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最後の再会

事件が解決して十日が経った。孝正の見舞いから始まり、事件が起こって解決するまでの間、圭太の周りでは色んな事が目まぐるしく起こった。

夏の暑さが少し残る九月下旬からもうすぐで十一月に入ろうとしている。

「もう冬になるな」

達也が窓の外を見ながら言う。

ここは圭太の部屋である。いつものごとく達也と水花が遊びに来ているのだ。

圭太と達也は本格的に高校受験の勉強をしないといけない。二人共、公立を第一志望にしているが、私立は別の高校を受験する予定なので、公立に合格する以外、どちらかが落ちてしまえば別々になってしまうのだ。

「そうだね。ついこの前まで夏だったのにな・・・」

水花はしんみりと言う。

「そうだな。あっという間だな。十一月に入るし、受験勉強も今まで以上に真剣に取り組まないとな」

公立に落ちたくないと思う圭太は頷く。

「受験か・・・。公立に合格しないと圭太とは別々になってしまうもんな。私立に行く事になったらやっていけるかな」

達也はもし、私立に行ったら・・・という前提で話す。

「大丈夫だって。達也のその性格ならやっていけるよ」

圭太は私立に通う事になってもなんとかなるという口調で達也に言う。

圭太にも私立に通う不安もあったが、まだ高校受験の問題を解いたわけでも、合否が決まったわけでもないのに、今から不安になるわけにはいかなかった。

「そうだな。それより加江さんはなんでこの家の電話番号を知ってたんだ?」

受験勉強をもっと頑張ろうと思った達也は、塚原家の家の電話番号をどこで入手したのだろうと疑問に思っていた。

「それは加江さんが独自で調べたそうだ」

聖一から教えてもらった圭太は、そのことを二人に教えた。

「そうなんだ。見た限り、悪い人じゃなさそうなのにね」

水花は人は見かけによらないと思いながら言う。

それは圭太も思ったようだ。

そこに塚原家のチャイムが鳴った。

圭太は小走りで玄関に向かい、ドアを開けると、志のぶが立っていた。

「志のぶさん・・・中に入って」

圭太は突然の志のぶの訪問に驚きつつも笑顔で迎える。

志のぶを居間に通すと、自分の部屋に戻り、達也と水花を呼んだ。

「志のぶさん! 久しぶり!」

居間に入るなり水花が明るい声で志のぶに言う。

「久しぶり。三人に会ったのは十日前だったかしら?」

思い出すような表情をする志のぶ。

「そうですね」

「志のぶさん、今日は・・・?」

圭太は何の用で来たのかを聞く。

「お礼をしたいと思いお伺いしたんです。みなさんには色々とお世話になったので・・・」

志のぶはそう言うと、高級そうな和菓子の箱をデパートの袋から出す。

「いえいえ・・・。オレは本当の事が知りたかったんです。それに志のぶさんが鈴木さんの死について言ってくれなかったら、親父もオレも何もしなかったわけで・・・」

圭太は自分の思いを志のぶに伝えた。

「私、主人が殺害された亡くなったなんてショックだったんです。しかも、犯人が島川さんの奥さんだったなんて・・・。主人が殺害されたという、私の予感が的中してしまったんだと思うと悲しくなってきますよね」

志のぶは悲しげな表情になる。

その志のぶの様子に、どう言葉をかけていいのかわからないでいる三人。

「うん。加江さんが犯人だっていうのは正直驚いた。圭太、加江さんが犯人だっていつわかったんだ?」

達也は圭太のほうを見て答える。

「達也がルビーの指輪の事を教えてくれた時」

圭太は三人に背を向けて、何かをしながら答える。

「はぁ!? じゃあ、推理する前日にわかったってことかよ!?」

達也は信じられないという声を出す。

「あぁ・・・。トリックはわかってたんだけど、証拠や犯人がわからなくて・・・」

証拠や犯人がわからないままでは、事件の真相を話すわけにはいかないと思っていた圭太。

「証拠がないままだといずみさん達が言ってたように推測だったというわけ?」

話を聞いた水花も信じられないという口調だ。

「そういうわけ」

真顔で何事もないように答える圭太にクスッと笑う志のぶ。

「志のぶさん・・・?」

笑い出した志のぶに、なんだろうと首を傾げる水花。

「いえ、三人は仲が良いんだなって・・・」

「まぁね。いつも仲が良いよ。それより圭太君、鈴木さんが私から手紙を奪い取ったのってなんだったの?」

水花は圭太の隣に座り、孝正の見舞いに行った時の自分に向けられた行動の事を聞いてみた。

「あぁ・・・そのことか。鈴木さんのあの態度を取ったのは、手紙の内容を見られたくないからってことかな」

「どういう意味なんだよ?」

「つまり、あの手紙の内容は、島川との麻薬の事が書かれていたんだ。電話や会って話していたのでは、誰かに聞かれてしまう恐れがある。だから、麻薬の事は手紙でやりとりをしていた。それで他人にバレたらマズイってことで、手紙を手にした水花ちゃんから慌てて奪い取ったんだ。志のぶさんが薬がどうのこうのって電話をしていたのを聞いてたから、たまに電話でもやりとりしてたんだと思う」

圭太は全ては麻薬の事から繋がっているんだと言う。

「そういうわけか。島川さんの娘さんはこれからどうするんだろ?」

水花はいずみ達のその後を気にする。

「親父の話では、三人で店を続けるらしいぜ。今回の事で店の評判はかなり落ちたと思うけど、あの三人ならなんとかやっていけるよ。あと加江さんに薬を渡した友人の看護師も事情を聞かれてるよ」

圭太は聖一から聞いた情報を再び教える。

「三人で和菓子店を継ぐなら、赤字の店をなんとか立て直す術を知ってるかもしれないな。若い人向けの和菓子を作ったりな。じゃあ、志のぶさんはこれからどうするんですか?」

達也は志のぶの今後の事を聞いた。

「実家に帰ろうと思ってるんです。私の実家は和歌山県の有田なんです。両親と弟夫婦がみかん畑をやっているので、みかんの取り入れや出荷なんかの手伝いをしようと思っていて・・・」

志のぶは今後の事を考えていて、そのことを三人に話す。

「実家に帰っても身体には気を付けて下さいね」

水花は淋しそうに言うと、居間がしんとなった。

「志のぶさん、辛い事もあると思うけど、東京に来る時があったらオレの家に来てよ! 達也も水花ちゃんもいるから・・・なっ!」

圭太はしんとなった居間を明るくなるように言った。

「えぇ・・・。東京に来た時はそうさせていただくわ」

志のぶは嬉しそうに言う。

「志のぶさん、これあげる」

水花はカバンから三人で撮った一枚のプリクラを志のぶに渡した。

「ありがとう」

プリクラを受け取った志のぶは、もし自分に子供がいたならこれくらいの子供がいるのかなと思いながら礼を言う。

その時だった。

「ただいま」

聖一が仕事から帰ってきたのだ。

「あれ? 親父、仕事は?」

帰りがいつもより早い聖一に驚きながら圭太は聞く。

「早めに切り上げてきたんだ。最近、仕事に追われてて、やっと片付いたんだ。・・・あ、志のぶさん」

聖一は志のぶに気付くと、軽く頭を下げた。

「志のぶさん、今回は大変でしたね」

聖一は志のぶを労うように言う。

「大変でしたが、みなさんのおかげです」

首を横に振りながら答えた志のぶ。

「それでは私はこれで・・・。みなさん、主人の事では色々お世話になりました」

「今回は鈴木を思う志のぶさんの気持ちが我々を動かしたんですよ。お礼を言わないといけないのはこちらですよ」

今回は志のぶのおかげだと言う聖一は、友人がこんなに愛されているなんて羨ましいと思っていた。

それを聞いた志のぶは、そんなことはないと謙遜する。

そして、帰る志のぶを四人は玄関まで見送る事にした。

「志のぶさん、お元気で・・・」

聖一は志のぶにそう声をかけた。

「はい。みなさんもお元気でいて下さいね。私もこの恩を忘れずに頑張ります」

そう言うと志のぶは会釈をし、塚原家を後にした。

それと当時に、

「今回の事件・・・終了ー!!」

圭太は伸びをして、解き放たれたように大声で言った。

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