表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

直樹、吼える

直樹は華子の姿で、気だるげに前髪をかきあげると、腕を組ながら壁に寄りかかった。

本来の直樹の姿であれば、女子たちが黄色い声をあげて卒倒するセクシーな仕草になるだろうが、華子の姿であれば、地味な女の子の無作法な仕草にしかみえない。


「僕たちの入れ替わりを分かって頂けたところで、今後の方針について話し合いましょうか?」


直樹が再び、前髪をうっとおしそうに、かきあげながら言った。


「このことはくれぐれも他言無用でお願いしますわ。今回のことで、華子様の入内に差し支えるようなことがあったら、この菊が生涯、許しませんえ?」


菊は陰気臭い、怨念が籠った声で脅してきたが、今のままでは、華子が帝の妃に選ばれることは、100%ないと言って良いだろう。

帝は清々しい程のメンクイだ。

普通に解りやすい美女が好きな男なのだ。帝が王子だった頃の女性遍歴を見れば分かる。


「菊さん。せ、生徒会長さんに、し、失礼よ。生徒会長さんは、わ、私を助けてくれたのです。そ、それに、こ、皇宮庁から打診があったとは言え、じゅ、入内など、私どもから申し上げるのは、お、畏れ多いこと. . .わ、私なんて、絶対に無理」


菊は、直樹の姿でモジモジとしている華子の手を優しくとって、華子姿の直樹を睨み付けた。


「華子様のなんと慎ましやかなこと. . .直樹と言ったな!お主、なんとかならんのか!」


直樹は菊と華子を見やると言った。


「もちろん。何とかしますよ。ただ、僕は努力をしないのに、『絶対に無理』と言うことを好みません。それから、他力本願の人間も軽蔑します。体が入れ替わって不便なのはお互い様だ。お互いの努力でこの状況を乗り越えましょう。良いですか?」


華子は小さな声で、「はい」と言うと、こくりと頷いた。


「入内の件、僕に策があります。今のままでは、御高嶺さんは帝に認知すらされていないだろうから。御高嶺さんにも、努力してもらうよ。僕は医学部を受験するんだ。この国の最難関の大学のね。受験の日までに体が元に戻らなければ、御高嶺さんに受験してもらうことになる」

「わ、私っ、普通科の文系コースなんですぅ。最難関の、い、医学部なんて、むっ、無理ですぅ」


直樹は華子を睨み付けた。


「僕は努力もしないで無理と言う人間が大嫌いなんだ。二度も同じことを言わせるな。それから、最難関の医学部合格よりも、帝の妃に選ばれる方がよほど難関だ。これからお互いに切磋琢磨していこう。ちなみに僕は忙しい。四時間しか寝ないし、かなりのハードスケジュールだ。ついてこれるか?」


直樹の姿をした華子はぐったりと項垂れた。しばらくすると、顔を上げた。


「ど、努力致します。ご、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い. . .致します」


直樹は「こちらこそ」と、素っ気なく言いつつも、素直さが華子の良いところだなと思った。


「当面は入れ替わった体でお互いに努力するとして. . .元に戻る方法も考えなくてはね. . .御高嶺さん、あの場所で、鏡池で何をしていたの?」


雷雨の夜に鏡池にいたなんて、不可思議だった。たぶんそれが体の入れ替わりに関係するに違いない。

不気味だから聞きたくはないが、聞かなくてはならないことだった。

案の定、華子と菊は直樹の質問に動揺しているようだった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ