乙女ゲームっつったら複数のイケメンとメンタルつよつよヒロインがいるやつしか知らんけど、ここはなんか違うらしい
「あくやく、れいじょうぅ…?」
聞いた事のない単語に、淑女にあるまじき声を出してしまった。
悪役で令嬢?なんそれ、悪女じゃないの?悪役でもないの?なんか悪役とか言うけど後ろについた令嬢のせいでショボそうに聞こえる、なんだそれ?
なぜ私がそんな単語を美しくない声で復唱したかと言うと、目の前に居る真っピンク色の髪の娘がその単語を口にしたからだ。
『アンタ転生者でしょ! 自分だけいい思いするためにシナリオ改変? ふざけないでよ悪役令嬢なんてただのイベント装置なんだから、ちゃんとイベント起こしなさいよ!』
との事。
転生者と言う単語はわかる。多分私も転生者で間違いはない。
しかし、悪役令嬢と言う単語はわからない、聞き覚えもない。
「しらばっくれるんならそれでもいいけど、ネビュラバメインヒーローであるプレ様は渡さないんだからね!」
知らねえ単語しか出て来んな……。
思わずチベットスナギツネ顔になってしまった。
とりあえず、話があるなら伺いましょうと別件で予約していた個室に案内していて良かった。こんな話を他の人達に聞かれたらどう思われる事か……まあでも目の前のピンク頭ちゃんは、多少のおかしな言動くらいではもう話題にもならないかも知れない、そのくらい悪い意味で有名人だ。
しっかし酷い頭の色だなこれ…蛍光色?本人の言を信じるなら、ここは乙女ゲームの世界らしいが……こんなトンチキカラーの主人公とイケメンのいちゃいちゃ見たいかなあ?スチルで目がチカチカしそう。
落ち着くために、私付きの侍女が用意してくれたお茶を一口いただく。カモミールティーを用意してくれたらしい。大変優秀。
「ローズ様でしたっけ? とりあえず一旦落ち着いてお茶にいたしませんこと? 今王都で話題の焼き菓子もありましてよ」
「……! そこまで言うなら、食べてあげてもいいけど」
そこまで、とは?
とりあえず、一時的に彼女の口を塞ぐ事に成功したので、少し状況を整理しましょう。
私はアルタイル一等爵家の嫡子、カリーナ。一等爵と言うのは、王に続いて高い爵位の事。一応システム上は九等爵まであり、一等から五等までを貴族、六等以下を準貴族と呼んでいる。
現在は王立学園領主科の二学年に在籍。
家族構成は両親と妹、そして父方の祖父母。今生活している王都邸では祖父母と同居中。
物心ついたあたりから、この世界でない世界の記憶がふんわり残っていたので、なるほどこれが転生と言うやつか、とは思っていました。
この世界は剣と魔法が生きている世界、街並みは煉瓦と木、でも下水はしっかり処理済み、ごはんはおいしい、良い世界だ…とも思っていたのですが、なんらかのゲームの舞台と言う事であればさもありなん、と言った所だろうか。
いや下水処理しっかりしてない世界を下地に物語作ると衛生面がね、大変ですものね。
斜め前の席で焼き菓子に相好を崩しているピンク頭ちゃんは、確かローズ。家の爵位はない一般市民。
半年前にこの学園に入学した新入生の一人であり、今一番学園内で注目されている珍じ…いえ、女生徒。
成績は上位、授業でも特にやらかしはないのに、特定の男子学生への対応だけが際立っておかしい、それが高位貴族の令息だけなのもあって、眉を顰められている。あと、たまに何でそんな所にいるのかわからないところを徘徊している、とも囁かれている生徒だ。
行動原理が乙女ゲームの攻略に拠るモノなら、理解はできないけど、そんな動きになる事もあるかあ…と思わないでもない。
ゲームの再現を現実でやろうとすると痛々しくなるよね、みたいなお気持ちを添えて。
しかしこの世界、貴族淑女の衣類はメインがドレス、裾がずるずる。フリルとかはつけ甲斐があるけど、かわいいと言うには重い。学園の制服もそれに準拠しているのでスカートが足首まである。
男性が白タイツの世界でないのはまあいいとして、スカート丈が足首まで固定って、そんな衣類自由度の低い世界の乙女ゲームとかやっぱり記憶にないんですよね…いやヘビーユーザーではないので知らない作品があったとしても当然なんですが。
主人公キャラのお洋服が着せ替えできないやつなのかな…でもそういう場合って使命があってそのための装束が決まってるとかになるから、もう少し動きやすい服装だったような気がするけどなあ?
主人公キャラのビジュアルが決まってないゲーム?自分とキャラの疑似恋愛を楽しむならアリなのか?わからん。
私が知っている乙女ゲームなるものと、この世界が嚙み合わなすぎて頭痛がしてきた。
私の中で整理したい情報は整理したので、目の前の彼女からもうちょっと情報を聞き出そう。
「ローズ様、そのままでよろしいので少し聞いてください」
菓子に釘付けだったピンク頭の目がこちらに向く。目の色は鮮やかな金。
「私は、貴女の仰る転生者で間違いないのですが、寡聞にもこちらの世界の元となった作品については存じ上げないのです」
「そうなの? 乙女ゲーとかやんない人だったの?」
「えぇ、ですので、どのような作品だったのか教えていただけますか?」
了承しないなら金で釣ろう、と思いながらピンク頭に水を向ける。
「ネビュラバやった事がないなんて、人生損したね!」
ピンク頭は推し作品を語りたいタイプだったようで、つるつると口を滑らせてくれたので助かった。
彼女の語る所によれば、この世界は『ネビュラ・ラバー ~星問いの御子は星騎士に愛され覚醒する~』というタイトルの乙女ゲーム世界だそうだ。据え置きゲーム機用のソフトでフルボイス、人気が出てシリーズ化もされたし、アニメにもなったらしい。
いや知らん……本当に知らん…。
ストーリーは、没落した七等爵の家の娘が、庶民として入った学園で勉強に恋に頑張る内、高位貴族の令息達に見初められて恋を育む、と言うような、まあ学園ものなら違和感のない話を主軸に、娘が星問いの御子として覚醒するためにレベルとスキルを上げる要素が加わったものらしい。
レベル上げやスキル上げには魔物とのバトルも含まれ、恋愛のゴールと別に、星問いの御子として星騎士と共に魔を祓い国を救うというゴールも用意されているようだ。恋愛成就しても、国を救えなければバッドエンドらしいが、そらそうだろう、国が滅んだけどハッピーエンド!はさすがにダメでしょ。
『星問いの御子』『星騎士』とは、この国の役職として存在するので、なるほど確かにそのゲームと同じような世界ではあるんだな、と納得する。
『星問いの御子』は星々の声を聴き、星騎士に星の力を降ろす導となる存在で、強い星の加護を戴いている人間が覚醒した姿だ。覚醒すると瞳に☆が浮かぶのだと昔聞いた時には、何その若かりし頃の傷が開きそうな設定…と思ったものだが、まあゲームの設定と言われればわからんでもない。
今現在この国に『星問いの御子』は存在しないが、喫緊で必要になるほどの魔の高まりも報告されてはいないので問題視はされていない。
『星騎士』は『星問いの御子』と心を通わせ、御子が加護を受けている星の力を扱えるようになる存在なので、順序的には『星問いの御子』覚醒→『星騎士』確定となる。けどまあサブタイトルに文句はつけまい、そもそも覚醒に愛もいらないわけだしとか性別も固定じゃないしとかお口チャック。
そんな事言うなら、『星問いの御子』が加護を受けている星は一つとは限らないから、『星騎士』も一人じゃなくていいわけだし。
過去の『星問いの御子』には10人程の『星騎士』を従えていた豪の者もいたらしい。素晴らしい騎士団長だったと聞く。小説にもなっている(愛読書)。
あぁ、でも複数人の『星騎士』候補がいると言うのは乙女ゲームとしては問題ないのか、シナリオは複数あるだろうしな。
さて、それで問題の『悪役令嬢』なるモノについてだが。
ゲームでは攻略対象大体一人につき、一人の『悪役令嬢』がいたらしい。そんなにいるの?
攻略対象との恋路を邪魔する女性キャラをそう呼ぶらしいが、やっぱり知らん概念ですね…?
「まず、王子のプレ様にはカリーナさんでしょ」
いつの間にか私の事をさん付けで呼んでいる。懐かれたのかこれは?
あとプレ様ってのは王子殿下の事だったのか、略すと…ああ、うん、そうなるね。
でも何で王子殿下関連の話で私が出てくるんだろう?
「次に、アルタイル第一爵家の養子のイータ様にもカリーナさん」
だ れ だ そ れ は。
養子なんぞいないし、必要もないんだが???
宇宙空間を背景にした猫みたいな顔になっているであろう私をよそに、ピンク頭は話を続ける。
「あとは、宰相様の息子のシーガル様にはデイジー様、騎士団長の息子のウォルフ様にはラニエ様、魔術師団長の息子のセーファー様にはジュエラ様」
指折り数えて出される人名の内、恋路を邪魔すると言われて納得が行くのはラニエ嬢だけだ。彼女は騎士団長の息子とすでに婚約しているので。
しかし他二人と私については、婚約もしていなければ、現時点で仲が良いと言うわけでもないので、なぜそんな横槍を入れるのかわからない。
そう伝えると、ピンク頭は素っ頓狂な声を出した。
「え? なんで? 婚約してるのウォルフ様だけ? イータ様に至っては学園にいない?」
それは出会いイベントの場所に日参しても何も起きない…とがっくりするピンク頭に、日参したのか…ようやる、と思ってしまう。
何でも、最推し攻略対象は王子殿下だけど、ルート確定前のイベントはできるだけ体験しておきたい、と奇行に及んでいたらしい。
しかしイータなる存在がいない事にがっかりするのはさておき、婚約者がいないのは良い事なのでは?と素直な疑問を口にした私を、ピンク頭が信じられないようなものを見る目で見て来た。解せねえ。
「障害を乗り越えてこそ恋愛って燃えるものでしょ! それに、乙女ゲームなのに悪役令嬢がいないなんて片手落ちにもほどがある!」
「そうは言われましても……そもそも、主人公と男性の『恋愛を楽しむゲーム』なんですよね?」
「そうよ! 身分は違うけど優秀な主人公と高位のイケメンの恋! 邪魔する悪役がより二人の恋を燃え上がらせる!」
「いやでも……それって、いわゆる『横恋慕からの略奪愛』ですよね? すでに相手の居る人と恋人になる時点で」
「……ふぁ…?」
寝てはいないだろうから寝取りではないとしても、婚約を解消しない状態で他の相手と恋仲になるならそれは浮気。いや婚約者以外とキャッキャウフフするだけなら契約違反とまでは言わないが、そういった暗黙のルールみたいな所はさておき。
婚約を解消しないままの相手と主人公が恋仲になるゲームて乙女向け?『悪役令嬢』は婚約者にキープされたまま、卒業パーティーなんて衆目の面前で恥をかかされるとか、ろくでもないシナリオすぎん?私とか妹がそんな目にあわされたら、我が家は国から離反するが?
このゲームでの『悪役令嬢』の扱いはまだマシな方らしくて、貴族籍からの除籍か修道院送りらしいけど…死ななきゃ丸儲けじゃあないんだよなあ。
聞いてるだけでゲームソフトへし折りたくなるストーリーなんだが。
そんな設定、どう考えてもCER〇レーティングで17歳以上枠になるのではないかと思う。ド深夜のアニメ枠ならそれもアリなんだろうけど、なんかそういう口調でもなかったんだよなあピンク頭。
「甘い恋を楽しもうと言うにはちょっと設定がドロついてますし、恋の障害なら『攻略対象にすでに相手がいる設定』より『レベル上げを兼ねて魔物とかに担わせる』とか『家族親族の反対』の方が面倒がないと思いません?」
昼ドラとかならまだしも、ピンクきらきらパッケージのゲームでお出しされる設定としては一般的ではないだろう。いやピンクかどうかは知らんけど。自称主人公がピンク頭なせいでつい。
存在しないとは言わないが、それが大人気でメディアミックスまでする世界はよくわからない……何より、ただでさえやる事の多い乙女ゲームで、同年代の女性とのギスギスまで詰め込んだらそれはもはやダルゲーでは……やりたくねえ…という顔で空を見てしまう。
まあ乙女ゲームの常識がどうとか言えるようなヘビーユーザーではない(大事な事なので繰り返します)ので、あるかないかを論じる事に意味はない。ここで大事なのは一つだけ。
「説明していただいてわかりましたが、どうにも貴女の転生前の世界と私の転生前の世界は異なるようですわね…世界そのものなのか、時代とか場所とかの違いなのかまではわかりませんが」
「そ…そうなの…?」
「私の知っている世界の乙女ゲームは、制作の基本理念に『ライバルは設定しても女性キャラにひどいことはしない』を掲げてましたし」
『女性は同性キャラが酷い目に合うのを見て不快に思うだろうから、そういう要素は入れない』みたいな制作サイドのインタビューを見て、この人少女漫画読んだ事ないんかな…と思ったので記憶に残っている。まあそうでなくても、同性キャラとのあれこれをねじ込むとやる事多くなりすぎるから、余程でなければ入れないか、と納得はした。
「と、言うわけで、私としては貴女の邪魔をする事はありませんが、イベント装置として協力するつもりもありません」
「……はい」
「それに、前提条件から既に大きく異なっているので、貴女が望むような展開は難しいでしょう、一旦落ち着いて行動を改めた方がよろしいのではないですか?」
「そう……そう、ですよ、ね…」
どこか呆然とした表情のまま返事をするピンク頭は、先程までの勢いをすっかり失っている。
横恋慕とか略奪とかのくだりがショックだったのだろうか?しかし部屋の予約終了時間との兼ね合いもあるので、そろそろお引き取り願いたい所。
帰宅する前に本日入手しておいてもらった新刊を、ちょっとでいいから読んでおきたいのだ。
等と考えている間に、なぜかピンク頭が私の足元で土下座していた。
「いや何で?」
「カリーナさん…いえ、カリーナ様、お願いがあります!」
「イベント装置の件なら今お断りしましたわよね?」
「そっちではなく……私をカリーナ様の下僕にしていただけないでしょうか!」
げぼく。
この部屋に入って来た時には自分こそ主役であると言わんばかりの上から目線だったピンク頭が、あっという間に最底辺までへりくだった。
ジェットコースターも真っ青の急降下すぎない?
とは言え、これは、現実が見えたかな…。
「それは私の庇護下に入りたいと言う事かしら?」
「はい! …庇護をお願いするのも厚かましいとは考えていますが、ここ暫くのやらかしを考えると、カリーナ様にしかお願いできないのです……私にできる事ならなんでもしますので…!」
ガタガタと震えながら訴えるピンク頭の脳裡を過るのは、数日前に話題になった王子殿下への失礼か、はたまた一ヶ月程前に話題になった宰相の息子への失礼か…やらかしが多くて話題に事欠かないため、まことしやかに流れているそろそろ処分されるのではないかという噂かも知れない。
いずれにせよ、今この状況で彼女を庇う…と言うよりは、責任を持って改心させますので何卒お手打ちに、とあの辺りに進言できるのは私だけだろう。爵位だけなら同じ対応ができる人間もいるが、そんな事をする義理のある人間はいない。
そういう意味では私もそんな事をしてやる義理はないわけだが…。
転生者同士と言う事で多少の情が湧いている事と、育てられたら面白いのでは?と思ってしまい。
控えている侍女からは、私の考えを見透かしたようなじっとりした目線を感じるけど、これはほら先行投資だし、失敗してもそんなに痛くはないはず。
「そうね、貴女を私が面倒見ると言う口実で庇護してあげてもいいわ」
「本当ですか!」
蜘蛛の糸に縋ろうとした人間はこのような顔をしていたのかも知れないなあと思いながら、私は交換条件を口にする。
「その代わり、貴女には星問いの御子として覚醒した後、星騎士団を作ってもらいたいの」
「……ほぁい…?」
かつて存在した、星問いの御子率いる星騎士団。歴史の学習で知り興味を惹かれ、小説でのめり込んだ憧れの組織。できる事なら実物を見たかった、せめて演劇等で再現できんか…との気持ちでまあ歌劇団とか作ってもらったりしたけど、ここにいるのはリアル星問いの御子候補。実現できる可能性があり、本人が何でもすると言っているのだから、ちょっと夢を見るのは許されると思うの。
まあ騎士団を作るのは努力目標だけど、星問いの御子として覚醒するまではビシバシ鍛えさせてもらうから、面倒見るのも嘘ではないし。学園卒業までに覚醒できなかった場合は、歌劇団に所属させればまあ損はしないんじゃないかな…。見た目は悪くないんだし(主人公だもんね?)
なんて、取らぬ狸の皮算用をしていた私の想定を裏切り、ピンク頭は21の星の加護を得、かつての星騎士団より強く美しい男女混合騎士団を作り上げ、国内どころか諸外国にも名を轟かす事になるのだが、それはまた別のお話。
***余談***
「所で、イータなる男性はどのような経緯で我が家の養子になったのか伺ってもよろしいかしら?」
一頻りやって欲しい事の説明と、流れで星騎士団の小説を貸す約束を済ませた後、気になっていた事を尋ねる事にした。
個室はそろそろ予約している時間が終了するが、話が伸びるようなら自宅まで送りがてら話をしてもいい。そのくらいには打ち解けてしまった。
いや同じ作品を語り合う仲間欲しかったんですよね。
そんな私の心情を知らないローズは、少し思案した後で口を開いた。
「イータ様はですね、カリーナ様が王子殿下の婚約者になった事で、後継ぎを必要とした一等爵様が遠縁の子を貰ってきたと言う設定でした」
「……? 私が嫁いでしまうのだとしても、なぜ養子が必要になるのかわかりませんわね?」
妹がいるのに?
わざわざ男性の養子を……妹と婚姻させるつもり……いや、イータのシナリオでも私が『悪役令嬢』だと言っていた。では、妹は?
その疑問に意図せず答えたのもローズだった。
「なぜ……って、カリーナ様が一人っ子だからでしょう?」
「一人っ子? 私が?」
なんということでしょう。ゲームには私のかわいい妹は存在していないらしい。
かわいそうなゲーム世界のカリーナ…あんなかわいい妹が存在しない世界で生きていたなんて……それは悪役にもなってしまっても致し方なし……。な、わけはないか。
「えーと……カリーナ様、ご両親の仲って良好ですか?」
「え? そうね、今も仲睦まじい夫婦ですわ」
「なるほど……多分、色々ゲームから設定がズレた起点はそこでしょうねえ」
「我が家の夫婦仲が? そんなに大規模に影響するんですの?」
ローズの説明によると、宰相様と魔導士団長様のご子息の婚約がまとまるのは、私が母のゴリ押しで王子殿下の婚約者に収まった余波であるらしい。
母が私を王子殿下の婚約者にねじ込んだのは、父との不仲から、娘を国で一番の地位に押し上げる事で自分を認めさせようとしたせいだそうだ。
なかなかのねじれ具合だが……。
「母の歪んだ承認欲求……成程…それが起点となってゲームの舞台が整えられていた、と言う事であるなら、貴女の言う通り私がこの世界を改変してしまったようですわね…」
「心当たりがおありなんですか?」
「まさかあんな過去のやらかしで、そんなに変わるとは思いませんでしたが…良い方向に転んだのだと思いましょう」
「ちょ…一人で納得してないで教えていただけませんか! 気になる」
「そうですわね、貴女には知る権利があります」
あれは、ふんわり転生者の自覚がでてきた4、5歳の頃の事。
どう見てもお互いを意識しまくっている両片思い状態の両親を見守っていたのだが、あまりにも進展がない上に、なんかギスり具合がひどくなっているような気がした私は、じれったくなって両親それぞれにこう言ったのだ。
『おとうさまっておかあさまのこと、だいすきね?』
精一杯無邪気を装って、二人に同じ言葉を投げつけた。
その後は、両親がしばらくの間ぎこちなくお互いを気にかける様子を見せていたが、ある日突然吹っ切れたかのようにイチャイチャしはじめたので、まあなんかあったんだろうな、末永く幸せになれよ…!と子を見守る親の気持ちになったものだ。逆だけど。
そしてその一年後くらいに妹が産まれた。そういう事である。
その話を聞いたローズは、キリッとした顔で言った。
「それは、しょうがないですね、私でもそうします」
そう言う事になった。
ピンク頭ちゃんは拐われても自力で帰還できる系ヒロインにクラスアップするはず。




