第10話 寄生虫、第二の能力。
さて、今回の進化で身体は大きく変化した。
色々と確認が必要だろう。
まずは、種族と能力を確認しよう。
【稀生虫:寄生虫の中でも希少種。内部からの寄生はもちろん、外部からの寄生も可能。希少性が高い理由として、この種が宿主との高い親和性を持つことが特に理由としてある】
ふむ? 高い親和性?
寄生してるのに親和性も何もなくないか?
よくわからんな……
しかし、こっちは――
【思考操作:宿主の思考を操作する。但しあくまで自我を完全に支配することは出来ず、簡単な指示が出せる程度となる】
ヤバくね? 寄生虫こわっ!
あ、いやでも待て……
たしか前に何かの記事やテレビで見たような……
あれはたしか――
*****
『このように、ハリガネムシは最初水中で生まれてから、水生の昆虫に寄生します。その後その昆虫が大きくなり、空が飛べるまでは大人しくしており、飛べるようになってからは、宿主の動きを鈍くすることにより、より大きな昆虫に食べられるようにするのです』
(へぇ、寄生虫ってすげぇんだな)
『そして、カマキリやカマドウマといった大型昆虫に寄生したハリガネムシは、ここから大きくなっていきます。そして成長したハリガネムシは、子孫を残すために水中に戻る必要が出てきます。では、木村さん。ハリガネムシはどうやって水中に戻るのでしょうか?』
(そういえば、さっき水中で生まれるって言ってたよな? どうすんだろ)
『はい! 木村さん残念! 正解はですね、生理活性物質と呼ばれるものを作り出します。これは現在の化学でも作り出すことができない物質なんですね。この物質での作用により、カマキリはなんと! 驚くべきことに、自ら水に身を投げ出して自殺してしまうのですよ!』
『うわ! 怖いですねぇ……』
『そうでしょう? でも寄生虫はハリガネムシだけではありません。カタツムリに寄生して、その姿を芋虫の様に変化させて、鳥に食べやすくするもの。猫に寄生し、行動範囲、いわゆるテリトリーですね。そこに影響を与えるもの。中にはなんと、人間に寄生して性格まで変えてしまうものが存在するんですよ!』
(マジか! 寄生虫ヤベェ! そしてこえぇ!)
*****
うわ! 思い出した!
そういえば、寄生虫って結構エゲツない生物だった……
まぁ、今は俺がそうなんだけど……
つまりは、この【思考操作】ってのはそういうことなのか?
でもスキルとして発現してるってことは、地球でいうモノとは違って、化学物質やホルモンに影響を及ぼして操作するってことではない……んだよな?
んー……どこまでできるんだろうか。
試してみるしかないが、さすがに死ねって命令を出すのは、申し訳ない。
何より勿体無い上、ここで死なれて寄生先が無くなるのも困る。
進化を二回経験したとはいえ、俺は未だこの世界でも最弱に近い存在なはずだ。
さて、どうしたものか。
ひとまず、『感覚共有・視覚共有』発動!
◆◆◆◆◆
小竜の視覚が共有された。
どうやら、森の中を歩いているらしい。
んーと、『思考操作』発動!
とりあえず俺は近くの木を倒すように念じてみる。
すると、小竜は腕を振り上げ、右前方にあった木をなぎ倒した。
おぉ! 凄いな。本当に思考を操作できたっぽい。
これだけだと判断がつかないので、今度は近くの水場に行って、水を飲むように念じる。
――しかし、今度は反応がなかった。
んー? どういう事だ?
どこまでの命令なら聞いてくれるんだろうか……
その後も色々と指示を出してみる。
――そして、急に視界がブラックアウトした。