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幼い約束は今から明日へ 二人の裏切りは残酷に!?

パージによって打ちのめされたペルチは気を失い過去の記憶を見ていた。

アランの必死の言葉にペルチは目を覚ましてアランに謝りだす。

「ぐす…もうやめて…」

「この! お前のせいで父ちゃんが…」

「痛っ!」

「父ちゃんを返せ!」

やや大柄な男の子が小さい女の子を蹴ったり殴ったりとしていた。女の子は反抗することもなく必死に耐え続けた。

「この! この!」

「やめなさい!」

「何だ? お前」

「男が女の子に手あげるなんて最低ね」

「うるさい! お前に関係ないだろ?」

「関係なくても女の子をいじめられるのを黙って見過ごせないわ!」

「うわっ!? こいつ!」

別の女の子が男の子に向かって喧嘩し始める。お互い一歩も引かなかったが男の子のほうが少し疲れを見せた瞬間に女の子は勢いよく拳をあてた。男の子は堪らず殴られたところをおさえ、後ずさりすると捨て台詞を残して去っていった。

「くそ…覚えてろー」

男の子に向かった女の子は肩で息をしながらいじめられていた女の子に近づいて手を差し伸べる。

「大丈夫? あいつやっつけたからもう泣かないで」

「ひっく…」

「どうしてやられっぱなしだったの?」

「だって…あの子の言ってること本当のことだから…」

「だからってやられたままだとまたいじめにくるよ」

「それでもいいの。私のお父さんのお仕事のせいであの子のお父さんが死んじゃったから、私ができるのは…」

「それとこれとは別の話しでしょ? それに死んじゃったからってあなたに当たるのは違うわ」

「でも…」

「お父さんの仕事ってなに?」

「傭兵所の…お店」

「ふ〜ん。その傭兵さんはどうなったの?」

「傭兵さん、あの子のお父さんを守るために…」

話しをしながらやっと泣き止んだ女の子は傭兵の話しをするとまた涙目になった。

「もしかして…その人も」

「うん…ぐす…」

「だったら余計にあの男の子にいじめられるのは間違ってるわ!」

「でもお仕事失敗しちゃったし、そのうえあの傭兵さんも…」

「だったら強くなろう」

「強く?」

「誰も死なせないくらい強くなってあなたが守ればいいのよ」

「えぇ!」

「私だってお母さんみたいに立派な人になりたくて頑張ってるからさ」

「お母さんみたいに?」

「私のお母さんれんきんぢゅつしでみんなの役にたとうと頑張ってるの」

「そうなんだ」

親のことを話して励ましていると、すっと小指をたてた。

「約束しよう。私達それぞれの目標に向かって頑張るって」

「…うん!」

暗い顔した女の子はそこでやっと笑顔になってお互いの小指を絡めて約束をする。

「あっ! まだ名前言ってなかったね。私アラン。アラン・ベネチル・エリシオール」

「ベネチル?」

「ベネチルっていうのはどういう意味かわからないけどれんきんぢゅつしになる人はこの名前も受け継がれるってお母さんが言ってたの」

「ふ〜ん、私ペルチ・コフィン」

「私とペルチ。友達になったから何かあったら言ってね。すぐ助けに行くから」

「わ、私だってアランに何かあったら助けにいくから!」

「うん!」

「えへへ―――」


「…ぺるち…ペルチ…ペルチ」

「う…ん〜」

アランの必死の声でペルチは目を覚ます。

「私…いつっ!」

「大丈夫? すぐに治してあげるから」

アランは鞄の中から傷薬をだしてペルチの手当をする。

「ごめんねアラン…約束守れなかった」

「ううん。私のためを想って戦ってくれた、それだけで嬉しかったよペルチ」

「だけど私…アランが危険な所にいくのだけは止めたかった。なのに私は…」

幼い約束を思い出して話すペルチは泣きながらアランに謝る。

「まだ約束果たしてないでしょ?」

「え?」

「パージさんを。みんなを守れるくらいに強くなるって約束がまだあるでしょ?」

「…うん」

「まだ私達は約束を果たしてないわ。だからまだペルチは約束を破ってないわ」

「アラン!」

必死に堪えていた涙をアランの励ましの言葉によってとめていた涙を流した。

「一番頑張っていたのはペルチだもんね。看護師にもなって、一人で強くなろうと頑張って、傭兵所の人に馴れるために煙草も吸って…」

「うわー…あぁ…」

「よしよし…泣き虫なのは変わらないわね」

「あー…ひっく…ぐすん」

泣き喚くペルチをアランは優しく抱いて背中をさすった。


 傷の手当を済まし、泣き止んだペルチは立ち上がった。

「みっともないとこ見せちまったな」

「いいのよペルチ。でもいいの? プリジィを借りちゃって」

「男どもはみんな今仕事がなくて暇を持て余してるところだから使っても大丈夫」

ペルチを先頭に三人はついていくと、大きな鉄の扉を開ける。そこに置かれていたのは二人乗り用の大型二輪装甲車両が綺麗に整備された状態だった。

「これは…」

「仕事で手傷を負った傭兵を運ぶ私の愛用にして相棒の二輪装甲車、プリジィちゃんよ」

「カッコイイ…」

パージとゴスは目の前のプリジィに驚き目を輝かせた。そんな二人をよそにペルチはプリジィに乗せてた治療箱や武器を片付け、もう一人分乗せるスペースをつくった。

「これでよし!」

「ありがとうペルチ」

「少し窮屈かもしれないけど我慢してね」

「いいよ、それくらい」

ペルチとアランが軽く話していると、横からパージが会話に入ってきた。

「おい」

「なによ?」

「治療箱があるのは納得するけど、なんで武器のほうが圧倒的に多いんだよ!?」

「追っ手がきたときの撃退用にあるだけだが?」

「よりにもよって爆弾ばっかじゃねぇか!」

「遠出する傭兵の護身用に保管してあるのもあるからね。多少多いかも」

「多少って量じゃないだろ!? 軽く三十はあったぞ!」

「まぁまぁいいじゃないパージさん。これでメチカルに向かう準備ができたんだから」

「だが―――」

「文句が多いよパージさん。そんなことだと女の子に嫌われますよ」

「くっ…うるせぇ!」

小言を言うパージをアランがあやしてその場は丸く収まった。

 三人は頭と肘に防護用のパッチを当ててプリジィに跨ってエンジンを吹かす。

「ちゃんとアランを守るんだよ! パージ」

「あぁ、元よりそのつもりだ!」

「行ってくるねペルチ」

「あのバカ王子を連れ戻すんだぞ、アラン」

「うん」

三人を乗せてパージが運転するプリジィは轟くようなエンジン音をさせて物凄いスピードで平野を走っていった。


 耳が劈くようなエンジン音と何かにしがみつかないと吹き飛ばされるくらいの速さで風をきって走る三人は喋る余裕もないままメチカルに到着する。

「うぅ…やっと到着した」

「もうだめ…ちょっと向こういってくる」

「俺もちょっとここで休憩する」

三人は初めて乗るプリジィにフラフラに酔うと、ゴスだけ離れて二人は腰を下ろす。

「嬢ちゃんの連れって凄いものもってるんだな」

「名前だけは聞いたことあるけど…気持ち悪くなった」

「俺もだ…でもこれでメチカルに着いたからあとはこいつをどこかに隠さないとな」

「そうね。誰かに盗られたら犯人が可哀想になるからね」

「機械より犯人かよ…まぁどっちでもいいや」

「私に任せて…ドーヴォンちゃんに頼めば大丈夫だから」

「わかった。この機械は嬢ちゃんに任せた」

「じゃあ早速ドーヴォンちゃんに頼んでくるね」

「もう動いて大丈夫か?」

「少し良くなったから多分大丈夫」

「そうか、俺達はここで待ってるからな」

覚束無い足取りでアランは街へ入っていくと同時に若干すっきりした顔つきでゴスが戻ってきた。

「おまたせ〜ってアランさんは?」

「この機械を誰かに見てもらうために街へ入っていった」

パージは重い腰をあげると険しい顔つきを見せた。

「ゴス…嬢ちゃんのためにも手加減はするなよ?」

「へい、兄貴」

ゴスも同じように怖い表情を見せて返事をした。


 街中を歩くにつれてアランもやっと酔いから覚めてすっきりした表情になってドーヴォン宅を訪れた。玄関の扉を軽くノックすると、あの時とは比べ物にならないほどに回復したドーヴォンが笑顔で出迎えてきた。

「はーい…あっ! アランさん!?」

「お久しぶりドーヴォンちゃん」

「お久しぶりです! あの時は私達親子を助けてありがとうございました」

「いいのよ。ちょっとドーヴォンちゃんに頼みたいことあるんだけど…いいかな?」

「うん、いいよ。なーに?」

「あのね―――」

アランはドーヴォンに外に置いてあるプリジィのことを頼むと笑顔で承諾する。

「わかった! 私とお父さんが見てるから」

「ありがとう、ドーヴォンちゃん。これから私遠くに行っちゃうからいつ帰ってくるかわからないけど、取りに戻ってくるから」

「うん! アランさん、いってらっしゃい!」

「またね、ドーヴォンちゃん」

アランはドーヴォンと別れると急いでパージ達がいるところへ戻っていった。


 そして門を潜ると体調を万全にした二人が塀にもたれてアランの帰りを待っていた。

「おまたせー!」「おかえり…」

「プリジィのことはドーヴォンって人に見てもらうことになったから誰かに盗られる心配ないわ」

「…」

「ドーヴォンちゃんすっかり良くなって可愛くなってたしね―――」

笑顔を見せながら二人の所へ戻っていくと、ゴスが怖い顔でアランの腹部に拳をいれる。

「かはっ!」

「…」

「ゴスさん…何を!?」

突然のことで守ることができなかったアランは腹部をおさえて膝を地面につくと、今度はパージが剣でアランを斬りつけ始めた。

「きゃっ!」

「大人しくしろ!」

「パージ…さん?」

「その名前を呼ぶな!」

怒声とともにまたも剣で斬りつけた。

「いやっ!」

「ゴス。もっと痛めつけろ! 喋れなくなるくらいにな」

「へい兄貴」

パージに言われてゴスはアランの腕を掴んで持ち上げて殴りはじめた。

「ぐふっ…あうっ!」

冷たい目をしたゴスは無言でアランを殴り続けた。殴って殴って…口の中が切れて血を吐き、頭からも血をたらたらと流れ、殴られた箇所は青ざめ始める。

「どうして…」

「まだ喋れるのか…ゴス! 交代だ」

「へい」

殴り続けたゴスはアランを物のように突き飛ばしてパージの前に突きだすと剣でアランを斬りつける。着ていた服はさらにボロボロになり、破れた雑巾のように衣服は切り裂かれた。アラン自身も殴打された傷と剣で切られた傷が至るところに負ってしまう。

「どうして…こんな…こと…を―――」

アランは一回も二人に攻撃を仕掛けることもなくただただやられて倒れだす。

「兄貴…」

「ガレットを信用させるためだ。耐えてくれ」

「くっ…ごめんよアランさん」

倒れたアランにゴスはお詫びの言葉を添えながらアランの手足をロープで縛る。

「よし。いくぞゴス」

パージは軽々とアランを担ぎ上げると街から離れた森へと向かっていった。


 二人は森に入ると昼間だっていうのに鬱蒼と茂る木々によって陽の光りが遮られて真夜中と思わせるほどの暗闇がどこまでも見せていた。暗闇に慣れるまで二人は立ち止まり再び歩いて森の奥へと歩いて行った。

「いつきてもここは暗いですね、兄貴」

「…」

「けどここまでしなくてもよかったじゃないですか?」

「黙れゴス! どこで聞いてるかわからないんだぞ? 余計なこと喋るんじゃねぇ!」

「う! …へい」

心配するゴスはパージの一喝で再び無言になる。どれくらい歩いただろうか時間の感覚がわからなくなりかけた時に一軒の小屋が二人の目の前に姿を現した。二人はゴクリと唾を飲んで意を決して小屋に近づいて扉にノックする。

「お、お久しぶりですガレットの旦那。パージとゴスです。今日は獲物を持ってきました」

パージが扉越しに声をかけると扉が軋む音とともにゆっくりと開き始めた。その奥から鋭い眼光で二人を確認すると、扉は二人を出迎えるように大きく開け放たれた。

「お邪魔します」

二人は挨拶をしながら小屋の中へと入っていくとすぐに扉は閉めてパージ達の前にガレットは回り込んだ。

「獲物はその女か?」

「はい。これをラン国にいるムグー様のもとへ運んでもらいたい」

「ムグー様にだと? ムグー様直々にご指名されたのか?」

「指名はされてませんが普段お世話になっていますのでそのお礼も兼ねてます」

「ほぅ〜」

パージの言葉に納得したのか気絶したアランをまじまじと見続けた。

「この女はどこで?」

「いつも通りメチカルで見つけました」

「この女は確か用心棒をつけていたと思うが?」

「はい。そいつの息の根を止めておきました」

「よし」

ガレットはパージからアランを取り上げると地下に続く階段を降りて鉄格子の牢屋にアランを放り投げて閉じ込めた。地下からガレットが戻り椅子に腰かけて飲みかけの酒を少しづつ口に運んでいると、パージは申し訳なさそうに喋りかける。

「ガレットの旦那。その女と一緒に俺達もムグー様のところまでついていってもいいでしょうか?」

ガレットは表情を変えずに最後の一口を飲み干すと口を開けて疑問を投げかける。

「お前たちがムグー様に何の用だ?」

「さっきも言ったように普段お世話になってますので、俺達の手でムグー様に差し渡そうと思いまして」

「ならわしが代わりに伝えてやる。お前たちが出張ることじゃねぇ」

「確かにそうですが、言伝より面通したほうが感謝の意が伝わるでしょう?」

「ふむ…」

「顔を覚えられたほうが指名してもらいやすく仕事も請けやすくなるのもあると思いまして」

「…」

しばらく考えたあとガレットは口を開いた。

「返事は明日でもいいか?」

「へい」

「わかった」

「なら俺達はこれで失礼します」

パージ達はガレットにお辞儀すると小屋をでていった。

「…」

ガレットは無言のまま地下へ降りてアランの容姿をみながらまた考え始めた。

「…ムグー様に差し出すのに女はいいとして、あいつらがどうして」

パージ達のことを疑念に感じながらガレットは呟いた。


 カルヴァンを乗せた飛行船は優雅に昼食をとっていた。ミジバルクの王と王子の二人とラン国の大臣バラレンの三人はだされた料理を静かに食事をすすめる。

「…」

「我が飛行船と国で一番の腕をもつ料理人が作るお料理はいかがですか?」

「…」

「えぇ、とっても美味でございます。それに眺めもいいですな」

「…」

「王子はどうですかな?」

「…」

「急な婚儀に少々緊張されているだけです」

「そうですか? ミジバルクの時のご挨拶から一言も口を開きませんが…」

バラレンとミジバルク王が話しをしていると、カルヴァンは口を拭いて立ち上がって部屋へ戻ろうとする。

「ごちそうさまでした」

「どこへいくのだ? カルヴァン」

「お部屋に戻るだけです」

父である王にもカルヴァンは正気を抜かれた目を向けて一言いって部屋へと歩いて行った。部屋へと続く廊下を歩いているとふと窓に顔を向けて遠くにいるアランを想いだす。

―アラン…あの手紙気づいたかな?

―気づかなくてもいいが、僕のことは忘れて幸せでいてくれ


〜カルヴァンの結婚式まであと四日と二十三時間〜

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