パージの悲痛な叫び? 過酷な入国準備!?
アランは奴隷としてガレットが住んでる小屋の牢獄に閉じ込められてしまう。
アランはパージ達を信じ奴隷になりきろうとするが…。
「う〜ん…」
気を失っていたアランはようやく意識を取り戻し始め、状況を整理し始める。
―えっと私はどうして…そうだ! 私はゴスさんとパージさんにいきなり…痛っ! 思い出したら急にあちこちが痛くなった。
―…あれ?
痛みだした部分を手で抑えようとしたとき、腕がそこまで届かなかった。届かないというより腕が動かせれなかった。
―私、拘束されてる!?
アランは首だけを動かして腕を見てみると、天井からぶら下がってる鎖に両腕を上げた状態で繋がれていた。
―またなの! そうだよね、私は今奴隷になろうとしてるんだから…。
アランは自分がおかれている状況を確認しながら周囲を見渡す。
パージの提案でガレットという人に奴隷となって、ラン国に侵入するという話しを持ちかけられる。この方法だと港町ホージェンの定期便より早くラン国へ着けるという話しがでたからだ。だけどこの方法は私が奴隷になりきらないことにはいけないことだ、奴隷になりきることで奴隷専門に扱う奴隷狩りのガレットという人を欺かなければいけないからだ。そしてアランは突然ゴスとパージに暴力を受けて気絶をしてしまい、この牢獄に連れられてしまった。辺りを見渡すが、特にめぼしいものがなかった。牢獄の向こうは椅子と机、アランが囚われている牢獄の中は拷問器具が綺麗に並べられ赤く染まっている部分が所々あった。
―あの道具で拷問されるのね。それにあの血、まだ新しい。
自分にも他の奴隷達と同じ目にあう恐怖しながら引き続き周囲の状況を確認する。アランの足にも鎖が繋がれ、しかも鉄球も一緒に繋がれていた。口も猿轡されて喋ることもできない状態だった。
―これから私どうなるの?
アランがそう思った瞬間、奥の階段から誰かの足音が響き始めた。
―誰かくる!? 足音からすると…二人?
足音がだんだん近づくと階段にかけられている灯りがあたって影が形を現すと、アランの予想は的中した。猫背をした老爺の姿と姿勢のいい青年の姿の影がだんだん大きくなりその影の正体がアランの前に姿を現した。
「やっとお目覚めのようですな」
「まぁこれだけ時間が経てばな」
「しかしこうやってみるといい女じゃな、パージ」
「いつもガレットの旦那にはお世話になってますからね。価値のありそうな奴を選んでますからね」
ガレットは牢獄越しからアランの身体を認めるように頭から足へと視線を送る。
「あれから一日が経ちましたぜガレットの旦那。答えを聞かせていただけませんか?」
「そうだな…だが最近のお前達の動きがなかったらしいがそれはどうしてだ?」
「旦那、さっきも言ったようにムグー様にお渡しするいい奴隷を品定めしてたんです。だからあまり目立った動きがなかっただけです」
「なるほど、メチカルでの目撃情報がなかったがこれはどう説明するんだい?」
「そのことに関してはちとこちらの都合でメチカルに出れなかったんです」
「ほう、都合というのは?」
パージは一旦顔を俯かせてから、意を決して顔をあげてガレットに応える。
「…ちとメチカルの自警団に目をつけられてな。ほとぼりが冷めるまで身を隠してただけです」
「なるほど…自警団に目つけられるなんてお前も有名になったもんだな」
「ゴスと少々暴れすぎたせいもありますが…」
「…大体納得した、なら」
そういうとガレットは牢獄の鍵を開けて入り陳列された拷問器具を一つ手にとりパージの前に差し出す。
「お前の手で調教しろ!」
「俺が!?」
「そうだ、しばらくお前達の姿を見てなかったからな。情に流されていないかわしの目の前で証明しろ!」
「…」
パージは目の前に差し出された道具を見ると、パージはその道具の上に手を置き拒んだ。
「旦那、俺に道具はいいです」
「ほう? できないと?」
「いえ、俺のやり方で調教させてください」
「パージのやり方か、はっきり言ってお前のやり方は商品をだめにしかねないからな…」
「俺が捕まてきた奴隷だ! ムグー様にお渡しするのだからせめて俺自身の手で調教させてください」
「…あまり傷物にするなよ」
ガレットは道具をしまうとパージの背後に立ち、様子を見ることにした。パージは無言でアランに近づくといきなり腹部に拳を入れた。
「うっ!」
「女だからって手加減しないぜ」
「うっ! ぐふっ!」
何もできないアランにパージはあまり目立たない胴体を集中的に殴り続けた。
「ごふっごふっ…」
「殴るのも飽きたな」
そういうとパージは急にアランの腕を掴み始めるとガレットが慌てて止めようとする。
「おいパージ! 何をする気だ!?」
「反抗しないためですよ旦那」
「やめるんだパージ!」
ガレットの制止する声を無視してパージはアランの肘を抑えると、
「んんんんんーーーーーーーー!?」
鈍い音とともにパージはアランの腕を外側へ力を入れてアランの腕を折りだした。
「やめろパージ!」
ガレットは慌ててパージとアランを離し突き飛ばした。
「大切な商品だぞ! 何するんだ!?」
「痛ぇー、反抗しないためですよ」
「だからって腕を折ることないだろ!」
「片腕一本折るだけでもそれだけで激痛が走るだろ。両腕を上げたままでも人は寝るからな。反抗する意志と体力を失くすにはこれくらいやっておかないと後々こっちが痛い目みるからな」
「だからってやり過ぎだ!」
ガレットはアランを抱えながらパージと口論するがパージの言い分も一理あり強く反論できずにいた。
「…」
「旦那は俺達のことを面倒みてくれた恩人なのはわかっています。けど旦那は俺達のこと疑ってますよね?」
「…」
「疑われたままラン国へ行くのは俺達は嫌です。俺達のことを信用してくれとはいいません、だけど俺達は旦那には感謝しています」
パージは真っ直ぐガレットに向いて訴えるように話すも未だにガレットはパージのことを信じきれずにいた。
「確かにお前達のこと疑っている。だけどこれはやり過ぎじゃないか? 以前はここまでしなかったじゃないか?」
「今まではガレットの旦那には任せてきました、けどこれを機に足を洗うつもりです。そのケジメとして世話になった旦那やムグー様に自分の手でお渡ししたい。そう思っちゃだめですか?」
「ケジメのためか…わかった信じよう」
「ガレットの旦那!?」
「但しこれ以上お前に調教は一切させない、このままだと商品をだめにしかねないからな」
「…わかりました」
「ならもう上へ行け! この女の拘束手段を変えてからわしも戻る」
「…」
ガレットに言われパージは黙って階段を上っていった。
「まったくパージはこうと決めたらわしの言うこと聞かないからな。その点さえなければ優秀なんだが…」
ガレットは独り言をつぶやきながらアランの拘束を解くと、力なくアランが倒れだす。
「おっと、骨折した痛みで気絶しちゃったか」
意識を失ったアランを抱きながら、腕を後ろに組ませまた鎖で拘束させてから俯かせた状態で寝かせた。アランの処置を終わり階段を上がるとガレットは簡単な料理をし始める。
「旦那、飯の時間にはまだ早いぜ?」
「…お前の頼みはのんだはずだ。まだなんかあるのか?」
「いや、ラン国への出発はいつかと思いましてね」
「…もう少しあの女の状態を見てから考えるつもりだ」
「わかりました、日にちが決まりましたら教えてください、ガレットの旦那」
「あぁわかった」
「それでは失礼します」
パージの顔を見ないままガレットは料理を続けていた。パージもアランに対しての所業のことでガレットの機嫌を損ねたと思いそのまま小屋をあとにした。
外で待機していたゴスと合流し、二人はメチカルへと足を向ける。
「どうですか兄貴?」
「できる限りのことはした。あとは嬢ちゃん次第だな」
「うまくいくかな…」
「…」
二人はアランの心配をしつつ歩いて行った。
料理が終わったガレットは出来立ての料理を皿に盛って地下へと降りていった。アランの様子はまだ意識を失ったまま、ガレットは近くに置いてあるテーブルに料理をおき、椅子に腰かける。アランの意識が戻るまでガレットは腕組をしながら待ち続けた。どれくらい時間が経ったのかはわからないがやっとアランが目を覚まし、今度は地面に横たわってると確認する。身体を起こそうと全身に力を入れた瞬間、アランの腕を中心に激痛が身体中に走った。
―痛っ! 腕が動かない!? そうだった…パージさんに折られたんだ。
―ガレットを信じ込ませるためにしたんだよね、パージさん。
アランがそう思った瞬間、牢獄の鍵が開く音が響きガレットが近づいてきた。
「目ぇ覚めたようだな」
「…」
ガレットはアランの口の猿轡を解き、様子をみながら話しを続けた。
「あいつもやってくれたぜ。腕を折るなんてわしもようやらんわ」
「…」
「お前今どういう状況かわかってるよな?」
「私を誘拐したってお金をだしてくれるような人はいないわ!」
「誘拐? あながち間違ってはいないがお前のような女でも高く買い取ってくれる人がいるんだよな」
「買い取る!?」
状況は理解している、だけどアランはガレットに悟られないように演技をし続ける。
「ある大富豪が王家に献上する人材を集めてましてね。戦える人材なら高値で、女はそこそこの値で買い取ってくれる人がいるんですよ。女をどうするのかはわしも知らんがな」
「どうせ女を見てはぁはぁ言ってるキモイ男でしょうね」
「さぁどうですかね」
「男じゃないっていうの!?」
「客の情報なんて一々気にしてても仕方がないからね。客が買ってくれればわしはそれでいい」
「このクソジジイ!」
演技ということを忘れてアランはキッとガレットを睨んだ。そんなアランをガレットは笑いながら牢獄から出て行くと、先ほど作った料理を持って戻ってきた。
「腹減ってるから怒りっぽくなるんじゃ。ほれ、食べるか?」
「どうせその料理に何か持ってるんでしょ?」
「あっそう、いらないんだ。じゃあわしが食べてもいいんだね?」
ガレットはアランに見せびらかすようにゆっくりと料理を口に運び始める。
「…」
「お前が覚めるまで待ってたから冷めちゃったな」
「…」
「まぁ冷めたスープもいっか」
ガレットの食べる姿を見てアランは空腹の音を響かせる。
「…」
「腹減ってるんだろ? やせ我慢するな」
「…れ」
「なんて言った?」
「食べさせてくれ」
「それが人に頼む態度かな?」
「…食べさせてください」
「人に頼むのになにかねその態度!」
激痛で起き上がれないアランは地面に横になったままガレットに懇願していた。アランは痛みに耐えながらも必死で起き上がろうとするが、痛みに耐えれずまた横になる。
「痛いか?」
「こんなの…痛っ!」
「あの男は容赦ないからな」
「お願いします、食べさせてください!」
「食べたいか?」
「なんでもします! だから食べさせて!」
「そうか、わかったよ」
ガレットはアランの目の前まで料理をもっていく、料理を落とし始めた。
「悪いな、手が滑っちゃった」
「ジジイ!」
アランは怒りガレットの足に向かって噛みつこうとするが、アランの動きを見切ったようにさっと後ずさりする。
「まだそんな元気があったのか、意外とタフだな」
「クソジジイ、八つ裂きにしてやる!」
「怖い怖い。それじゃわしはもう寝るか。ご飯に感謝しながら食べるんだぞ」
「わざと落としたくせに!」
アランは動けない身体でガレットが見えなくなるまで睨み続けた。
「クソジジイ…」
アランは何もできない悔しい気持ちのままガレットを罵るが空腹を知らせる音はアランの意志とは関係なく鳴り響き続けた。アランは落とされた料理を見ながら意を決して食べ始める。
―うっ!? 臭い…口の中じゃりじゃりする。
砂やホコリ、数々の人が流した血や体液と混じった料理を耐えながら食べ続けた。
―臭い…苦い…とても食べれるような味じゃ…。
アランは知らないうちに涙を流しながら落とされた料理を食べ続ける。
しばらくしてガレットが降りてくるとアランの前に落とした料理の残飯を見てため息をついた。
「ご飯は残さず食べないといけないってママに言われなかった?」
牢獄の鍵を開けてアランに近づいていくと、残飯を拾って話し始める。
「まだ食べれそうじゃないか。わしは食べようとは思わんがな」
ガレットは汚い物を投げるかのようにアランに当てるがアランはぴくりとも動かなかった。
「まだ死んではおらんじゃろ?」
ガレットはアランに顔を近づけると、見計らったようにアランが突然動きガレットの鼻に噛みつきはじめた。
「あがががが!?」
ガレットはもがき暴れまわるがアランの歯はしっかりとガレットの鼻に食いついて離そうとしなかった。
「この女!」
ガレットはアランを胴体を殴り続ける、だけどアランは離さなかった。
「この、この!」
ガレットの鼻から血が滲みでたとき、ガレットは何かを思い出したのようにアランの後ろ手に組んでる腕を掴み始めた。
「んんんーーー!」
「離せこの女!」
ガレットはアランの折れた腕に力をいれたのだ。腕の骨折の痛みを抜きにしても、アランの身体はパージに殴られた痛みもありかなりの激痛がアランを襲っていた。耐え切れなくなったアランはガレットに噛みついた力を緩め、ガレットは無理やり離した。皮はめくれ、肉が見えた鼻を抑えながらガレットは怒りに任せてアランを蹴り始めた。
「この女よくも! この、この!」
「うっ、ぐふっ!」
一頻り蹴り終わるとガレットは肩で息を整えてアランから離れた。
「くそっ反抗しやがって…そこまで反抗するのならもう飯は運んでやらんからな!」
ガレットは捨て台詞を残して階段を上がっていった。
―思い知ったか…クソジジイ。
アランは痛みに耐えながらガレットを罵る言葉を残し、意識を失くした。
~カルヴァンの結婚式まであと?日と?時間~




