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大切なのは味じゃありません!?

アランの家で昼ご飯を食べてこれから二人の新生活を支えるためにアランは職を紹介する。

最初にゴスが働く場所を紹介すると、そこはアランがいつもお世話になっているバーだった。

 アランの家で昼ご飯を食べて四人はミジバルクの街の門を潜る。ここでパージとゴスはそれぞれの職に就き、生活することとなる。

「まずはゴスの働けそうなところに行ってみましょう」

アランはゴスの働き先を案内する。そこはいつもアランがお世話になってるバー『リュッカの休憩場』だ。アランはいつものように扉を開けて入り、残りの三人も続いてバーに入ってマスターに声をかける。

「マスター」

「おぉアランちゃん! 今日は大所帯なんだな」

「ちょっといろいろあってね。それでねマスター、今人欲しくない?」

「人か? 欲しいっちゃ欲しいけど。もしかしてアランちゃんここで働く気になったのかい?」

冗談混じりでマスターはアランをからかうように話すとアランは笑いながら冗談をかえす。

「私が働いたら毎晩繁盛して休みなしで働くことになるわよ」

「週一くらいの休みとアランちゃんが店に来てくれることが唯一の楽しみなんだからそれは勘弁してくれ」

マスターも笑って観念するとアランは本題に入り始める。

「ふふっ。冗談はこれくらいにして、このゴスさんって人をここで働かせてほしいんだけどいいかな?」

アランはゴスの体を引いてマスターの前に立たせて紹介する。マスターも吟味するようにゴスの体をみる。するとマスターは幾つかゴスに質問する。

「ゴスさんって言ったか。今まで飲食店で働いた経験は?」

ゴスは大きくて威厳あるマスターをみて少したじろいで緊張しながらも正直に応える。

「あ、あありません」

「ふむ。料理した経験はあるか?」

「興味本位でアランさんに教わりながらメチカルまでキャンプ料理をしました」

アランという言葉にマスターの視線はアランに向けると、

「ゴスさんの料理は美味しかったわ。初めて料理したとは思えないくらいだったわ」

アランはにこやかな笑みをしてマスターに話すと、重い腰をあげるように厨房に向かいながらゴスを誘導する。

「アランちゃんがそこまで言うなら雇ってもいいが、その前にゴスさんがどれだけの腕があるのか確かめさせてもらってもいいかな?」

「は、はい!」

「こっちにきてくれ。うちの厨房でその腕をみせてもらおうか」

「はい…」

ゴスは不安を抱きながらマスターについていく。パージはゴスの後ろ姿をみて心配する。

「ゴス大丈夫か?」

「パージさんも食べて美味しかったでしょ。ゴスさんなら大丈夫よ」

アランはゴスを信じているとカルヴァンもついて話す。

「ゴスの作った料理は美味しかったよ。アランが大丈夫って言ってるなら心配いらない」

二人の信用する姿にパージも心配するのが馬鹿馬鹿しく思え出す。

「そうだな。いつも傍にいる俺がこんなんじゃだめだよな」

三人は二人が入っていった厨房の扉をじっと見守ることにした。


 不安を抱えながら厨房に入るゴスはマスターの課題となる料理を発表する。

「今からゴスさんに作ってもらう料理はデザートだ」

「で、デザート!?」

「そうだ。昼食の時間も過ぎ、小腹が空くこの時間にちょうどいいだろう。デザートだったら何でも構わん。子供におやつを作るものでもいい、カフェみたいに本格的なパフェでもいい。ゴスさんの思うデザートを作って俺と外にいる三人の分を作って、『美味しい』と言わせればここで働いてもらいたい」

「わ、わかりました」

「材料はここにある好きなもの使って構わん。俺がおると緊張するだろうから、俺は戻ってゴスさんの料理を待っている。制限時間はないが、あまりお客さんを待たせないことも考えながら作るんだぞ」

「はい…」

マスターはそれだけ言って先ほど厨房に入った扉を開けてアラン達の元へ戻っていった。マスターが出て行くと緊張がとれて膝をついて顔を青ざめる。

「どうしよう…。デザートって言われても作ったことないよ」

悪事ばっかり働いていたゴスに縁のない料理に不安から絶望にかわっていく。

―でもせっかくアランさんが紹介してくれたんだ。

―なんとしても認めてここで働かないと。

デザートに繋がるヒントを今日までの記憶を必死に思い出そうとする。だけどそう簡単には思い出せれなかった。続いてゴスはマスターに言われた材料に目を通す。野菜や果物、魚介類に肉類、飲食店には至極当然の食材ばかり並んでいた。デザートに繋がりそうな食材として果物をじっとみて必死に案を練るが思い描く料理が思いつかなかった。

「妥当にフルーツ盛り合わせでも…。そんなんじゃマスターやアランさん達が美味しいと言ってくれない。作ったことのない料理を作れってどうすれば」

ゴスは何気なく厨房から離れて外にでて周りを見渡す。大人達は道を行き交い、子供達ははしゃぐ平和な光景しか見えなかった。

 こんなことしても何も解決にならないと思って厨房に戻るまえに子供達が遊んでる姿を見ようとしたとき、ある家の窓からお母さんが子供におやつをあげている所をみる。子供は満面な笑顔で口を動かしてお母さんに何かを言うと、お母さんも笑顔になっておやつを食べる無邪気な子供を見続けていた。ゴスは大切なことを思い出すような顔になって厨房に戻る。そしてゴスは手を洗って作り出す。


 アラン達はゴスが作る料理を待ちながらマスターと話しをしていた。

「ははは。王子様を攫うつもりがアランちゃんを攫ってここまできちゃったってことか」

「笑い事じゃないわよマスター。すごい怖かったんだから」

「けど誘拐したことはあったよな」

マスターの一言にアランとカルヴァンは少し怒りながらマスターに迫る。

「マスター!」

「僕達だって大変だったんですよ、あの時は」

「ははは…ゲホッゲホッ。すまんすまんつい調子に乗っちゃった」

話題についていけないパージは誘拐のことを尋ねる。

「誘拐って何かあったんですか?」

「パージさんは黙ってて下さい!」

アランとカルヴァンは声を揃えてパージを一喝する。二人の様子をみてパージは聞くことをやめた。マスターも場を悪くしたと思って開店の準備を始める。

 そこにゴスが扉を開けて課題の料理を作ったことを伝える。

「マスター、できました」

「店開けるまで作れなかったら不採用にするつもりだったがここまでは合格だな」

お客を待たせないという意味も込めて時間内調理を認める。そしてマスターが気にかけていた料理のできを採点することとなる。

 ゴスがみんなの前に課題の料理をだすとマスター以外その料理を褒める。

「美味しそうねゴスさん」

「お前がこんなもの作れるとはな」

「団子か〜。市民はこういうのを食べてるのか」

アラン達は一口食べると絶賛する

「美味しい!」

ゴスが作ったデザートは白玉団子だった。その団子は一切何もかかっていなかったがそれでもアラン達はこれを美味しいと言って食べていた。マスターは試食する前にゴスに真意を問い始める。

「これを作った理由は? どこにでもある普通の団子を作って客は喜ばねぇ。見るからに味付けは一切してない、これを作った理由は一体なんだ?」

解せぬ感じで話すマスターにゴスは作った理由を話す。

「実は俺デザートなんて作ったことないんです。何を作ればいいかわからなくて外にでたとき、母親が子供におやつをあげてる所を見ました」

「…」

「食べてる子供は笑顔で喜んでいて作っていた母親も喜んでる姿を見て大事なことを思い出しました。ここまでアランさんと来る間キャンプ料理で初めて作った喜びもありましたけど、一番嬉しかったのが俺が作った料理を美味しいと言ってくれたことです」

黙って聞いていたマスターは口を開くと、

「…合格だ」

ゴスが作った料理を口にせず雇うことを決心した。

「え?」

当然食べてないのに合格と言われてゴスは驚く。

「料理を作ることで一番大事なのは客を想ってつくる心だ。味も大事だがその気持ちが一番の調味料だ」

料理人の心得を説きながらゴスの作った団子を一口頬張る。

「はむっ…。うん、こういった素朴な味を欲しがる人もいる。特に疲れてる人にはな」

マスターがそこまで言うと、ゴスは嬉しくて涙を流し始める。

「こんな俺でも、認めてくれた」

パージも泣きながらゴスの肩を叩いて励ます。

「よかったなゴス。お前が嬢ちゃん意外の人から認められて」

「兄貴〜」

二人は抱き合って泣いて喜ぶ。その光景を三人は温かく見守っていた。

「アランちゃん、あの二人相当辛い生き方してたんだな」

「ここに連れて行こうとした理由はこれよマスター」

二人が話してるところ、カルヴァンはどこか共感できる部分を感じる。

―誰かに認めてもらえる…、僕が立派に護衛しようとしたときみたいだ。

正式に護衛として認めてもらい、勉強して剣の腕もつけてアランを護衛して初めてミジバルクを出立した一週間前を思い返すカルヴァンだった。

 ひとしきり泣いたパージとゴスは落ち着きを取り戻し、ゴスは今日からマスターが経営するバーの厨房の下働きとして働くこととなったためアラン達と別れることとなる。

「アランさん、ありがとうございます。アランさんに出会わなかったら俺は一生あそこでクズみたいな生活をしていたかもしれません」

「いいのよ、私ができるのはここまで。ここからはゴスさんの力で生活してね」

「はい!」

アランとゴスが話し終わると今度はパージが話し始める。

「立派な料理人になれよゴス」

「兄貴…」

「俺も立派な傭兵になったら食いに行くからな」

「いつまでも待ってます兄貴!」

二人は熱い握手して固い友情結んで別れました。

 三人の後ろ姿を見送ったゴスとマスターはバーに戻り、マスターの元で働く従業員にゴスを紹介する。

「今日から新しく雇ったゴスだ! みんな仲良くしろよ」

「ゴスと言います。料理経験はありませんがよろしくお願いします!」

自己紹介をしたゴスをみんな快く挨拶した。


 アラン達は次にパージを働かせる傭兵斡旋所に足を向けて歩く。アランは斡旋所について簡潔に説明する。

「パージさんが働く傭兵斡旋所だけど、簡単に言うと何でも屋よ。外に出て私とカルヴァンみたいに護衛することも多々あるし、未発見の遺跡や洞窟の調査もしてるわ。なかにはかわった依頼をするのもあるからね」

「かわった依頼? それは?」

「子供の世話とか家事の手伝いみたいなことね」

それを聞いたパージは戸惑う。

「それは困る! 俺は腕っ節に自信はあるが子供の面倒とかは…」

「斡旋所で働くようになったら緊急時以外なら断ることはできるけど、それ以外は断れないよ。傭兵は依頼あっての仕事だから文句言わずにやるのが仕事だから」

パージは一瞬後悔するがそれはあくまでかわった依頼と割り切ると、三人は傭兵斡旋所に到着する。アランは重々しい扉を開けて入ると、いつもの煙草の匂いが充満する受付まで行って受付担当である幼馴染のペルチに話しかける。

「ケホッケホッ、相変わらずこの匂いだけは耐え切れないわペルチ」

「お久しぶりねアラン。一ヶ月ぶりかな?」

「そうかもね」

事務的に淡々と話す彼女にアランは早速パージを紹介する。

「ペルチ。お願いだけどこの人ここで雇ってもらえない?」

「いいよ」

「そんなあっさりと!」

「身体能力をチェックして傭兵として登録したらそれでいいわよ」

ペルチの承諾と説明を受けてパージだが気だるげに接する態度に怒りだす。

「お前! やる気あるのか?」

「ないわ」

「ないならここを辞めろ!? 胸糞悪い」

それを聞いて奥で屯ってる傭兵達が一斉にパージに向かって牙を剥き出す。

「お前よくもこの天使ペルチ様に向かってなんだその口は!」

「て、天使?」

パージの目から天使とかけ離れているペルチを見て驚くとアランがその理由を説明する。

「ペルチは仕方なく受付を担当してるだけであって、本来の仕事は傷ついた傭兵の看護師なのよ」

そこまで説明すると便乗するように傭兵達がパージを脅し始める。

「アランさんの言うとおりだ。また天使ペルチ様に向かってそんな口きいたらここにいられなくしてやるからな」

いきりたつ傭兵達にペルチは振り向くと、さっきまでの態度とは違う対応をする。

「だめよヘッジ。いくら強いからって脅すようなこと言っちゃだ・め・よ」

身体をくっつけてヘッジと呼ばれた人を顔から上半身、下半身へと手を当ててなだめるとさっきまでいきり立っていた傭兵達はペルチの美貌に釘付けになる。

「わかりましたペルチ様。もういいません」

「わかればいいのよ。それに奥にはまだ傷ついて寝てる人達もいるから静かにしてね」

「は〜い」

ヘッジ率いる傭兵達はまた奥へと姿を消していき、ペルチの豹変した対応にパージは度肝を抜かれていた。ペルチは何事もなかったように受付の椅子に座って事務的に話す。

「それでパージさんは傭兵として登録する? しない?」

「し、してやらぁ!」

呆気に取られたパージはペルチの言葉で我を取り戻して登録することとなった。

「それじゃ登録する前に傭兵としての能力をチェックしますのでここから右の突き当たりの扉に入っててください」

ペルチは受付と待合室の間の板を外して案内する。

「私達はここで待ってるねパージさん」

「おう。ここまでしてくれてありがとう嬢ちゃん」

「みんなと仲良くしてね」

 アランと別れてパージは言われた場所に行くと、そこには射的、訓練用の案山子、と鍛錬に欠かせない道具がそこかしこと乱雑に置かれていた。パージの後ろを通って先導をするペルチは次の扉を開けて説明をする。

「ここの扉に入れば傭兵としての能力チェックを開始します。チェックポイントは四つ、依頼人を一定時間守る『守護』、魔物をひたすら倒す『戦闘』、遺跡と仮定した迷路のような部屋から脱出する『探索』、依頼人が探し求める品物をもってくる『知識』。この四つのポイントを採点してある一定値まで採点された人はもう一つ特別ポイントを用意します」「特別ポイント?」「これについては説明できないこととなっています。準備ができましたら部屋に入ってください」

説明終わるとパージはすぐに部屋に入っていく。

「準備ならもうとっくにできてる。さっさと終わらせてやる」


 部屋に入ると扉は閉まり鍵もかけられる、そしてなにより部屋は真っ暗だった。不審に思った矢先、部屋は一気に明るくなって中央に馬車の形をした模型が置かれていた。次に目にしたのはパージの目の前に置かれてあるスイッチと立札だった。立札に目を通すと内容はこう書かれていた。

『このスイッチを押して馬車の前に立つと作動します。迫り来る魔物や追い剥ぎを想定し、一時間馬車を守り続けろ』

「一時間か、軽い運動にはちょうどいいな」

自信か軽く見てるかわからない態度をするパージはすぐにスイッチを押して馬車の前に仁王立ちして待っていた。しかしいくら待っても何も起きない様子に苛立ちながら護衛する馬車を確認すると荷馬車に積んである食材の模型の中に大量の鼠がかじっていた。

「な!? 魔物や追い剥ぎって書いてあったのに鼠って反則だろー!」

パージは慌てて鼠を追っ払うとどこからか矢が飛んできて依頼人の模型に向かって飛んでいく。

「今度は矢か!?」

腰に差してた剣を抜き矢を叩き切る。


 パージの能力チェックを待っていたアランとカルヴァンだったが、煙草の匂いに耐え切れなくなったアランは思わず外にでて待つことにする。カルヴァンもアランに続いて外へでてアランに尋ねる。

「傭兵の能力チェックってどんなの?」

「結構難しいわよ。護衛するのは一番簡単らしいけど、一番厄介なのが立札らしいわよ」

「立札?」

「そう。立札にこれからやることが書いてあるけど、それを素直に信じちゃだめってペルチから聞いたことあるのよ」

「信じちゃだめって…パージって人大丈夫かな?」

「パージさんにはちょっと辛い試練かもね」

二人は能力チェックするパージを心配し始める。

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