児童虐待発見の難しさと対策についての考察
家庭内で行われる児童虐待発見の難しさと対策について考察する。
子どもが虐待を受けているかどうかについては、毎日少しでも子どもと接する機会がある担任教師が最もそれに気付きやすい立場にあることは明らかである。しかし、実際にベテランの教師ですら自身の担任する生徒が虐待を受けていることに気付けなかった事例があることからもそれが容易ではないことが窺える。
ここで、家庭で虐待を受けている子どもが実際にどのような行動を取るかを考える。
まず、身近な人物に相談することが考えられる。この場合教師側は速やかに問題解決のため行動を起こすことが重要となる。しかし、自身の辛い現実を他者に相談することは非常に勇気がいることである。ゆえに子どもが相談しようと思ったときにはすでに深刻な状況となっている恐れがあるため、教師側としては常に子どもの自主的な相談待ちというわけにもいかない。
次に考えられるのが、虐待を受けていることについて隠してしまうことである。
理由は多々考えられるが、本気で隠したいと考えている子どもは少ないだろう。虐待の事実を隠したいとは思っていても、自身の辛さを誰かに理解してもらいたいとは考えるはずである。この場合、何らかの変化が見られることが予想されるため、一定以上子どもと接触する機会がある教師が虐待に気付きやすいことは前述したとおりである。
では、なぜ担任教師でも虐待に気付くことが難しいかを考える。
まず、前述したとおり子ども自身が虐待を受けていることを隠そうとすることにある。様子の変化があったとしても教師にそれに気付く力がなければ、それを見逃してしまうことになる。また、虐待を受けている子どもが嘘をつくことに長けていれば、たとえ教師に力があったとしても気付くことは難しい。教師とて人間であるから、そのような失敗があっても仕方がないことと思われるかもしれない。しかし、子どもの期待を裏切ってしまうこと、後に取り返しのつかない事態になる可能性を考えるとやはり許されないことである。
次に、プライバシー保護の観点等から教師が子どもの家庭事情に深く踏み込むことができないことだ。
子どもが虐待について隠そうとする場合、あまり根掘り葉掘りと聞き出そうとすることはかえって負担を掛けてしまい、塞ぎ込んでしまうかもしれない。保護者と話ができたとしても、家庭の問題と否定されてしまえば深くは踏み込めず、下手に刺激して悪影響を及ぼしてしまうこともあるかもしれない。しかし、教師が問題を一人で抱え込まず、少しでも異変に気付いた時点でそれを他の教師等の他者と共有すれば、多方面からのアプローチで解決を図ることが可能になる。
以上から、普段からするべき対策としては生徒一人一人と真摯に向き合うこと、少しでも異変があれば早い段階で対応することであり、教師としては当然のことである。