お約束のデートだよ!?
翌日、四人はまた別々で行動する。
ゴスと兄貴はこの街と決別するためにスラム街を歩く。
アランとカルヴァンはドーヴォン親子と別れの挨拶を済ませて街を歩こうとするが…。
翌日ドーヴォン親子の様子を見に伺ったアランとカルヴァン。身体の中に潜んでいた寄生虫は完全に死滅され、見る見るうちに回復の方向に向かっていく。お父さんことガッタはベッドから起き上がりお礼をする。
「この度は私達親子を救ってくれてありがとうございます。お礼といってはなんですが、これくらいしか用意できなくて…」
ガッタは小さな袋に詰まったお金をアランに手渡す。確認するように中を覗くと、およそ十万Gはいっていて驚く。
「こんなには頂けません。しばらく療養してて貯えがない状態でこんなにもらっても」
「私達二人を救ってくれたんです。それに貯えはまだ少し余裕があります。だから受け取ってくださいアランさん」
「アランさんもらってあげて。私達のことはもう大丈夫だから」
ドーヴォン親子はアランに気を遣わせないように振舞ってお礼のお金を受け取るようにする。それをみたアランも折れて受け取ることにした。
「わかりました。本来は依頼として受け取るつもりですが、ドーヴォンちゃんのたってのお願いでしたので受け取るつもりはなかったのです。だから」
アランは袋に手をいれていくつかお金を掴んでガッタに返す。
「そんな!」
「これは私の気持ちです。まだ病み上がりですのであまり無理なさらずにしてください」
半分返すアランにガッタは驚く。
アランは一言いって立ち去る。
「それでは私はこれで失礼します。また何かありましたらお手紙を送っていただければまたきますね」
「ありがとうございました」
話し終えたアランは家をでると、外で退屈そうに待機していたカルヴァンと合流する。
「おまたせ。今回はちゃんと待ってたみたいだね」
「夕べアランを探すときに街を見て回ったから。それにここにはもういられないかも」
「どうして?」
「あの兄貴とかいう人に言われたんだ。商店街で僕とアランの話しを聞いて、僕が王子だってことを」
「そんなの気にしなくても―――」
「僕は王子という身分を忘れて民の暮らしを見てみたかった! もうあんな目で見られたくない!」
「カルヴァン、あなた…」
二人はミジバルクの街のことを思い出す。既に街の人たちは誘拐事件があったため、王子のこと街中に知れ渡り市民はカルヴァンを王子の目として見るようになったためカルヴァンは不快な思いをして街をでていった。それをこのメチカルでも同じ目に遭うのではないかと不安になるカルヴァンをみてアランはもう一度説得する。
「この一件が終わったら私と一緒に街を見るって言ったわよね? 街をでようにもあの人集りを避けては通れない。もしカルヴァンがまた嫌な思いをしたのなら諦めてここを出よう。何も無かったら私と一緒に街を見てまわろう。ね」
「…うん、わかった」
優しく話しかけるアランにカルヴァンは不安を取り除かれたような錯覚する。
ゴスと兄貴はこの街と決別しようとスラム街を歩く。そこに屯ってる人たちはみすぼらしい格好をして一日二日程何も食べずに暮らす人もちらほら目に映る。このスラム街でゴスと兄貴はコンビを組んでお互い生きるために強盗や喝上げといった些細なことをして過ごし、大人と変わらない程まで成長すると悪行はエスカレートして人攫いをして生きながらえていた。そんな過去と決別するために二人は思い出しながら歩く。
「色々あったなゴス」
「あったですね兄貴。ここで兄貴と出会って、売春した女達から金を巻き上げたり」
「閉店した店に盗みに行ったりしてたな」
「あの時は生きるのに精一杯で他人のことなんてどうでもいいって思ってた」
「ここでは絶対に人を信じるなというのが鉄則だったしな」
「それをあの人が変えてくれた」
「あぁ。こんな俺たちのことを見てくれるなんてな」
次第に二人はアランに感謝の言葉を口にする。
休憩で仮眠から起き上がった四人はこれからのことを話し合い、ゴスと兄貴はアランの住む街、ミジバルクでお世話になることとなる。お互いこの街の用事を済ませたら入口で待ち合わせると決めて二組は別々に行動していった。ゴスと兄貴はこれから世話になるミジバルクの働き先を話し出す。
「ゴス、お前はどこで働くんだ?」
「俺はどこかの飲食店で働けるようにしてくれるみたい」
「そうか。ゴスはいつも腐りかけの飯ばっか食ってたからな」
「うん。美味しい料理を食べれるならどこだっていいよ」
「賄い飯も食えるしな」
「うん!」
「俺の働き先は何か言ってなかったか?」
「喧嘩で負けたことないってアランに話したら、傭兵所に掛け合うって言ってましたよ」
「傭兵所? 誰かを守るような仕事とか苦手だな」
「でも俺のこととなると必死で守ってくれたじゃないですか。兄貴にぴったりですよ」
「あれはゴスだから守ったんだ。ゴスに死なれたら俺はもっと非道なことをしてたかもしれんしな」
「それを俺だと思えばいいじゃない?」
「頭で理解してもそれは―――」
話しに夢中になっていると二人を五、六人程に取り囲まれていた。
「ちっ。俺としたことが油断したな」
「兄貴、やるしかないですね」
二人は打ち合わせを済ませると、取り囲んでいた人が一斉に襲いかかる。二人はそれを迎え撃つように動いた。
カルヴァンとアランは街の入口を通る難関の商店街の通りを歩こうとする。そこが一番人が集まって、そこを通らなければ街を出ることはできなかった。商店街に近づくにつれ、カルヴァンは不安な表情になり、手や足もガクガクと震えだす。
―嫌だ、僕はただ民の暮らしに触れたいだけなのにどうして王子だとわかるとみんな白い目で見るんだ。
―王子なんてなりたくなかった。
―僕はみんなと一緒にいたい、普通に暮らす人たちと触れ合いたいのに…。
カルヴァンの頭の中は王族を呪う言葉とみんなと普通に接したいという気持ちがあった。アランはそっと手を繋いでカルヴァンに優しく話しかける。
「大丈夫。何もなかったように堂々とすればみんな気づかないわよ」
「ありがとうアラン。でも僕は怖い」
「私も怖いと思うことはあるわ。その時はカルヴァン、今度は私を支えてね」
「うん」
「あなたは私の護衛なんだから」
勇気をもらったカルヴァンはアランと共に商店街へ入る。一歩、また一歩と人集りに入る。
「…」
恐怖に怯えるカルヴァンにアランは自然に声をかける。
「ねぇ見てカルヴァン! この服かわいい!」
店先にある服をみて話すアランにカルヴァンはまだ不安になりながらも話しをする。
「そ、そうか? その隣の服のほうがいいじゃないか?」
「カルヴァンってセンスないわね〜。じゃあ試着してみるからどっちがいいか決めて!」
「え!?」
半ば強引のアランにカルヴァンはそのまま流れに任せるようにアランに連れて行かれる。
お客がきて店員も普通に応対する。
「いらっしゃいませ」
「試着室はどこにあります?」
「あちらにございます」
「ありがとう!」
アランは自分の選んだ服とカルヴァンが選んだ服を持って試着室に入る。
「…」
「お客様。もしかして…」
声をかけられたカルヴァンは動揺した。
―やばい! 僕が王子だと知ってるのか!?
胸が張り裂けそうになるくらい心臓の鼓動は大きくなる。そして店員は続けて喋りかける…。
「お客様。もしかして彼氏ですか?」
「…え?」
「彼女のためにいい服選んであげてね。私でよかったら彼女に似合いそうな服を選んで差し上げましょうか?」
店員は何もなかったようにカルヴァンに話す。
―これって…もしかして僕のことを知らないのか?
―だとしたら他の店も…。
店員の言葉に不安がじょじょになくなるカルヴァンに店員と話しをする。
「選ぶたってどうやって選んでいいのかわからなくて」
「男の人ってそう言われる方は結構いますからね。アドバイスとしては彼女のことを想って選んであげること。そうすれば彼女に似合いそうな服を見つけることができますよ」
「なるほど」
店員と話しをしてる間に試着室からアランが姿を見せる。
「みてみてカルヴァン! どう?」
「似合ってるねアラン」
「でしょ〜。私が選んだ服だもん。次カルヴァンが選んだ服着てみるね」
そう言ってアランはまた試着室に姿を隠す。
―今のうちにアランに似合いそうな服を。
カルヴァンはアランを思い浮かべながら似合いそうな服を選ぶ。
「これかな? いやこっちも似合いそう。あーでもこっちも」
「なかなか決めれないみたいですね」
「はい…想いながら探してるんだけどなかなか」
「でしたらこちらの物とセットで検討してみては?」
店員は帽子やネックレス、ちょっとしたアクセサリーを見せながらアドバイスする。
「なるほど。これとこれを身につけたアランを想像すればいいのか」
「服だけで選んでも決めれない時はこういったアクセサリーとセットで想像すれば選びやすくなりますよ」
「わかった、ありがとう」
カルヴァンはもう一度選びなおす。
―服はこれで良さそうだな。これに…。
選び終わったカルヴァンと同時にアランが試着室から出てくる。
「カルヴァンの選んだ服着てみたけど、どうも私にはちょっとシックすぎるかな」
「じゃあこれとこれならどう?」
「え!? 私に似合うかな?」
「いいからいいから」
自信に満ちたカルヴァンにアランは安心する。
―楽しんでるみたいだねカルヴァン。
―もう心配ないみたい。
試着室に入ってカルヴァンが選んだ服をじっとみる。
「私に似合うかな…これ」
今まで着たことがない服に若干抵抗感じながら着替える。
そしてアランは外にいるカルヴァンに声をかける。
「カルヴァンいる?」
「いるよアラン」
「着てみたけど…笑わないでよ」
「僕が選んだんだから笑わないよ」
「…じゃあ見せるね」
不安になりながらもアランは試着室から姿を見せる。
「…どう?」
「…」
感想の言葉を待つアランにカルヴァンは言葉を失った。
「やっぱり似合わないよね」
「すごくお似合いですわよ」
「え?」
カルヴァンの代わりに店員が感想を言った。
「似合ってます?」
「はい。今までカップルで選んできた中でも、彼氏さんが選んだ服はお客様によくお似合いですよ」
「そうなのカルヴァン?」
店員の言葉には商品を売る言葉だと思って多少信じられないアランはカルヴァンに尋ねる。固まったカルヴァンもようやく口を開ける。
「こんなに似合うなんて今でも信じられなくて…。ごめんアラン、感激して言葉がでなかったんだ」
カルヴァンが選んだ服装は、誰もが見入ってしまうぐらいの姿だった。うっとりする店員は我にかえって商売を始めだす。
「お客様お買い上げなさいます?」
「はい!」
アランは即答で返事する。着替え終わって服と帽子を持って会計する。
「合計で五千Gになります」
「カルヴァン払ってね」
「僕!?」
「私は買うつもりなかったんだけどな。それにこの服を選んでおいて買わないってことはないわよね?」
またもアランに捲し立てられたカルヴァンは買うことになった。
店をでた二人は再び人集りを歩く。
「どうだった?」
「大丈夫みたいだ」
「そうでしょ。こういうのはみんなと同じようにしていれば案外わからないものよ」
「そうだね。じゃあ次どこ行く?」
「そろそろお腹空いたし、どこか食べに行こ!」
「アランは何が食べたい?」
「カルヴァンが決めて。カルヴァンが選ぶところならなんでも」
「そうだな…。あそこ行ってみたかったんだ、行ってもいい?」
「もちろん!」
「じゃあ早く行こう!」
心配して声をかけたアランにカルヴァンは不安を感じさせない声で話す。そしてカルヴァンが選んだ店に二人は手をつないで入っていった。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
カルヴァンとアランは奥のテーブル席に座る。
「ここって…定食屋さんじゃない」
「定食屋?」
「まぁ注文すればわかるわ」
アランはメニューを開くとすぐに決めて、カルヴァンにメニューを見せる。
「えっと…鶏肉のカレーセット、ヘルシー野菜盛り合わせセット、店長のきまぐれセット…いろいろあって迷っちゃうな〜。アランは何にしたの?」
「同じの選んじゃだめよ」
「いいじゃないか〜。じゃあ僕はこの『新鮮海鮮丼』にしようかな」
「わかったわ。すいませーん」
注文が決まるとアランは大声をあげて店員を呼ぶ。
「新鮮海鮮丼とネバネバ尽くしをお願いします」
「かしこまりました」
注文をいって店員は奥へと消えていった。カルヴァンはアランの注文した内容を聞く。
「ネバネバ尽くしってなに?」
「ふふっ。見たらびっくりするわよ」
「今教えてくれたっていいじゃないか」
「カルヴァンの驚く顔がみてみたいのよ」
「ちぇっ」
いたずらするような顔をするアランに注文した内容を聞いても教えてくれなかったカルヴァンはいじけ出す。そしてしばらくして注文した料理が運ばれてくる。
「おまたせしました。新鮮海鮮丼とネバネバ尽くしです」
二人の前に注文した料理が置かれて店員は次のお客の相手にいく。アランが頼んだネバネバ尽くしをみてカルヴァンは驚く素振りを見せなかった。
「普通の料理にしか見えないけど?」
「ふふっ。これをかけて〜」
テーブルに置いてある調味料をかけてアランは食べ始める。
「いただきまーす」
「え!? アラン糸が引いてるぞ!」
「驚いたでしょ〜。これがネバネバの正体だよ」
アランが口に運ぼうとする度に糸を引きながら食べる姿にカルヴァンは驚く。
「糸食べて平気なのか?」
「カルヴァンも食べればわかるよ」
「平気なのか?」
「こういう食材なんだから大丈夫なの。ほら口開けて」
「あーん」
アランが食べてる料理をカルヴァンの口に入れる。
「もぐもぐ…」
「どう? 美味しい?」
「美味しいけど、口の中がネバネバする〜」
「それがいいのよ。健康にもいいし」
「市民はこんなものを食べてるのか?」
「みんながみんなそうじゃないけど、好きで食べる人もいるわよ」
「アランはこういうのが好きなのか?」
口直しに水を飲みながらカルヴァンは話しをする。
「私はたまに食べるくらいだよ。今日はカルヴァンを驚かせようと頼んだの」
「そうなんだ。普段は何食べてるの?」
「普段はパンやパスタや野菜とか…まぁそこそこバランスよく食べてるわよ」
アランは食べながら話を続ける。カルヴァンも自分が頼んだ海鮮丼を食べて話しをする。
「パスタか〜、今度そこに行ってみよう」
「うん…」
「どうしたの?」
「私にはやってくれないんだ」
「なにを?」
「あ〜ん」
アランは身を乗り出すようにカルヴァンの前に顔をだして口をあける。
「…」
察したカルヴァンも自分が頼んだ料理をアランの口へ運ぶ。
「もぐもぐ…美味しい!」
「…なんだか恥ずかしかったぞ」
「誰も見てないんだから」
「結構人いると思うけど?」
「みんなお腹空かして食べるのに夢中だから見てないのよ」
カルヴァンは辺りを見渡すとアランの言うとおりだった。みんなご飯を食べるのに夢中だった。家族連れの人は子供の面倒みながら食べたり、一人で来た人はがっつくように食べていた。
「ね」
「うん」
確認したカルヴァンにアランは勝ち誇るように言う。二人は食べ終わって店をでようと会計をする。
「二人で千五百Gになります」
カルヴァンは黙ってアランを見ると、アランは上目遣いでカルヴァンをみていた。察したカルヴァンはまた渋々と払った。
「次どこ行きたいカルヴァン?」
「そうだな…みんなが買い物するようなところいってみたいな」
「じゃあこっちね」
アランはカルヴァンの手をつないで商店街を歩き始めたのでした。




