最低な傭兵?
護衛としてカインと名乗る傭兵を雇うことにしたアランは隣り村のマグダイ村までいくこととなる。カインとアランは話しながら歩くが、アランはカインの無知とへっぴり腰に期待を無くす。心配になったアランは村までの道の途中のアランの家に寄るが…。
勘違いによってカインという青年を護衛として雇ったアランは隣り村のマグダイ村に向かって歩いていた。
アランはカインになにができるかを尋ねる。
「カインは剣以外に何ができる?」
「剣以外? 例えば?」
「例えば〜…魔法が使えるとか、剣の他に武術を習ってるとかさ」
「そうですね…魔法なんて勉強したことないですし、剣以外は全然やったことないです」
「なんだ。期待して損しちゃった」
「え?」
「他の傭兵達は最低でも剣以外に魔法つかったり、拳や鞭、遺跡や洞窟いく傭兵なんか多少なりと考古学や古代文字をかじったりする人もいたわ」
「みんなすごいですね」
「そうよ。それに比べてカインは…まぁ登録したばっかだから、これを機に勉強することだね」
「勉強かぁ〜。僕苦手なんだよな」
「勉強好きな人なんてそうそういないわよ。よっぽどのもの好きか、生業として生きてる人でも仕方なく勉強する人だっているわ。もちろん私もよ」
「アランは何を?」
「私は錬金術師よ。錬金術の勉強して仕事をもらって生活してるのよ。今回マグダイ村に行くのも私が請け負った仕事のために行くの」
「アランに仕事を頼んだ内容は?」
「畑の作物が育たないから何とかしてくれって手紙が来たの。1度畑の調査をして、私に何ができるか見てみるの」
「そんなに深刻なんですか?」
「深刻に決まってるわよ! ミジバルク国の食料は隣りのマグダイ村で賄ってるの。その食料がなくなると、他の国に頼ることしかないのよ」
「そうなんだ」
「他人事みたいに言うわね〜あんた」
「え?」
「仮にもミジバルクに住んでる人としてはなんとかしようとするものよ」
「そうだよね…僕ももっと勉強して良くしていかないとな」
「はぁ? カインが勉強しても良くならないわよ。そういうこと言えるのは国王とかが言うものよ。カインは今勉強することは、立派な傭兵となるべくいろいろなことを勉強するのよ。こういう問題は国王に任せるしかないの」
「そ…そうでしたね」
うっかり喋ってしまったカインだが、アランは気にもせず傭兵のノウハウを教える。
すると近くの草むらから狼の魔物がアラン達を襲い始めた。
「魔物!? カイン、あんたの出番よ」
「え!?」
「えじゃないわよ! そのために護衛として雇ったのよ。早く追っ払うか倒しちゃってよ!」
「そ…そんな」
アランはカインの後ろにまわり、カインを盾にする。
カインは震えながら剣を構える。
「うぅ…」
「何してるの? 早く!」
ジリジリと魔物が迫ると同時にカインも後退する。
「来ないでくれ…」
怯えながらカインは呟く。
そんな事情も知らない魔物はカインに飛びかかろうとする。
「ひっ!」
カインは堪らず目を閉じ腕で身を守ろうとする。
すると。
ドン!
横にどかすようにカインはそのまま倒れる。
バン!ドン!
何か叩くような音が聞こえると、
「キャンアァン!?」
魔物は叫びながらどこかへ逃げていきました。
「まったく…この程度の魔物で怯えるなんて、情けない」
アランの声を聞いて、カインは目を開けると…。
「あんた、魔物と戦ったことないの?」
見下すような目をしながら杖をてにするアランがいた。
「はい…」
「こんな弱腰の傭兵なんて見たことないわ!」
「ごめんなさい」
「何のために剣習ってたのよ?」
「身体を思いっきり動かせれたから剣には自信はあったんですけど…」
「この程度で怯えてたら、人と戦う時なんて使い物にならないわね」
「人!? なんで人と戦うんですか?」
「当たり前のこと聞かないでよ! 外には山賊や人攫い、追い剥ぎなんかもいるのよ。自分の身を守るためにも、人間と戦うことなんてよくある!」
「そんな…人間同士戦うなんて」
「今に限ってのことじゃないわ。大昔なんて戦争で多くの人が亡くなったわ」
「戦争?」
「そんなことも知らないの? 昔西の大陸のラン国と南の大陸のヴァゼル国が戦争したの。きっかけは思想の違い。商業国家のヴァゼル国が武力国家のラン国に協定を結ぼうとしたの。でもラン国はそれをひどく断った。ラン国の王はヴァゼルの策略と思い、攻撃を仕掛けた」
「どうして?」
「ヴァゼル国は商業の国、商売の中に武器や鎧を扱ってて、それを後ろ盾にラン国を支配すると考えたらしいの」
「たったそんなことで…」
「攻撃を受けたヴァゼルはひどく怒り、戦争が始まった」
「それでどうやって戦争は止まったの?」
「…」
「アラン?」
「ホント何も知らないのね」
「え?」
「なんでもないわ。戦争を止めたのは東の大陸の小さな村に住んでた1人の青年の行動よ。その人は単身でラン国の王に会い、戦争を止めるように訴えた。でもプライドの高い国王は耳を傾けなかったわ。それどころかヴァゼルの回し者として国民の前で処刑されることになった。」
「そんな…」
「その光景をみた国民達は国王の思想に我慢できず国民全員が国王を襲い始めた。ヴァゼルの戦争と国民の反乱を受けたラン国は対処しきれず、仕方なく降伏することとなった。そのせいでかなりの犠牲者がでたため、ラン国がこれ以上無茶なことしないために再度協定を結ぶことになった。だけどその内容は最初に協定をした時よりヴァゼルを縛る内容が書かれていた。ラン国王もそれを渋々承諾して、戦争が終わった」
「ひどい話しだな」
「戦争をいい話しと解釈することなんてないわ」
「…」
「お勉強の時間は終わり。わかったら魔物や人間に怯えずに戦ってよね」
「はい…」
アランの最後の言葉に肩を落すカイン。
心配になったアランは、
「念のためちょっと寄り道するわ」
「寄り道?」
「少しいったところに私の家があるわ。そこでちょっと爆弾を多めに持っていくの」
「爆弾!?」
「そうよ。カインがあまりにも頼り無さすぎだからね」
「すいません」
「次はちゃんとしてよね」
気を落とすカインをよそにアランはさっさと歩いていく。
そして大きな樹と家を目にすると、アランは足早に家に入る。
「ただいま〜」
挨拶をするアラン。
だけどカインは黙ってアランの家にあがる。
「ちょっと!」
「は…はい!?」
「何普通に入ろうとしてるの? ここは私の家なの。お邪魔しますの言葉もないわけ?」
「おじゃまします…」
「はぁ…温室育ちもいいところよ。仮にも女の家に入ることを自覚してよね」
「どうしてだ?」
「どうして? 年頃の若い男女が1つ屋根の下にいるわけよ。この意味わかる?」
「わかりません」
「…」
「どうされました?」
「いいえ、なんでもないわ」
呆れを通り越して怒ることもしなくなった。
カインは近くの椅子に勝手に座る。
それをみたアランはもう声を荒らげて怒ることもしなかった。
何もなかったようにアランはカインにお茶をだす。
カインは何も言わず出されたお茶をすする。
―カインって一体どういう育て方されたんだろう?
アランはカインの一つ一つの行動を思い返すが思い返すだけで腸が煮えくり返そうになった。
そんなカインをよそに2階にあがり爆弾を用意する。
カインはアランの家を見回す。
するとカインは壁に掛けてある表彰状や絵、写真を眺める。
『第12回錬金調合大会 優勝 アラン・B・エリシオール』
『錬金術師認定 アラン・B・エリシオール』
『感謝状 アラン・B・エリシオール』
「すごい表彰状や感謝だ…」
呆気に取られるカインは1つの写真を見る。
そこに写ってるのは幼い頃のアランと達観した青年の写真が写ってた。
「これは…」
写真に見入ってると、2階からアランが降りてくる。
「おまたせ」
アランはカインに声をかけて2人は家をでていった。
するとカインはアランに声をかける。
「あの写真に写ってるのは誰?」
「あんたって無粋よね」
「え?」
「勝手に黙って家に入るわ、お茶だしても黙って飲むわ、挙句の果てにプライベートまで突っ込んでくるわ、最低ね」
「え…え?」
「もういいわ。ここまで我慢してたけど、今ここで護衛の任を解くわ。もうニ度とあなたを傭兵として雇うことはないわ」
「どうしたのアラン?」
「私の名前を軽々しく呼ばないでくれる?」
「どうしたんだよアラン?」
「聞こえなかったの? 解任って言ったの。好きなとこに行って!」
「アラン…」
アランの怒りの限界もここまでだった。
執拗いカインに怒りに任せて先ほど持ってきた爆弾を手当たり次第に投げつける。
「どっか行けって言ってるのよー!」
家に立ち寄った時の爆弾を手当たり次第に投げまくる。
「わ! わわわわ!」
嵐のように降り注ぐ爆弾を慌てて避けるカイン。
「消えろ消えろ消えろー!」
ドォン! ドォン! ドォン…。
爆弾を使い切ると、そこにカインの姿はなかった。
そして爆発の跡がそこかしことできあがる。
「はぁ…はぁ…逃げ足だけは速いんだから」
肩で息をするアラン。
気持ちが落ち着くまでしばらくその場で立ち尽くす。
「今までで最悪の傭兵だったな。もう顔も名前も覚えたし、ニ度と指名しないわ」
歩きながらカインを思い返すとまた怒りが込上がってくる。
―もうあんな人なんか忘れよう。
アランはそう思いながらマグダイ村まで歩いて行きました。
すると僅かだけどアランの鼻を急に刺激した。
刺激をした匂いの元をアランは知っていた。
「この匂い…河が近くにあるんだ。もう少しでマグダイ村に着くわ!?」
アランは沈んでいた機嫌を持ち直し、マグダイ村に向かった。
そして村を見つけ、アランはマグダイ村に入ると、近くの住人が声をかける。
「いらっしゃい…あ !アラン様」
住人がアランの名前を呼ぶとみんな一斉にアランに視線を向ける。
「こんにちは。村長さんの手紙を見て伺いました」
「おぉ〜そうですか。村長様のところへ案内します。こちらへ」
住人の案内のもと、アランは住人の後をついていく。
そして一番奥の大きな家に案内され、住人が村長の玄関をノックする。
ドンドン!
「村長! アラン様がお見えになりました」
「…アラン様? 来てくださったのか!? 入れて差し上げなさい」
中から村長らしき人がそう言うと、玄関を開けてアランに入れるようにした。
「ありがとう」
アランはお礼を言って家に入る。
すると村長がアランを出迎える。
「ようこそアラン様」
「お手紙拝見しました。早速畑を見せて頂けませんか?」
「あぁすまない」
村長の出迎えの言葉にアランは畑を調査を進めようとする。
そして村長とともに畑に向かう。
畑に成ってる作物はほとんど枯れていた。
「この有様なんじゃ。なんとかできませんか?」
「なんとかするために私は来たの。ちょっと待ってて」
アランはズカズカと畑に入り、枯れた作物を引っこ抜いたり、畑の土を触り始める。
「ふぅん…」
「何かわかりました?」
「原因は肥料だと思うわ」
「肥料?」
農作業の村で肥料のことを指摘されて疑問を感じる村長。
アランは続けて説明する。
「最近肥料を変えませんでした?」
「そういえば、先日この村に立ち寄られた旅の方が肥料を変えたら作物の成長を促して、普段の3割収穫できると勧められました」
「その肥料が問題なのよ。確かにその肥料は成長を促してくれるけど、ここの土と相性が悪く、成長し過ぎて枯れてしまったの」
「そんな…どうすれば?」
「いつもの肥料に変えれば直良くなりますよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「いえいえ」
「でもこれでは国に納められるだけの作物ができないな…どうすれば」
「そのことについては、私が代わりに王様に話してきます。村長はいつものようにしててください」
「ありがとうございます。さすがアラン様」
お礼を言う村長にアランは袋から何かを漁り出す。
そして瓶詰めの液体を村長に渡す。
「これはまだ試験段階ですけど、これを水と混ぜて作物にかけてみてください」
「これは?」
「私が開発中の育成剤です。まだ実践したことないですので、試して育ったらまた定期的に薬と一緒にその育成剤も作って送りますので」
「ありがとうございます」
「いいですよ。いつもご贔屓していただいてこちらこそありがとうございます」
お互いお礼を言いながら頭を下げる。
「では私はこれで失礼します。街に戻り次第ミジバルク王に伝えますね」
アランはそう言って村長と別れる。
「ありがとうございます。アラン様。また何かありましたらお手紙書かせていただきます」
村長もアランにそう言って、アランにもらった育成剤を早速使うことにした。
何も成ってない畑に種を埋め、肥料をまき、最後に育成剤と混ぜた水をかける。
するとすぐに芽がでてきました。
「おぉ!? もう芽がでてる」
その成長の速さに驚く村長だった。
村を離れたアランは時間を確認するため、空を見上げる。
すると太陽はやや西に傾きつつあった。
「この様子だと街につくのは夜になっちゃうな。明日朝一番に王様に会いに行こう」
アランは明日の予定を決めると一先ずアランの家に戻ることとなった。
帰る途中カインに会うんじゃないかと思ったが、あんな最低な傭兵のことは忘れよう。
思ったことを振り払うように首を振った。
そしてしばらく歩くと景色がだんだんと赤く暗くなり始めた。
「もう夕方か」
アランは呟くと急ぎ足で歩く。
真っ暗になる前にアランは家に帰った。
「ただいま〜」
昼間と同じように挨拶はするがそれを返す人はいなかった。
「お腹空いたな〜。今日はいっぱい歩いたから晩ご飯はお肉料理にしよう」
献立を考え、台所に行って料理を始める。
トントントン…グツグツグツ。
手際のいい音といい匂いをだしながら晩ご飯を作る。
できたてのご飯をテーブルに置いて、
「いただきます」
アランはまた寂しい晩ご飯を送った。
食べ終わるといつものように食器を台所に持っていってすぐに食器を洗う。
片付けまで終わると、すぐに2階にあがり調合を始める。
「爆弾全部使っちゃったし、爆弾を作ると…あと朝薬作ってる途中だったから薬も作ろうっと。あとは…」
本をとって読みながら作業を確認する。
最後に開発中の調合をしようと予定をたてる。
そして爆弾を作り始めようとしたその時。
ドンドンドン!
玄関の扉が荒々しくノックされる。
「ったく今から調合しようとしてるって時に誰だよ!?」
不満を言いながら1階に降りて玄関の扉を開ける。
「どなたですか〜」
ガチャ!
言いながら扉を開けると鎧をまとった数人がアランをおさえる。
「いってーな! なんだよ!?」
「黙れ! 誘拐犯!?」
「ゆ…誘拐犯!?」
「お前が誘拐したのはわかってる。王子をどこにやった!?」
「王子? なんのことだ?」
状況が全く理解できないアランは困惑する。
「今日の昼間、街で王子と一緒にいたのは多数の目撃情報があるんだ。王子はどこだ!?」
「昼間? 王子?」
アランは昼間と街をヒントに思い返す。
「…まさか!?」
アランは確信した。
「王子はどこだ!?」
「知らない! 私知らないわよ!?」
「とぼけるな! 王子をどこに隠したか吐くまでその身体に叩き込んでやる。連行しろ!?」
「え!? ちょっとまって…」
アランの声を誰も聞き入れてくれなかった。
そして外で待機してある馬車に強引に入れられて馬車は出発する。
馬車の中でも必死に訴えるが一切聞く耳持たない様子だった。
そしてそのままアランは誘拐犯の重要人として城に連れて行かれました。
―こんな形で城なんて行きたくない!
アランはそう思いながら城の門をくぐっていきました。




