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第2話 色々話し合おう


「で?魔王のところに行くにはどうすればいいんだ?」


 俺はルノに唐突な質問を聞いた。

 ルノと出会って1時間ほどが経過していた。何やかんや話した後は、とりあえず3人でその場に座った。今現在、広い草原にいる。いろいろ話を聞かないことには、最初の一歩が出ない。


「お父様の根城へ行くのは簡単です」

「あ、まあそうか。お前も魔王の娘だもんな」

「はい。しかし問題は、そこではありません。今の戦力では到底お父様には太刀打ちできないということです」


 そうだな。魔王の座を奪い取るってことは、最悪戦争も覚悟したうえで、今の魔王を討たなきゃいけないわけだ。そのために召喚されたのがこの俺。勇者っぽくてかっこいいが、魔王の娘に協力しているとなるとものすごく複雑な気がしないでもない。

 ロドロフが口を開いた。


「でしたらやるべきなのは、裕大殿にある程度戦闘に慣れてもらうこと…あとは、仲間を増やすことではないでしょうかな?」

「そうだな…如何せん俺はどの程度戦えるのかってのが怪しいからな」


 そもそも俺は手ぶらだ。服装は何やら異世界仕様になっているっぽいが、もっと動きやすくておしゃれな服が着たい。今のところ、俺は死なないイケメン…だからな。


「それなら、まずは武器屋に行きませんか?そこで裕大様にあった武器を買いましょう!」

「いいけど、金はあるのか?」

「あ…」


 素人かこいつら…。まあ最近まで魔王の傍で何不自由ない生活を送っていたんだ。こういうのに疎いのはある程度はしょうがないのかもしれない。


「それにロドロフ。お前はだいぶ目立つだろ?」

「そうですなぁ…街中にスケルトンがいたのでは、討伐されても文句は言えませんな」

「ルノ…お前もだ。そんな角と尻尾露出させて、街中出歩けると思うなよ?」


 ルノは恥ずかしそうに尻尾を抱きしめる。こいつは可愛いから一回は抱いておこう。

 一般人目線で俺がこいつらを見たら、まあまず逃げて通報だろうな。俺にそれなりの戦闘力があれば、たぶん討伐するだろうし、ルノに関しては奴隷にするだろう。


「ってか、ルノは戦えないわけ?」

「私ですか?」

「だってお前魔王の娘だろ?お前が戦えるんだったら、俺がここにいる意味もない気がする」


 そもそも俺は何のためにここに呼ばれたのか、その理由がまだはっきりとしていない。すると、ロドロフがここぞとばかりに口を開いた。


「実はですな。ルノ様は戦闘向きではないのです。主に回復、操作、召喚系の魔法を得意とするわけでございまして…それでも山一個を消し飛ばすには申し分ないのですが」

「山一個って…十分だろ」

「それだけでは魔王様には敵いません。ですからあなたの力が欲しいのです」

「俺一人加わったくらいで―――――――――――」


 その直後、ロドロフが語り出した内容に、俺は唖然とした。

 何年か前、ルノと同じように人間を別世界から召喚した魔族がいたらしい。その魔族はその人間に好き放題力を与えすぎ、結果人間は理性を失った。その人間は、召喚した魔族を殺し、更には魔王にまで手をあげた。

 魔族軍は人間一人に大苦戦。はっきりとした理由は分かっていないらしいが、どうも異界の生物の攻撃は、魔族には効果抜群らしい。

 つまり今回の場合も、異世界から来た俺という生物なら、魔王に対し効果抜群の攻撃を繰り出せるから…という理由らしい。


「じゃあ俺もうキーパーソンじゃん」

「そういうことになりますな」

「ってか、それだけの理由なら別に俺じゃなくても」

「いえ、裕大様からはオーラを感じたので…」

「だからそれは俺のこれからの4年間に対するムンムンオーラだろ!?」

「いえ…」


 ルノは突然感慨深い表情を浮かべた。俺は思わず唾をのむ。


「私の呪いが発動するのは222日後…そして、裕大様に与えられた時間も222日。偶然だとは思えないんです。まるで、運命の糸を手繰り寄せたような…そんな…」

「あー分かった分かった。要するに俺は選ばれたって言いたいんだろ?やるだけのことはやるから」

「…ありがとうございます」


 運命ね…もしそうなら悪い気分ではないが、少々荷が重すぎる気がするな。まあ、俺がどうこう言える問題でもないか。運命となると。






 その後俺たちは草原を歩き、街を見つけた。小さな街だが、だいぶ賑わっている。街の外には異界の人間と、魔王の娘がいるなんて知らずにな…あと骨。

 それと、道中で金を手に入れた。ルノが道中で出会ったスライム数匹を瞬殺してくれたのだ。同族だろうがお構い無しらしい。こいつ、仲間同然の奴らを父親に殺されて怒ってたことを忘れてるのかもしれない。

 どうやらこっちの世界では、魔物を倒すと金が手に入るらしい。合計で200枚…だいぶ貯まった感じだ。ちなみに単位はオル。


「200オルってどのくらいなんだ?……ってお前らに聞いてもわかんねえか」

「200オルだと、剣と防具はある程度揃えられると思いますぞ」

「なんだロドロフ。お前詳しいな」

「これでも叡智のおかげでルノ様のお付きになった身。このくらいなんてことはありません」


 確かに、ここに来るまでも、ささっと計算したり、流ちょうに物事を説明したりと、なんだかんだいろいろとやってきた。この骨、結構使える?


「じゃあ…とりあえず俺一人で街に入って、武器と防具…あとはお前ら用にローブかなんか買ってきてやるよ」

「すいません裕大様。お願いします」


 俺は街の中に入った。



 街の中はやはり賑わっていて、人々が行きかっている。たまに俺に向かう視線を感じるが、まあこれだけのイケメンがいれば当然のことか。

 

 歩いているとすぐに武器屋が見つかった。体のでかい大男が迎えてくれた。


「兄ちゃん初めての人かな?」

「あ、まあ」

「何にするんだい?」

「とりあえず…簡単な剣と防具が欲しい」

「いくら持ってるんだい?」


 何やら話をしているうちに、結局鉄の剣と鎖帷子(くさりかたびら)、あとはちょっとした服と、ローブを買うことにした。

 武器や防具にはいろいろと付与効果も付けられるらしく、よくわかんなかったのでとりあえず錆防止のコーティングをしてもらった。

 これらすべて合わせて120オル。まあ、こんなところか。大体の相場はこれで分かった。


「兄ちゃん、そんなローブ何に使うんだい?」

「あ、いやちょっとね」

「それにしても…兄ちゃん、あれだな。ハデスに似てんな」


 ハデス?


「なんだそれ」

「知らねえのかい?魔族一のイケメン、ハデスだよ。そのイケメンもさることながら、実力も魔族の中じゃトップクラス。ファンも多いらしいぞ」


 ああ、そういえばロドロフがそんなこと言ってた…。確か俺の顔は、ルノ好みのハデス風になっているとかなんとか…。


「魔族と人間の仲はこれでもかってくらい悪いが、人間の女性の中にはハデスファンも多いらしいぜ」

「あ、そう」


 って、やっぱり人間と魔族って不仲なんだな。これは尚更慎重に行動する必要がありそうだな…。


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