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俺の彼氏(直樹ver)

「ちっ…ちがうよ!直樹の彼氏!」


だけど、すみれの叫びに、思考が停止する。

彼氏……?『俺』の?

なんだそりゃ。そんなものがどこにいる。いや、そもそも男である直樹に彼氏って言い方はおかしいだろう。直樹が同性愛者でもあるまいし―――…

そこまで考えて、まさかと思って顔を上げると、すみれがじりじりと直樹から離れようとしているところだった。

「逃がすか」

何も考えずに手元にあったバスタオルを引っ張った。

「ひゃああああっ!何すんの、何すんの、ばかばかばかーっ!」

すみれの可愛い悲鳴とともに生足が、直樹の目の前に現れた。

スラリとしているから細い足かと思いきや、意外とむっちりとした触り心地の良さそうな脚がもじもじと恥ずかしそうに縮こまってあった。

しかも、直樹がさっき期待していた通りに、すみれは、恥ずかしそうにシャツの裾を握りしめて、直樹を睨んだ。しかも反対の手を振り回すというオプション付き。

あまりのツボにくらりと眩暈を起こしそうになる。

放っておくと勝手に伸びていきそうな手を抑えながら、すみれにバスタオルを返した。

今は話をしなければならないのだ。性欲に負けている場合じゃない。

改めて話を聞くと、案の定、すみれは直樹を同性愛者だと思っていたらしい。

いつから、そう思い続けていたんだ。……恋愛対象外になるはずだ。しばらく布団に潜り込んでここ数年の自分を猛省したい。まず誤解を解いてから口説けと諭してやりたい。


先週、同僚の田中を家に泊めた。

事務員と付き合いたいけどどうやったら口説いたらいいんだと女子高校生みたいなことを言う田中がウザくて、「とりあえず飲め」と飲ませていたら、つぶれやがった。

一緒にいた安藤はさっさと帰るし、仕方がないからここに連れてきてそこら辺に転がしておいたのだ。

朝にはケロッとした顔で起きてきたから、早々に追い出したことを思いだした。

そういえば、あの時すみれと会ったんだったか。

あの時に田中のことを直樹の『彼氏』だと思ったらしい。

しかも、「すっごく格好いい人。笑うと可愛い系になる人だった」と、すみれが言った。

ふざけんな!

「可愛い系だったら、すみれは男でもいいのか!」

どれだけ我慢してきたと思っているんだ!

やるせなさと一緒に吐き出した言葉は、半ば予想していた言葉で否定された。

「や、ちょっと待て!私は恋愛対象は男だよ!?」

だと思ったよ!

どうしてすみれを同性愛者だと思ったんだったか。

……記憶を探って、酔っ払ったすみれが「反応しない」だの、「同性じゃなきゃ」だの言っていたことが思い出された。

―――俺のことか!

「嘘、だろう……?」

誰に言うでもない呟きが、勝手に零れ落ちた。

なんてこった。

すみれが直樹の落ち込みようをどうとったのか、慰めようとしていた。自分が男性が好きでも、直樹とは友人でやっていけるとか、いろいろな好みがあっていいとか、びっくりするほど見当違いだ。


「いいか?俺の恋愛対象は、女だ」


よく分かっていないであろう、ぽかんとした表情が返ってきた。

よく覚えていないが、直樹が例え「俺は女に興味ない」と言ったとしても、そんなこと、あちこちで言っている。好きな人のタイプなんかを聞かれることが煩わしい。お前じゃないことだけは確かだよ!と言い捨ててみたらどうだろうかと思ったこともあるが、また別の意味で煩わしいことが起きそうだ。

すみれの頭の中は、今一生懸命動いているようで、視線があっちに行ったりこっちに行ったりしていた。


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