主人に逆らう護衛!? その代償は…
街でのひとときを楽しんだアランとカルヴァンは兄貴たちと待ち合わせの街の入口に向かう。すると傷だらけの二人を見て駆け寄るアランとカルヴァン。宿に行こうと街へ戻ろうとすると…
ひとしきり楽しんだアランとカルヴァンは待ち合わセ場所へ向かう。二人は歩きながら街での余韻に浸る。
「どう? 楽しかった?」
「うん 楽しかったよアラン。また行こうね」
「そうだね。私の我が儘でいっぱい払わせちゃって」
「いいよ。誰かに払うのって少し気持ちがよかった」
「じゃあカルヴァンと買い物するときはぜーんぶカルヴァンに払ってもらおうかな」
「毎回はちょっと…」
「冗談よ。ふふ」
市民に対する不安を払拭したカルヴァンはまたアランに感謝する。カルヴァンの表情をみてアランはまた行ってみたいと密かに思っていた。
そして待ち合わせの入口に行くと傷だらけのゴスと兄貴が待っていた。
「ゴスさん! どうしたんですか?」
「お前も大丈夫か?」
アランとカルヴァンは二人の怪我をみて駆け寄る。
「心配ないですよアランさん」
「過去と決別しに行っただけですから安心してください王子」
気丈に振る舞って二人は立ち上がるもふらつくせいか立っているだけで精一杯の状態だった。
「とにかく宿で休もう」
アランは街へ戻ろうとするが二人はそれを止める。
「アランさん宿はやめてくれ」
「俺たちは既に街の連中に煙たがられている…だから宿はいい」
ゴスと兄貴は必死になって止める。
「宿がだめならどこで休むんですか?」
カルヴァンは兄貴の肩に手をかけながら話しかける。
「もう決別したんだ! だから外で休めるからそれでいい」
「なぜそこまで街に入ろうとしないんだ?」
カルヴァンとゴス達の立場は真逆の位置する。カルヴァンは街を離れる理由を聞く。
「俺たちがこの街に入ったら…また過去の過ちを犯すかもしれないんだ。これは俺たちのけじめなんだ!」
「けじめ…」
二人の決意にカルヴァンはまだ理解できなかった。アランも理解はできなかったが、二人の気持ちを汲んであげることにする。
「わかったわ。カルヴァン! 二人をできるだけ安全な場所まで連れて行こう」
「だけどこの傷で宿も取らず外で休むのは危険過ぎる!」
カルヴァンはアランの意見に反発する。カルヴァンも二人を助けたいという気持ちはあった。
「この人たちの気持ちもわかってあげてカルヴァン!?」
「わからないよ! 街に入ればいいじゃないか。どうして街に入っちゃダメなんだよ?」
「けじめっていってるじゃない! この人たちの気持ちもわかってあげて」
「アランだって知ってるだろ。外には魔物がいるし、しかももうすぐ夜になるんだ。この状況で外で休憩するなんて魔物に襲われたどうするんだ!?」
「私がこの人たちを守る。だから―――」
「アランは俺が護衛するんだ! アランがこの人を守る必要はないだろ」
アランが言った『守る』という言葉にカルヴァンは怒りだす。アランも理解してくれないカルヴァンに愛想を尽かす。
「もういいわ。私だけでも二人を守る」
アランは二人を街の外へ連れて行く。
「勝手にしろ」
カルヴァンはまた街へ入っていった。
傷が浅いゴスは一人で歩き、兄貴はアランの肩を借りて歩く。カルヴァンと喧嘩したことに二人はアランを気にかけるように声をかける。
「いいんですかアランさん」
「いいのよ、あんなわからず屋」
「だけど王子の言ってることも最もですぜ。俺たちはこれくらいいつものことだから」
「私がそうしたいの。怪我人は黙ってて!」
ゴスと兄貴はなだめようとするがアランは頭に血が上り二人の言葉を聞こうとしなかった。
ある程度歩いたところで拓けた場所でキャンプをしようとアラン一人で作業する。ゴスもできる限り手伝おうとするが、その度にアランが止める。仕方なくゴスはアランに見つからないように離れて手頃な木の枝を集めにいく。
なんとかテントを設置したアランは二人を中に入れようとすると、そこにゴスの姿がないことに初めて気づく。
「ゴスさんは?」
「あいつは手頃な枝を取りにでかけたぜ」
「どうして!?」
「俺たちだって世話になりっぱなしになるのは嫌だからな」
「私が勝手に世話焼いてるだけなんだから…」
アランは兄貴の肩に手をかけてテントの中に入れようとする。
「アランさんには感謝してるさ。でもそこに俺たちの意志はあったか?」
「それは…」
「ゴスはどうかわからないけど、俺は今でも信じられないんだ。人間のクズみたいな俺たちをどうしてここまで面倒見てくれるのか、裏で何考えてるのかと勘ぐっちゃうんだ」
「私がそうしたいからって理由じゃだめ?」
「だめじゃない。お前さんにとってメリットがあるわけでもない。それなのにどうして?」
スラム街で長く過ごした兄貴にとってそれは死よりも恐ろしかった。ゴスは恩義を感じていたためアランについていくことに迷いはないように見えた兄貴は仕方なくついていく形だった。だからこそアランの真意を聞き出すチャンスだと思って尋ねる。アランは笑顔で喋りだす。
「メリットはあるわ。私とあなたの繋がりよ」
「繋がりなんてすぐ切れるようなものに、どうしてそこまで…」
「すぐ切れるのはお互い信用できなくなったからでしょ? そんなの私は嫌です」
―信用できなくなるのが嫌とはとんだ甘ちゃんだな。
―誰だってそんなの嫌に決まってるのにこの女は堂々と…。
そこまで聞いた兄貴はやっとアランを信用してみようと思いだす。
「お前さんの気持ちはわかった」
「わかってくれてありがとう兄貴」
「兄貴なんて呼ばないでください。俺の名はパージだ」
「わかったわパージさん」
アランは鞄から簡単な治療薬をだして怪我の手当てをする。
その時よろよろになりながらゴスが帰ってきた。
「ゴスさん! 勝手に出歩いちゃ―――」
「待ってくださいアランさん」
叱ろうとするアランをパージが止める。
「お前さんが勝手にやってるようにゴスだって勝手にやってるんだ。やらせてやれ」
「だけど…」
「今まで俺たちは自分のことは自分で肩付けるって決まってるんだ。あいつだってわかってるから」
怪我をしてるゴスを放っておけないと思ったアランをパージが諭す。パージの言葉に渋々納得するアランはゴスに近づいて優しく話しかける。
「ありがとうゴスさん。ここはいいから早くテントの中に入って」
「だけど火を点けないと魔物がきますよ」
「それは私がやるからあまり無理しないで」
アランはゴスをテントに入れると、集めた枝に火を点けるとすぐにゴスの手当てを始める。
「これでよし…。遅くなったけどこれからご飯つくるね」
アランはテントをでてご飯の支度を始める。
二人っきりになったゴスとパージはアランとカルヴァンのことについて話し出す。
「アランさんと王子…これからどうなるんだろう?」
「俺たちのせいでこじれちゃったからな。なんとかしてあげたいけど今の状態じゃ動くこともできないからな…」
「夜中俺がこっそりでて見に行きます」
「ゴス大丈夫か?」
「アランさんのおかげで少しだけ動けれるようになりましたから、その辺りを見て回るぐらいしか」
「それだけでも充分だ、ゴス」
「兄貴はしっかり休んでてください。王子を見つけて仲直り―――」
二人が話しを進めているとアランが顔をいれて二人に声をかける。
「ご飯できたよ。外にでてこれる?」
「い、今から行くよ」
二人は慌てて外へ出て行った。
「おぉ〜!」
二人はアランが作った料理に目を奪われた。
「これお前さんが作ったのか?」
「えぇ」
「すごい! どれも美味しそうだ」
「ゴスさんもミジバルクで働いて作れるようになったら私より美味しく作れるわよ。だから頑張って」
「はい!」
ゴスはアランの料理をみて目を輝かせて胸を膨らます。アランは持ってきた器に料理を注いで二人に手渡す。するとパージはアランの分の器がないことに気がつく。
「お前さんはどうするんだ?」
「器はその二つしかないから、二人が食べ終わったら私も食べるわ。温かいうちにどうぞ」
「いいんですかアランさん?」
「いっぱい食べて早く怪我治してもらいたいからね」
怪我のことを言われ何も反論できなくなった二人はアランの作った料理を美味しく食べだす。
「もぐもぐ…美味ぇ!」
「美味しいですアランさん!」
「ありがとう。おかわりしてもいいから沢山食べてね」
「はい!」
ゴスは遠慮しない態度にパージは肘で突く。その意図に気づいたゴスはハッとする。二人は目を合わせて適当に食べ終わる。
「ごちそうさま」
「もういいの?」
「俺たちはもういいよ。食べると傷が痛むからさ」
「そうです。食べたら眠たくなったしもう寝るわ」
「そう、おやすみなさい」
「おやすみ」
二人はテントに入って横になる。
アランは静かにご飯を食べ始める。
―まったくカルヴァンって強情なんだから。
黙々とご飯を食べ終わるとアランはもう一つの器をみてカルヴァンを思い出す。
―今頃カルヴァン何してるかな?
アランはメチカルまで向かう途中の一夜を思い出す。
―カルヴァンにとって初めての野宿。
―カルヴァンの寝顔。
―そして…カルヴァンの私に対する想い。
―いつから私のこと好きになったのかな?
思い出す度にアランはカルヴァンのことばかり考えていた。
―ちゃんと食べてるかな?
―宿に泊まって誰にも迷惑かけてないかな?
―お金は…足りてるよね。
―また人攫いにあってないかな?
―カルヴァン…逢いたくなっちゃうじゃない、私。
いつしかアランの目に涙が流れ出す。
しばらく横になった二人は目を覚ましゴスが立ち上がる。
「それじゃ兄貴行ってくるよ」
「無理するなよ」
二人は小声で話し、ゴスはテントから出る。
「うわ!」
ゴスはつい声をあげてしまった。ゴスが声をあげたのはそこにアランが座っていたからだった。
「あ、アランさん?」
ゴスはゆっくりとアランの顔を覗き込むと、アランはうたた寝をしていた。
―ね、寝てるのか…、でもどうしよう。このまま探しに行けれないし。
ゴスは迷っているとアランの目からキラッと光るものを見つける。
―涙…、アランさん王子のことを…。
アランは泣きながら眠っていたのだ。カルヴァンがいつでも帰ってこれるように、いつでも食べれるように火を点けて待っていた。
―やっぱり王子のこと心配してるんだ。
ゴスはそれを見て音を立てないようにこっそりと離れて探しにいく。帰る場所を見失わないように常にテントの灯りを意識しながら探し歩く。だけどどこを探しても見つからなかった。
―王子…やっぱり街の中にいるのかな?
―てっきりこの辺りにいると思うんだけどな。
カルヴァンを思いながら探すゴスだが見つけることはなかった。
諦めてテントに戻りパージに報告する。
「いたか?」
「いや、いませんでした」
「王子…こんな時にどこ行っちまったんだよ」
「もう一度探してきます」
また探そうとするゴスをパージは止める。
「何度探したって同じだ。それに少しは休めゴス」
「だけど兄貴…」
「アランも言っただろ? 怪我を治せって。だからもう寝ろ」
「うん、わかった兄貴」
歯切れの悪い感じでゴスとパージは眠りにつく。
翌朝二人は目を覚ますと、アランが朝食の準備をしていた。
「おはようゴスさん、パージさん」
「おはようアランさん」
「おはよう、お前さん夕べは眠れたかい?」
パージはアランを心配して声をかける。
「ちゃんと寝ましたよ。それより二人共怪我は?」
「だいぶ楽になりました」
「こっちも良くなったぜ」
ゴスとパージは元気な姿を見せる。
「そう、よかった。でもまだ完治してないからあまり無理しないでね」
「おう」
二人を心配するアランに対しゴスとパージもアランの異変に気づく。
「ゴス、見たか?」
「見ました。アランさん寝てないみたいですね。すごいくま」
アランの目の下には隠しようがないくらいのくまができていた。二人はアランに気づかれないように小声で話す。
「朝ご飯できたから食べて」
気丈に振る舞うアランに何もなかったように二人は接する。
「夕べの残りで悪いけど…」
「そんなことはいいよ」
「そうですよ。こうやって美味い飯が食えるだけで俺たちはありがたいって思ってるから」
気遣いするアランに二人はなだめながらご飯を食べる。
食べ終わった三人はテントを片付けてミジバルクに向かって歩き出す。ゴスとパージは王子のことを気にかけて喋りそうになる気持ちを抑えてミジバルクの話しをしだす。
「アランさん、ミジバルクってどんなとこですか?」
「どんなとこって言われてもメチカルとそう変わらないわよ。違うとこって言ったら国王が治めていて平和な街ってとこかしら」
「国王が治めてるのは知ってるけど、街はどんな感じ?」
「みんな優しくて明るい人たちですよ」
「そうですよね…」
二人は必死に王子のことを言わないように気を張っていた。
するとアランはふと足を止める。
「アランさんどうしたんですか?」
「気を使わなくてもいいわよ」
「え?」
「二人共私に何か隠し事してるでしょ?」
「そ、そんなしてないですよ」
ゴスとパージは慌てて応えるが続けてアランは話し出す。
「カルヴァンのこと、気にしてるでしょ」
「してないですよ」
「ゴス、もういい。とっくにバレてる」
アランの様子にパージとゴスは観念する。
「カルヴァンのことはもういいわ。だからこのまま行きましょう」
「だけど王子を放っといて行けれないですよ」
「ゴスの言う通りだ。俺たちのことは気にしなくてもいいから、王子を迎えに行きましょう」
カルヴァンを諦めるように話すアランに二人は説得する。
「一晩待っても帰ってこなかったのよ。私とカルヴァンではやっぱり価値観が違ってたのよ」
「お前さん言ったよな? 繋がりが切れるのは嫌って」
「一方的な想いじゃダメなんだってパージさんや夕べのことで思い知らされたわ」
パージの説得にアランは納得してくれようとしなかった。
「でも王子が帰ってこないと王様になんて言われるか…」
「カルヴァンのことはちゃんと伝えるわ。そしたら使いが迎えに行くでしょ」
ゴスの説得でもアランはなびかなかった。
「これでわかったでしょ」
アランはメチカルに振り向くこともなくミジバルクに向かって歩き出す。心配する二人はアランを放って話しをする。
「俺、街まで行って王子を迎えにいくよ」
「わかった。俺は嬢ちゃんと―――」
話しがまとまりかけたとき、
「キャー!」
アランが悲鳴をあげる。二人はすぐに見ると、アランの前に数匹の魔物が取り囲んでいた。
「ちっ! いくぞゴス!」
「へい!」
数十メートル離れたアランを助けに二人は向かうが、一匹の魔物がアランに襲いかかる。
「だめだ、間に合わない!」
「アランさん!」
アランは身体を丸めて縮こまる。
「助けて! カルヴァン!」
思わずカルヴァンを口にした瞬間。
ザシュッ!ザク!
アランに襲いかかった魔物が誰かが斬りつける。
「グォー!」
魔物は叫びながら後ずさる。アランは恐る恐る顔をあげると、そこに待ち焦がれていた人が剣を手に立っていた。
「カルヴァン!」
カルヴァンはアランに振り返ることなく魔物に言い放つ。
「俺の女に傷つけるんじゃねぇ! 魔物風情が」
魔物を威圧するカルヴァンは剣を構える。
「アランさん!」
「嬢ちゃん!」
二人は武器を構えてアランに近づく。それをみたカルヴァンは急に声を荒げる。
「触るな!?」
「カルヴァン?」
アランはカルヴァンの豹変差に驚く。
「どうしたんですか王子?」
「俺たちは嬢ちゃんを―――」
安全な場所まで運ぼうとするゴスとパージにカルヴァンは再び二人に言い放つ。
「アランの護衛は俺だ! 俺はアランを守るための護衛なんだ!」
カルヴァンがそれだけ言うとアランを襲った魔物をカルヴァンが襲いように突進する。アランは泣きながらカルヴァンを見続けた。
―カルヴァン…だったらどうして帰ってこなかったのよ、馬鹿。
想うアランに対しカルヴァンはひたすら魔物の戦意を奪おうと襲い続ける。そして魔物が退散するとカルヴァンは剣をしまってアランに近づく。
「護衛もなしで勝手に出歩かないでよアラン」
魔物の返り血を浴びたカルヴァンはアランに手を伸ばす。
「か、勝手に私の元から離れる護衛のほうが悪い―――」
アランはカルヴァンの手を掴みながら喋ろうとすると、カルヴァンの手がアランの方へ向かっていき…。バタッ
カルヴァンはその場に倒れだす。
「カルヴァン…どうしたの? ねぇカルヴァン! カルヴァン!?」
アランはカルヴァンを揺すると、揺すった手に赤い液体がついた事に気づく。
「これって…血?」
アランは顔を真っ青になって。
「カルヴァーン!?」
アランはカルヴァンを抱くように泣き叫ぶ。




