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帝のお妃候補?

着物姿の老女は、直樹の祖父の権蔵に詰め寄った。


「お主はどういうつもりや?御高嶺家は、金輪際お主と関わらぬはずやったのを忘れたんか?富貴子様だけでなく、華子様にまで。華子様の入内(じゅだい)にまで、厄介をかける気か?」


菊はぜぇぜぇと息をつきながら、一気に捲し立てると、守るように華子の両手を握り、自分に引き寄せた。

権蔵は大病院の院長らしく、余裕たっぷりに笑った。


「富貴子さんは、帝よりも、御高嶺家の書生だったワシと結婚したかったんじゃ。それを、身分違いだと、周りがよってたかて、引き離しにかかって. . .だが、孫の代でワシと富貴子さんの恋が実るんじゃな♪見なはれ、直樹と華子さんのお似合いなこと」


権蔵が高らかに笑った。

直樹は権蔵の言葉にうんざりした。

それにしても、華子が入内とは?先帝が突然に崩御され、独身である今上帝は急遽、お妃選びをすることになった。

帝の婚活などに、全く、興味のない直樹さえ、帝の結婚話が、連日、メディアを賑わせているのを知っていた。

数人の有力とされるお妃候補の女性たちも、すっかりテレビやネットでお馴染みだ。

だけど、メディアからは華子は全くのノーマークだ。

華子の姿をした直樹は、熱く握られた菊の手を、迷惑そうに離した。

菊が怪訝な顔で華子の顔を見た。


「菊さん、落ち着いて聞いてくださいね。僕は瀬田直樹と言います。権蔵の孫です。僕も御高嶺さんも、検査の結果、体は異常なしです。だけど、雷に打たれた後、体が入れ替わってしまいました。御高嶺さんの体には僕の魂が、僕の体のなかには、御高嶺さんの魂が宿っています。なんでこんなことになったのか、今は分かりません。だけど、必ず原因を突き止め、元に戻ります。御高嶺さんに、ちょっかいなどは絶対に出しません。御高嶺さんの入内の話は初耳ですが、心から祝福します。僕はおじいちゃんとは違うので、ご安心下さい」


直樹が冷静に説明すると、直樹の姿をした華子がすすり泣いた。


「きっ、菊さん、ほっ、本当なのです。信じて...生徒会長さんの. . .おっしゃる通りなの」


菊は、直樹の姿をした華子の方へいくと、直樹の体をじっと眺め、直樹の顔に手をやった。

しばらく、目を閉じて難しい顔をして考えこんでいた。

やがて、菊は小さいが、鋭い目をカッと見開くと言った。


「間違いない。華子様や。権蔵の孫がこんな高貴な気を発せられるはずがない」


いちいち失礼な婆さんだが、分かってくれて良かった。後はおじいちゃんか。


「おじいちゃん、僕が御高嶺さんだという証明をするよ」


うん?と言う風に、権蔵は華子の姿を見た。


「その金庫の暗証番号は、一番付き合いが長い、銀座のクラブ雅のママの名前と、スリーサイズを掛け合わせたものだよね」


直樹の言葉に、華子は顔を赤らめ、菊は心底、穢らわしいと言う顔をした。

権蔵は、華子の口から発せられた直樹の言葉に、意表を突かれたようだ。


「うぅ~む。信じるしかないないようじゃな。お前は直樹なんじゃな?じゃが、直樹にも暗証番号は教えてないぞ」

「僕は日頃の鍛練のおかげで、動体視力がずば抜けていてね。おじいちゃんが金庫を開けるのを見たことあるんだ」


直樹は、鍛練など無縁な、筋肉などひとつもついていない、ポッチャリした華子の姿で言ってのけた。




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