「500円です」
「500円です」
音声案内に従って端末をかざし、今月分を支払った。
家と会社を往復する代わり映えのない日々。
恋人がいたのはいつだっけか。
1…2…いやもう3年か。別れてからもう3年たっていたことに自分で驚く。
「500円です」
今月も同じ金額。
そうだろう、何も変化はないからな。
「おい!金額がおかしいぞ!」
隣の列でおっさんが大声をあげていた。
「急にこんな高くなるなんておかしい!俺のじゃない!」
怒鳴り続けているがバカだな、騒いだって金額は変わらないし、なんなら上がりかねないのに。
問題を起こすなんて。
「500円です」
今月分を支払って、ふと今日会社で聞こえてきた噂話を思い出す。
「不祥事起こしたA部さん、維持費上がって大変なんだって」
「いくら上がったのかしら。怖いわねぇ」
「500円です」
支払いを済ませ外に出ると、ポスターが目に入った。
『生命維持費の上昇を抑える10のコツ 再販入荷!』
こんなの書いてあることなんて同じだろうに、わざわざ買うやつの気がしれんな。
流れてきた広告でいくつか動画も見たが、どれも代わり映えのしない内容だった。そんなもんだろ。
「500円です」
帰宅して、特に目的もなく動画サイトを見る。
『生命維持費が100万円になった俺が生きている限り暴露します!』
あのお騒がせ配信者、とうとう100万円超えたのか。
俺なら3ヶ月ももたないな。
払えなくなったら終わりだ。
今日は天気があやしい。
降り出す前に支払いを済ませてさっさと帰ろう。
「600円です」




