異世界転生に於る神様の存在について
【主題】
ファンタジージャンルに於るネット小説作品の中で、かなりの割合を占めるものに異世界転生ものがあります。主人公が現代世界で何かの形で死を迎え、前世の記憶を保持したまま異世界に転生するというのが基本設定ですが、これには大きく別けて
・神様等の手違いで誤って死亡したと言って、
神様からお詫びにチート能力を貰い転生。
・理由は解らないが異世界に転生した後、
前世の記憶を保持したまま成長して行く。
(或いは、前世記憶をある時点で思い出す)
の二種に大別されるかと思います。
現実の地球世界でも真贋はともかく前世記憶があると言う人々は居られますので、後者はまあ理解出来なくはありません。しかし前者のパターンは神様の存在を余りに低レベルに描いており、加えて一つのテンプレ的な描き方を超える事は殆ど無く、書き手として余りに稚拙過ぎて如何なものでしょうか。
【考察】
先ず「間違って死亡した」とは何なのでしょうか。"神様"とは本来全知全能の存在である筈であり、それ故にそもそも間違い等が生じる事は有り得ないのではないでしょうか。まあ100歩譲って所謂唯一神や全能存在である"神様"ではなく、限定世界だけを管理する世界神や下級神等の存在であるというならば未だ分からなくはないのですが、殆どの作品では単に"神様"としているだけで特にこれらについての説明はありません。作者は「神様(全能)←→間違い」の点について、一体どう考えているのか尋ねてみたいものです。
前述の点を一先ず置くとしても、次の「お詫びにチート能力を授ける」の部分は一体どういう事なのでしょう。人間という1種別の生物の中の只の1個人に過ぎない主人公に対して、超越存在である"神様"が謝罪して贈り物をする? 余りに馬鹿げた設定で呆れ果ててしまいます。
道を歩いていて意識無く踏み潰してしまった蟻を、貴方は一々摘み上げて悪かったと謝罪するでしょうか。パンに黴が生えてしまい已む無くパンを捨てる時に、一々その黴達に対してお詫びするでしょうか。有り得ないですよね? 「謝罪」という行為は、それなりに対等的存在の間で行われるものです。"神様"を人格神として描くのはともかくとして、"神様"と言いつつ単なる一人間である主人公と対等のレベルに置き「謝罪させる」、というのは何を考えているのか全く意味不明です。
厨ニ的思考では、神すらも自分と同等な存在として捉えると言うのだから凄いものです!
(まぁ身近な存在にまで「神降臨!」とか叫ぶ人達ですからね…)
【処方】
最近の一部の作品では単に間違って死亡するという設定などではなく、例えば世界間の霊的エネルギーの遣り取りの為だとか、魂存在の世界間の過不足を解消する為だとか、きちんと(?)それなりの理由付けをされている物も増えている様です。
「間違って死亡→神様謝罪/チート付与→転生」は一つのテンプレではありますが、"神様←→間違い"、"神様→謝罪"といった点について作者なりの肉付けをしないと、自分の考え無しや厨ニ的思考を曝け出すだけなので注意しましょう!