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二人の新しい生活の始まり?

能力チェックを終えたパージはアランとカルヴァンの元に急いで戻る。パージと合流したアラン達はパージをどこかへ連れて行こうとする。連れて行った先はゴスが働くことになったバーへと足を踏み入れる。

 「おかえりパージさん」

「おかえりパージ」

既に日が落ちて街灯に灯りがつきはじめた頃に能力チェックを終えたパージが走ってくる。

「嬢ちゃん達、外で待ってたのか!?」

「中で待ってたかったけどどうしてもあの煙草の匂いだけは…」

アランは苦笑いしながら事情を説明する。

「能力チェックはどうでした?」

カルヴァンも自分も一応傭兵という身を認識しながらパージが受けた能力チェックを気にする。

「まぁいろいろあったが、これで俺も傭兵として登録されて働けることになったよ。ありがとう嬢ちゃん」

報告しながらアランに礼を言うパージにアランは首を横にふる。

「ううん、私は紹介しただけ。傭兵としての実力はパージさん自身が掴み取った力よ」

「よしてくれ。あまり褒められたことないから」

パージは顔を赤くしながら視線を逸らす。アランは急にパージの手を掴んでどこかへ連れて行こうとする。

「お祝いしよう、パージさん」

「お、お祝いって俺だけ祝われるわけには―――」

「いいからいいから」

ゴスのことを気にするパージの背中を押してアランの後押しをするカルヴァン。


 二人の行為を無碍にできないままパージはゴスの働き先であるバーに入っていく。

パーンパーン!

「おめでとうー、パージさん」

従業一同でパージの傭兵登録を祝福する。その中にもちろんゴスの姿もあった。

「え!? お、おいこれは何だ? ゴス、お前まで…」

状況が理解できないパージは驚くとマスターが笑みを浮かべながら説明する。

「アランちゃんと王子様のお願いで二人を祝うことにしたんだ。店は急遽閉店してな」

従業員の輪の中からゴスはでてきてパージの手を両手で掴んで喜びを分かち合おうとする。

「兄貴。俺たちはここからまた再出発する意味も込めてがんばりましょう」

メチカルでは褒められるようなことは何一つしなかった二人にとって、この瞬間から新しい人生を迎えようとする。誰かを蹴落とす人生から助ける人生にへと。パージももう片方の腕でゴスの手を掴んで決意する。

「そうだな、俺たちはあの街を出て一度死んだんだ。俺たちはここから人生をやり直そう、ゴス」

二人の目は涙で潤んでいたものの、これから先のことに胸をふくらませる。

 マスターは締めくくるように声を大にして喋り始める。

「さぁ! 今晩は祝いだ。ゴスさんとパージさんの新しい生活に、乾杯!」

「かんぱーい」

従業員から飲み物を受け取った四人はマスターと共に乾杯する。店の中央には盛大な料理がたくさん置かれ、みんな好きな料理を小皿にわけて食べ始める。アラン達四人も好きな料理を小皿にわけて食べ始めるとゴスとパージはお互いにこれからの生活を応援する。

「兄貴、俺はマスターの家で下宿しながらここで働くことになりました」

「よかったなゴス。美味い飯にもありつけてそのうえ屋根のあるところでやっと寝れるようになれて」

「兄貴のほうはどうなんですか?」

「傭兵登録した人達は一軒ずつ家を提供してくれてそこで暮らすことになるらしいんだ」

「そうなんですか。兄貴…こんな俺をここまで面倒みてくれてありがとう」

「おいおい泣く奴があるか。俺もお前に惹かれて勝手にやっただけのことだ、礼を言われる筋合いはねぇぜ」

嬉しさのあまり涙を流すゴスにパージは肩を叩いて照れ隠しする。

「それでも言わせてください兄貴。…面倒みてくれてありがとう兄貴。俺はもう一人でやっていけれるから、兄貴は兄貴のことだけ考えて生きてくだせぇ」

「馬鹿野郎! 俺にとってお前は弟みたいなもんだ。困ったときは遠慮なく言えよ」

「兄貴…」

二人はこれからも互いを想いながら生きていこうと決意する。


 アランは久々の豪勢な料理を独り占めするような勢いで貪りだし、その様子を横目で呆れるように見ながら、適当な量をとって口に運ぶカルヴァンは心配する。

「アラン、そんなに一気に口に入れたら喉につっかえるよ」

「なにをいってるのよガルヴァン。今たへなきゃいつたへるんたよ!?」

口一杯にいれて話すアランを見てこれ以上声をかけるのを止そうとすると、アランは胸を叩いて苦しみだす。

「ん!? んん!」

「ほら言わんこっちゃない。はい」

カルヴァンはアランが口にしたカクテルを手渡すと一気に飲み干す。

「んぐ…んぐ…ぷわー。助かった〜、ありがとうカルヴァン」

「食べ物は逃げないからゆっくり―――」

「次あれを食べるぞー!」

注意しようとするカルヴァンをよそにアランは次の料理に向かって小走りする。

「やれやれ」

アランのことを放っておいてジュースを飲んでいるとマスターがカルヴァンに近づいてきた。

「手のかかる主人だろ?」

「マスター。はい、こうなると子供みたいに面倒みるしかないですね」

「王子様もアランちゃんの扱いに慣れてきたみたいだな」

二人はアランを見ながら話しを進めると、カルヴァンは思い切ったことを口にする。

「マスター、僕のことは王子様と呼ばないでください。アランみたいにカルヴァンと言ってください」

「だが王子様、俺らみたいな庶民が―――」

「ここにいる僕は王子ではなくみんなと同じ市民みたいに扱って欲しいんです。市民の暮らしをよく知るためにそうして欲しいんです、お願いします」

拒もうとするマスターにカルヴァンは頭をさげてお願いする。その思いにうたれてマスターはやっと名前で呼ぶことにする。

「わかったよ王子…カルヴァン様」

「『様』もいいです。呼び捨てでいいですよ」

「わ、わかったカルヴァン…」

「ありがとうマスター」

カルヴァンはジュースを一口運ぶ。

「アランちゃんの護衛はどうですかカルヴァン?」

マスターは二人を心配すると、カルヴァンはジュースをテーブルに置いて話し始める。

「とても勉強になりますし、感謝もしてます。不勉強な僕に優しく教えてくれたり、外での生活も知ることができて」

「アランちゃんは面倒見がいい娘だからな。この店にちょくちょく来て愚痴をこぼしたり相談にのってあげたりしたりするときもあるけど、俺たちが困っていると自分のことなんか放っておいて人の世話ばっかりするからな」

「そうですね。パージとゴスを連れて行こうとした理由もそれでした」

「だけど少し危なっかしいところもあるけど、そこがアランの魅力なんだ。そんなアランにみんな惹かれるんだ」

「マスターはアランのこと好きなんですか?」

異性の話しを口にするカルヴァンに対してマスターはコップに入った地酒を飲み干すときっぱりと応える。

「好きに決まってるだろう! アランちゃんはここのマドンナみたいな存在だからな」

「ま、マドンナですか」

その言葉を聞いて拍子抜けすると、奥からアランがカルヴァンを呼ぶ声がした。

「カルヴァーン! こっちに来て一緒に飲もうよ〜」

「やれやれ、とんだご主人様だな」

椅子に腰掛けていたカルヴァンは重い腰をあげるように立つと、マスターが軽く忠告する。

「こうなったアランちゃんは止められないからな。ちゃんと護衛しろよ、カルヴァン」

「重々承知してます、マスター」

カルヴァンはジュースを飲み干してそのままアランの元へ行きました。

「いい王子様じゃねぇか、次期王になる日が楽しみになっちまうじゃない」

カルヴァンの背中を見てマスターは次のお酒を取りに行く。


 パーティもお開きになり、酔ったアランをカルヴァンはおぶってアランの家に運ぶ。

「まだまだいくよ〜カルヴァン」

「もう帰るんですよアラン」

「まだわたしあかえあないー」

呂律が回らない程に酔ったアランをよそにカルヴァンは街をでていく。

「カルヴァン〜みてみて。星が綺麗だよ」

「うん? そうだねアラン」

「私はあの星みたいに輝いてみんなの困ったことを解決する錬金術師になるんだ〜!」

「わかったからそんなに暴れないでくださいよ。ただでさえ重いのに暴れられたら―――」

「カルヴァン! 女の子に対して重いって言っちゃいけないのよ。もっと女心を勉強しなさい」

「はいはい」

「カルヴァンはもっといろんな勉強して力もつけて、いつか偉大になる私の護衛となってもらうんだから」

「偉大になる人がこんなに酔ってたらだめでしょ」

「今はいいのよ今は!」

「はいはい」

酔っ払いのペースに翻弄されながらカルヴァンはアランの家に辿り着く。

 扉を開けて二階に上がってアランをベッドに寝かせる。

「ただいま〜」

自分で肩を揉みながらカルヴァンは帰ろうとするとアランはそれを止める。

「カルヴァン! また女の子の部屋に勝手に上がり込んで〜。だめでしょ」

「はぁ、ごめんなさい」

「わかればいいのよ」

「じゃあ僕は帰りますね」

今度こそ帰ろうとするとアランはカルヴァンの手を掴んで止める。

「アラン、僕も帰らないと―――」

「一緒にいて…」

「!?」

上目遣いでみつめるアランにカルヴァンはたじろぐ。

「い、一緒にいてって…」

「ここで私と暮らして」

「な!…何言ってるんですかアラン!?」

カルヴァンはあらぬ想像をしながら拒もうとする。だけどアランの暴走は止まらなかった。

「ここで暮らせばカルヴァンは戻らなくても済むでしょ?」

「だ、だめだよアラン!そんなこと言っちゃ…」

「そしたら私がいちいちお城に迎えにいく手間が省けるから〜」

「そっちかよ!」

最後の言葉にずっこけながらツッコミをいれる。

「僕は王子で次期王になってこの国を治めなければいけないんだ。だからそういうことは…」

「…」

「聞いてるアラン?」

「…すぅ」

「寝ちゃったか、まったく…ホントてのかかるご主人様だな」

カルヴァンは今度こそ帰ろうとすると、先ほどカルヴァンを離すまいとしたアランの手がまだカルヴァンの手を掴んでいた。

「アラン、僕は帰らないと…」

アランの寝顔をみながら困惑していると、アランの目から一粒の涙が流れていた。

「アラン…」

その涙の意味がわからなかったカルヴァンだったが、なぜか離れちゃいけないと思いベッドにもたれながら座ることにした。

―何やってるんだろう。

いつしかカルヴァンもそのまま寝てしまいました。


 そのまま朝を迎え、アランは目を覚ます。

「う〜ん…昨日は羽目外しすぎたな」

昨日のパーティのことを思い出しながらアランはベッドから起き上がろうとすると、ベッドにもたれながら眠っているカルヴァンを見つけて驚きだす。

「え!? か、カルヴァン!」

声をあげようとした瞬間、声を細めて状況を整理しようとする。

「え、えっと確かゴスさんとパージさんを祝うパーティをして…それから久々の料理とお酒を飲んで…。だめだ、そこから先が思い出せない!」

頭を抱えこむアランだったが時期に落ち着いてその場から離れようとする。

「わからないことを考えても仕方ない。朝ごはん作ろう」

一階に降りようとしたときチラッとカルヴァンの寝顔を覗く。

「よく寝てるわねカルヴァン。私を護衛してここまで運んできた疲れがきたんだよね」

カルヴァンを気にしつつ一階に降りて朝ごはんを作り始める。その音に気づいてカルヴァンはようやく目を覚ます。

「う…ん〜、あれ? いつの間に寝ちゃったんだ?」

部屋を見渡すように起きると一階でアランが料理する音に気づいて降り始める。

「おはようアラン」

「お!? おはようカルヴァン」

料理に夢中で気配に気付かなかったアランは驚き、すぐに顔を逸らすように料理に集中する。アランは昨日起きたことが気になりカルヴァンに声をかける。

「ど、どうして私の部屋で寝てたの?」

「覚えてないの?」

「う…うん」

「ここまで運ばせておいてよく言うよ」

「わ! 私だって好きで酔ったわけじゃないんだから!?」

「入って寝かせようとすると帰そうとしなかったくせに」

「帰そうとしなかったって…私なにしたの?」

「気になる?」

「き、気にならないわよ」

「あっそう」

カルヴァンはアランの横に近づいて顔を洗って椅子に座るがアランは昨日のことが知りたくても意地を張って聞くに聞けれない状況に後悔する。

―私の馬鹿ー、なんでそこで素直にならないのよ。

―そしたら昨日なにがあったのか聞けたのにどうしてあんなことを…。

「はぁ」

落胆しながら料理をしているとため息するアランの声を聞いてカルヴァンは再度尋ねる。

「聞きたくなった?」

「気にならないって言ったでしょ! しつこい男は嫌われるわよ」

またも思っていることとは逆のことを言って後悔する。

―うぅ〜…どうして素直に聞けれないのよ、私の馬鹿ー!

すると、

ドンドンッ

玄関の扉をノックする音がしてカルヴァンは玄関の方へ行く。

「僕が代わりにでるね」

「うん、お願い」

 後悔して自分を蔑むアランにいつもくる来客者のことをすっかり忘れてカルヴァンに任せる。そして扉を開けると、

「はい、なんですか?」

「お、お前!? どうしてアランの家にいるんだよ?」

配達員は急にカルヴァンがでてきたことに驚きを隠しきれなかった。

「いちゃ悪い?」

カルヴァンは初めて会った配達員の態度を思い出しながら悪態をつく。

「悪いに決まってるだろ! 女の家に男がいる時点でおかしいだろう」

「おかしくなんかないだろ? 僕はアランを護衛してるんだから」

「その護衛がなんで家にいるかってことだよ!?」

「知りたければアランに聞けばいいだろ?」

カルヴァンはアランに視線を向けると配達員もつられてアランに視線を向ける。

「アラン! どうしてこんなところに王子がいるんだ?」

「え!? あ、あんたなんで?」

「いつものことだろ。それよりなんで王子がここにいるんだよ?」

「え、えっとそれは…」

しどろもどろになるアランを見てカルヴァンはアランの肩を抱いて配達員に宣言し始める。

「今日から僕はここに暮らすことになったんだ」

「え!?」

突然の言葉に二人は驚く。

「な、何言ってるのよカルヴァン!?」

「昨日言ったじゃない。ここで暮らしてって」

「え〜!?」

昨日言ったことをそのままアランに伝えるがアランは酔っ払っていたため思い出せず驚く。

「アラン! そんなこと言ったのか?」

「え!? わ、私…」

「それに王子も。城はどうするんだ?」

「二人のことに首を突っ込まないでくれない? 配達員さん」

カルヴァンは見下すように見ると、配達員は腹を立てながら去ろうとする。

「そうだね! 二人のことに首を突っ込んで悪かったね。精々お幸せに」

「え!? ちょ、ちょっとまって―――」

配達員は扉を勢いよく閉めてアランの家から離れていきました。突然の言葉に驚きアランはカルヴァンに問い詰める。

「どういうことよカルヴァン!? 説明してくれる?」

「あ〜スッキリした!」

清々しい顔するカルヴァンに若干苛立ちながらも状況説明を頼むアラン。

「スッキリしたってどういうことよ? それに暮らすって本気じゃないわよね?」

「僕はそれでもいいけど」

「それでもって…」

「それにあの人に一泡吹かせただけで僕はそれで満足したよ」

「あいつ本気にしてるよ」

「それでいいじゃない」

笑いながら話すカルヴァンにアランは本気で怒りだす。

「カルヴァンは王子でしょ! いつか国を背負う人になるんだからこんな馬鹿なこと言わないでよ」

「王子である前に僕はアランを護衛する身だよ」

「それとこれは別よ!」

「別じゃないよ」

次第にカルヴァンは真剣な目をして話しだす。

「ふざけないで!」

「ふざけてないよ。国を背負うことも一人の主人を守ることは一緒だよ」

「私と国を一緒にしないで!」

「国は市民によってできてるんだ! 一人の人を守るのも一緒だ」

「カルヴァン…そこまで考えて―――」

カルヴァンの一言に納得しかけたとき、

「…なんか焦げ臭くないか?」

カルヴァンは匂いを指摘すると、

「あー!」

アランは慌てて台所に行って火を止める。

「あ〜…」

「アランも失敗するんだ」

焦げた料理をカルヴァンは覗きながら話すと、アランはまたも声を荒らげる。

「カルヴァンのせいよ!」

「な!? どうして僕が」

「カルヴァンがあんなこと言うから焦げたのよ」

「焦げた原因を僕に擦り付けないでよ」

「これカルヴァンが食べてよね」

「食べれるかー!」

「主人の言うことは絶対なのよ。私の愛のこもった手料理を食べてね」

「こんな黒焦げの愛なんていらないよー!」

「逃げるなカルヴァン!?」

二人は狭い部屋をはしりまわったのでした。

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