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弱くても立派な護衛?

清々しい朝を迎えたアランは平和な時間をかみしめながらいつも通りに過ごしていると、配達員が手紙を届けにきてくれた。上機嫌のアランは配達員に絡むことなく・・・?

 日が昇り、1日の始まりを告げる鳥のさえずりを聞いてアランは起き上がる。久しぶりに感じる清々しい朝を迎えたアランは自室の窓を開け放ち、朝の日差しを浴びる。

「う〜ん! 気持ちいい〜」

めいいっぱい伸びをして、朝食を作りに1階へ降りる。いつも通りの平和を噛み締めながら一歩ずつ降りる。

―やっと平和な1日が始まる。

ここ数日慌ただしい日々を送ったアランにとって、この何気ない平和な時間を幸せに感じながら朝食を作る。

「いただきます」

手をあわせて食事を始める。温かいスープに焼きたてのパン。すると、

ドンドンドン!

いつもの調子でノックする玄関の扉。

―またあいつか。

そう思いながら扉を開ける。

「おはよう」

そこには身構える配達員がいた。

「お! 今日は何も起きないのか?」

「えぇそうよ。こんな何もない時間が幸せだって思ったのは初めてよ」

「…頭大丈夫か?」

「ふっふっふっ。今は何言われても許してあげるわ」

「毎日こう問題起こさずにしてくれたら俺は嬉しいんだが」

「そうよね。いつも誰かさんのせいでトラブル続きだったからね」

「ついでにその口の悪さも治ってくれたらもっと嬉しいんだがな」

その言葉に平和な時が終わった。

「あんたねぇ! 言っていいことと悪いことがあるのよ!」

「何言われても許すんじゃなかったのか?」

「あんたの口の悪さのせいで幸せな気分がなくなったわ!」

「お前のほうがよっぽど口悪いだろ!」

「何をー!」

「大体いつもトラブル引き起こしてるのアランじゃないか。それを俺のせいばっかに…」

「事実だからしょうがないでしょ」

「調合失敗して爆発した時も?」

「あんたのせいね」

「井戸から落ちた時も?」

「…あんたのせいね」

「泥まみれになったのも?」

「えぇそうよ! みんなあんたのせい!」

「ちょっとまて!? 井戸と泥まみれは俺には関係ないだろ?」

「あるわよ! 井戸に落ちた時は急に後ろから声をかけられてびっくりして落ちたのよ! 泥まみれになった時も『速達でーす!』って言われて外にでたらぬかるみにはまって転けて泥まみれになったのよ! だからぜーんぶあんたのせい」

「はぁ…もういいよ、俺のせいで」

「わかればよろしい。それで今日は何のトラブルを持ってきたの?」

「ほら」

アランの口の悪さに呆れながら手紙を渡す。

「誰から?」

「知るか!」

「宛先も確認しないで渡すの!?」

「普通そうだろ?」

「危険な内容だったらどうするのよ!?」

「手紙の内容まで責任持てないよ。それじゃ」

「ちょ! ちょっと!?」

付き合いきれないと言わんばかりに配達員は手を振りながらアランから離れる。

「ちょっと悪いことしちゃったかな?」

後悔しながら配達員にもらった手紙を読む。


『 アラン・B・エリシオール様へ 

初めまして、私はメチカル街に住むドーヴォンといいます。アラン様の活躍を聞いて手紙を書かせていただきました。父の病気を治す薬を作って欲しいのです。医者に診せても何の病気かわからないと言われました。知人に相談したらアラン様の話しがでて、何とかしてくれると思って手紙を書きました。これをアラン様が読んでくれることを祈って待ってます。 ドーヴォン・ヘイオンより』

ーメチカル街…このミジバルク国の二番目に大きい街か。

メチカルという街を思い浮かべながら手紙の書いてある内容をもう一度目を通す。

ー今日はマグダイまで王子と行くつもりだったけど…仕方ないよね。

アランは出かける支度して王子が待つミジバルク城に向かう。


 ミジバルク城では、カルヴァンは身支度をして迎えにくるアランを今か今かと待っていた。

「ん〜…まだかな? まだかな?」

「王子!? 少しは落ち着いては…」

お守役の大臣が王子を諭す。

「だが、もう少しで昼だぞ!?」

「日が昇ってまだそんなにたってません! お昼までまだ時間はあります」

「また昨日みたいに先送りになるの嫌だ!」

「アラン様が来るまで辛抱なさってください、王子様」

「あ〜早く来てくれアラン。待ちくたびれて死にそうだよ〜」

「そんなことで死にはしません!」

痺れを切らして自室の窓から外に身をだして見入るカルヴァンを大臣は身を呈して引き止める。

「いけません王子!? そんなに身を乗り出しては落ちてしまいます!」

「まだか!? アラン」

カルヴァンの目に、主人であるアランの姿を見つけると。

「アランだ!? やっときたー!」

「ぐふっ!」

アランを見つけたカルヴァンは勢いよく中に戻り、自室をでる。その勢いに大臣は尻餅をつく。

「いてて…まったく王子ときたら、そんなにあの娘がいいのかな?」

そう言いながら大臣は先程カルヴァンが身を乗り出した窓からアランを見つけると。

「…どうも好きになれないな」

一言いってカルヴァンのあとを追っていきました。


 城についたアランは少し浮かない顔をしていた。予定としてはマグダイまで行くはずだが、アランは先程読んだ手紙のことが頭から離れなかった。

ー王様に相談して護衛はなしにしてもらおうかな?

王様とカルヴァンが待つ謁見室まで足を運ぶアランは膝をついて朝の挨拶をする。

「おはようございます、王様。王子様」

「おはようアラン。王子のことはカルヴァンと呼んでも構わんぞ」

「いえ、王様のまえでそのような失礼なことは…」

「王様が言ってるのだから良いのだアラン」

カルヴァンは便乗するようにアランに言う。

「では…カルヴァン様」

「うむ。それではカルヴァンと共にマグダイまで―――」

「王様!? そのことでお話が」

王様の言葉を静止するアランは意を決してお願いする。

「なんじゃ? 云うてみよ」

「はい、今朝私宛にこのような手紙が届きました」

アランは立ち上がり、王様に手紙を渡す。

「…父の病気を治して欲しいか」

「はい。マグダイまでカルヴァン様と共に行く予定でしたが、私は手紙に書かれてあるドーヴォンの父を助けたいと思ってます。それで…カルヴァンとマグダイまで行く件ですが…」

「いや、よく申した。だったら尚更カルヴァンには同行してもらいたい」

「王様!?」

予想外の答えにアランは驚く。

「マグダイまでの護衛はあくまで心構えのようなもの。カルヴァンには民の暮らしがどんなものが知らなければならないいい機会じゃ。わしからも頼もう、ドーヴォンの父をカルヴァンと共に治してやってくれ」

深々と頭を下げる王様にアランは慌てて承諾する。

「は、はい!」

「良いな? カルヴァン」

「もちろんです!」

カルヴァンは意気込みながらアランの元へ行く。

「では二人共、道中気をつけていくのだぞ」

「はい!」

王様の言葉に2人は気合をいれて返事をして謁見室を退出する。

「良いのですか? メチカルは…」

「少々危険だが、これもカルヴァンのためだ。立派な人間に育つためならな」

大臣と王様は2人の後ろ姿を見送りながら安否を気遣う。


 やっと主人につくこととなったカルヴァンは上機嫌でアランに話しかける。

「やっと二人っきりになれたね」

「そうね。あれから少しは成長した?」

「もちろん! アランとはぐれた時なんか1人でマグダイまで行って、城に帰ったんだぞ」

「そう、途中魔物とかに襲われなかった?」

「襲われたけど、1人で追っ払ったよ! アランにも見せてあげたたかった」

「じゃあメチカルまでの護衛は任せてもいいかな?」

「もちろん!」

自信に満ちたカルヴァンを見て、少したくましく思えたアラン。

―どれだけ頼もしくなったかちょっと期待してもいいかな?

 城をでて街を歩くと、みんなの視線はアランとカルヴァンに向け始める。

「アラン!? その方は!」

「カルヴァンよ。今度はちゃんと王様の許可をもらって護衛してもらっているから」

街の人はカルヴァンを腫れもののような目で見ながら話すと、

「おはようございます! 今日は皆様に迷惑かけませんのでいつも通りにしててください」

カルヴァンは皆に促すが、王子が街を歩いてると思うといつも通りの感じにはできなかった。その様子をみたアランは手をとって、

「行きましょカルヴァン」

急ぎ足で街を出て行きました。その様子を不思議そうに見ながらカルヴァンはアランに連れて行かれる。

「アラン? 皆なぜ怖い顔しておったのだ?」

「…これが市民の反応よ。王族が街をふらついてたら監視されてる感じでいつも通りの生活ができないのよ」

「そんな…僕はそんなつもりでは―――」

「カルヴァンはそう言っても、これが市民の気持ちなの」

「じゃあ僕はどうすれば?」

「根気よくみんなに話しかければ自然と打ち解けれるよ。今は辛いかもしれないけど、いつかわかってくれる時がくるわ」

「…うん、わかった。ありがとうアラン」

元気を取り戻すカルヴァンを見て、アランもつられて元気な姿を取り戻す。

―メチカルはまだカルヴァンのこと知られてないし、言ってもいいかな?

アランはある提案をカルヴァンにもちだす。

「今から行くメチカルはカルヴァンのことは知られてないから、普段通りで街を歩いてみる?」

「いいのアラン?」

「ミジバルクじゃ普段の市民の生活見れないでしょ? 王様も言ってたし、いい機会だから街の中を見て回りましょ。カルヴァン」

優しい眼差しで話すアランを見てカルヴァンは、

「ありがとうアラン!」

お礼を言いながら急にアランを抱きしめだす。

「ちょ! カルヴァン!?」

「本当にありがとうアラン!」

何度もお礼を言うカルヴァンに最初は戸惑っていたが、落ち着きを取り戻すアラン。するとだんだんとカルヴァンの背中に手を添えようとする。

「それじゃ早くメチカルまで行こう!」

急に離れて手を繋いでメチカルに向かおうとするカルヴァンに、またも戸惑いながらカルヴァンのペースで走り出す。

「ちょ! カルヴァン、メチカルまでの道わかってるの?」

その言葉を聞いて歩みを止めて、

「あ! 知らない」

「まったく…」

やれやれという感じでアランは鞄から地図を取り出す。

「これって地図?」

「そうよ。街から街へ行ったり、外を出歩くためには必要な地図よ。まず地図でメチカルってところを確認しないと」

「アランも知らないの?」

「私も知らないわ。だからこうやって確認するの」

拓けた場所に地図を広げて、2人は腰を下ろす。

「今私達がいるのはここ。それでメチカルってところは…」

「ここじゃない?」

「そうわね」

「地図で見ると結構離れてるけど、どれくらいで着きそうなの?」

「えっと、ミジバルクからマグダイまでが―――」

アランは指でなぞりながら計算すると、

「2日はかかりそうね」

「2日!? 今から王様に―――」

「どこいくの?」

「王様に一言いってから…」

「王様はご存知のはずよ」

「え?」

地図をしまいながらアランは止める。

「一国の王だもの。街の場所ぐらい把握してるはずよ」

「じゃあ…」

「知ってて私と行くように言ったのよ」

「…」

「寂しくなった?」

「いえ、ただ道中どこで寝たり食べたりするのかと」

「野宿でしょうね」

「野宿?」

何も知らないカルヴァンにアランは優しく説明する。

「野宿っていうのは外で寝ることを言うの」

「外で!?」

「そうよ。外を歩く人はそれを承知で出てるのよ」

「食べ物は?」

「余分に持ち歩いたり、ときには狩ることもあるわ」

「狩るって…まさか動物を!?」

「そうよ。生きるためには仕方ないことよ」

「…アランもそうしてきたの?」

「あまり遠くに行ったことはないけど、私は余分に持ち歩いてるわ。でも私もいつかは狩りをして食べ物を調達することになるわ」

「…」

「カルヴァンには刺激が強かったかな?」

「ううん、僕はアランの護衛だからこれくらいは―――」

ガサガサ!

 話しの途中で草むらが動き、そこからドロドロのスライムが姿を現す。

「出たな魔物! アラン見ててください」

アランの前に立ち、剣を構えるカルヴァン。

「待って!」

「やぁぁぁ!」

アランの静止を聞かず飛び込むカルヴァン。

ザクッ!ひとたちで真っ二つして倒したカルヴァンはアランに向かって、

「アラン! 倒しました!」

「だめよカルヴァン!?」

「!?」

倒したはずのスライムがカルヴァンを襲い出す。

「ヒィ!? どうして?」

「スライムに剣は聞かないわ」

「どどどどうすれば?」

慌てふためくカルヴァンだがそれでもアランの前を立ち続ける。

「こういうのはね…」

アランは鞄から変わった爆弾を取り出すと、

「それ!」ズドン!

アランが投げた爆弾はスライムにあたり火柱をたてる。

「うわ〜…」

「あぁいう奴は燃やすか固めるかにしないとダメなの。わかった?」

唖然とするカルヴァンに優しく教えるアラン。

「はい…まだまだですよね、僕」

肩を落とすカルヴァンにアランは手を差し出す。

「え?」

「成長したわねカルヴァン。それだけでも充分よ」

「え? 充分って?」

「倒せなかったのは残念だけど、それでも私を守ろうとしてくれたわよね? 護衛としてカルヴァンは立派に成長したわ」

アランの優しい言葉を聞いたカルヴァンは急に泣き出す。

「僕…立派でした?」

「えぇ、立派だったわ。だから顔をあげて」

「うわーん」

泣きながらアランを抱きしめる。

「うぐ…ぐすっ…」

「護衛が泣くなんてやっぱりまだまだわね」

頭を撫でながら優しくあやすアラン。

―立派だったよカルヴァン、王子だからじゃない、立派な護衛だったよ。

この日はカルヴァンにとって忘れられない1日になった。

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