冒険者ギルドに関する設定矛盾について
【主題】
異世界ファンタジー世界には「冒険者ギルド」または擬似同等のものが大抵存在している。大層に繁盛するものの様で、殆どの世界にかなり大きな組織として見受けられる。
このギルドだが、色々と摩訶不思議な点が多々目に付く。ざっと指折るだけでも、
1)受付担当者が年若い女性が大半である
2)受付に来た冒険者が依頼すると、
同僚や上司に断りなく簡単にギルマス室
へと席を外す
3)ギルド規定集の小冊子を配る事がある
4)新規登録票や依頼票など紙を安易に多用する
5)ギルド医務室を利用しても費用請求されない
6)人頭税や入市(町)税が無いにも関わらず
ギルド年会費や仕事を受けない期間の
罰則規定が無い etc.
など沢山の疑問点が浮かぶ。大半の作者はランクがG(又はF)〜Sだとか、ランク毎の受託制限だとか、ランクアップする条件等の表面上の各種設定については立て板に水の如く滑らかに説明をする。しかしながら前述の様な少しでも踏み込んだ点に関しては、悲しいかな一部を除き何故か無視するのが普通であります。
1つや2つなら兎に角、大半の点を無視してしまっている作者は、作品中の他の箇所でも設定破綻をそのままにしている可能性が高いのでは!?
【考察】
先ず最初の(1)。まあ異世界ファンタジーのギルド受付と言えば、女性が殆どというのは構わないのですが(笑)、その年齢が年若い主人公と同じか1〜2歳差というのは呆れます。又そういうパターンに限って業務を窓口分担する事無く、依頼・完了・採取/討伐証明確認・支払まで一連の業務を一人で全てこなしたりします。
そんなに歳若い担当者が全業務を、特に経験が必要な筈の採取物や獲物の見分けや品質鑑定まで確りと完遂出来るって、ドンダケーな能力設定なんだか!チート主人公より才能豊かなんでは? いや、依頼完了やなんかは別窓口分担とか、受付担当は元冒険者の中年以降のオッサンばかりってんなら分かりますがっ!
また主人公やなんかがギルドマスターに用件があって受付に申し出たりすると、大抵は担当のおネーサンがギルマス室へ直接確認に行きますよね(2)? 受付なのに有り得ないですよね。どんだけ権限持ってるのか。普通ならせめて同僚か直属上司に断わってから席を外さなきゃ駄目ではないでしょうか。やはり歳が若い分、一般常識も足りないのでしょうね!
ギルド規約の小冊子(3)というのは余り書かれる事は少ない様ですが、ギルド登録の際に記入させる登録用紙だったり、ボードに張り出される各依頼票(4)などギルドでは普通に「紙」を使う表現が当たり前の様に描かれます。
であるにも拘わらず紙は非常に高価で、本が希少であったり図書館の入館料が高額である等の設定がなされていたりします。町内でのお手伝い等の低ランク依頼票にまで紙を使用しているのに、それ程高価ならギルド自体が大赤字でしょうに。設定自体がおかしいとは思わないのでしょうか。それならきちんとギルドでは羊皮紙や竹簡等を使うっていう表現をしておけばいいのに!
またポーションがそれなりの値段がしたり、治療魔法の使い手が大事にされる設定があるにも拘わらず、何故か負傷者がギルドに運び込まれて手当てを受ける記載があっても(5)、治療費用を請求される事が無いのは何故なのでしょうか。ネット小説を数多く読んで来ましたが、きちんと請求されるパターンはごく一部の作品だけでしか見た事がありません。作者の方は"ギルドで治療"と書かれていて、ご自分で設定がおかしいとは気付かないのでしょうか!
さて最後の(6)。冒険者はギルドで税が天引きされるので、所得税や町や都市に入る際の入市税を払う必要が無いというアレです。この設定自体は何も変ではありません。只この規定に対して、ギルドの年会費や依頼を受けずに働かない際の罰則規定が存在しないのは、誰が考えてもおかしいですよね?
何故なら、ギルドに登録してからずっと何も働かなくとも罰則も会費も無いのであれば、住民は全員が挙ってギルドに登録し税金を払おうとしなくなりますよ。緊急招集等の規定だって最低ランクなら免除されるでしょうし。領主様は税収が無くなって首を括るしかなくなりますね!
【処方】
今回は冒険者ギルドの諸々の設定に物申してみました。他にもまだまだあるのですが、文量が今迄と掛け離れそうなので上記の点だけに留めました。
最近は受付嬢はそれなりの年齢だったり元冒険者だったりする作品も多くなり、紙も然程は希少ではなかったり仕事を受けない際の降格規定があったりと、数年前よりは書き手の方々がきちんと設定を練られているものも多く見受けられます。
只それでもやはり安易な設定の作品は散見されます。「ああ、まだ厨学生なんだなこの作者」と思われない様に設定間の矛盾点には注意しましょう!