなかった。……まあ、女が好きだと思っていたくらいだし。

ということで、簡単に想像がついたことだったのに、頭の中がピンク色になっていてそこに思い至らなかった。

「あちこち痛い」

マジ泣きで布団にもぐるすみれを介抱しながらも、「後何時間で復活してくれるかな」と考えている自分は鬼畜だよなあと思った。

「その顔なんか悪いこと考えてるっ!ばかっ!」

直樹の表情を見破って逃げようとするすみれも可愛いなあと思う。


―――だから、もう少し頑張ろうな?

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