太陽
赤くて真ん丸い太陽を見ていた。
泣いてなんかないさ。僕は強いのさ。
がり勉メガネをはずして、真っ赤の真ん丸い夕日をぼやかして見ていた。
にじませた太陽を見ていた。
メガネをはずすと、いつもと違う時計による時間の世界にいく。
同じく生きているのに違う世界。
メガネをかけていると、人差し指が、一本、二本とあらわれて、20本くらい横に並ぶ。
メガネをはずすと、大きな丸の中に、少し小さな丸が出来て、その中にまた少し小さな丸が出来る。その丸が一番大きな丸はそのままで、スマホのタッチパネルのように、丸が小さくなったり大きくなったりする。初めは白と黒とのモノトーン。だんだん真っ赤で真ん丸い太陽がにじんできて、オレンジ色のゆらゆらが見えてくる。
オレンジ色のゆらゆらは、僕にダメージを与える。
落書きされたメガネ、
ドン!
机の中に入ったコッペパン、
ドン!
チョークで落書きされたズボン、
ドン!
こぼれた粉薬、
ドン!
ピーヒャラとお囃子が聞こえる。
チキ、チ、ドン、ドンと鐘を叩く音が聞こえる。
僕は弱くない。泣いたりなんかするもんか。
僕はタッチパネルの拡大と縮小を繰り返す。
異世界の時間が進んでゆく。
境界のない赤とオレンジ色と黄色。黒いシミはカラスか。それとも目蓋に止まったハエか。
チキ、チ、ドン、ドン
ドン!
ドン!
ドン!