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1ー2

「はぁ、成る程。それで、さっさと帰らにゃならんという訳ですな、坊ちゃんは」

 馬を走らせ、霊地へと直行したゼクルスは、番小屋に呼びかけて中に入れてもらう。そして、泉に浸してある小袋を引き上げた。

 中に銀の腕輪と核石を入れておいたのだ。

「よし、十分だな」

 核石は、保護眼鏡の視界で濃い緑色に輝いている。一度は枯渇した霊素が回復した印だ。

 確認したゼクルスは腕輪に核石をはめた。

 大地の奥深くから湧き出す泉は、豊富な霊素を供給してくれる。

 ここはベルンシュタインが保有する霊地の中で、最も霊素の回復が早い一等地なのだ。

「ほぉ、それがエレイン様の誕生祝いですな。坊ちゃんの手作りですか? いつもながら見事ですなぁ」

 霊地詰めの連中で一番年かさのルグナーは、感嘆のまなざしで腕輪を眺めている。

「だろう? 僕が銀の加工も術式の彫り込みも全部……って、ダメだダメだ! 早く帰らなきゃ兄上に怒られる」

 反射的に術式の解説をしそうになったゼクルスは、かぶりを振る。

「ははっ、坊ちゃんも大変ですなぁ。エレイン様は嫁がれても影響力を保ち、領主代行のアインハルト様にも頭が上がらなくて」

「そうだよ、僕は姉と兄に圧力をかけられる可哀想な末っ子なんだ」

 兵士達は笑って、ゼクルスの馬を連れて来てくれる。

「まぁ、大変と言えば、お三方全てに共通する事ではありますな」

「共通? 何がだ?」

「そりゃあもう、先の戦のことですわ」

 白髪交じりの兵士たちは、うんうんと頷く。

 ゼクルスの祖父ジスランが群雄割拠の時代で敗者となり、現在の王家に服従を強いられたこと。

 戦後に従属した領主は全て王家に睨まれ、エレインがリンツから遠く離れた王都に嫁いだのも、人質の意味合いが強いこと。

 兵士達が愚痴るのは主にそんな事で……ゼクルスが聞き飽きて、今更どうしようもない事だった。

「まぁ、いいんだよ。姉上は。好きな人と結婚できたみたいだし。僕にも婚約者がいるし。心配なのは兄上なんだよな」

「と、言いますと?」

「兄上は何かというと真面目で堅物だからさ。あれじゃ女性に対しても理想が高すぎて、結婚しても……」


 その時。

 ずしん、と地面が震えて、ゼクルスは言葉を止めた。


「ん?」

 その場の面々は震動の正体を探して首を動かし、煙が上がっているの見つけた。

「あっちはアルニ砦じゃないか?」

 ゼクルスは、砦上空を飛んでいるのがドラゴンだと理解するのに少々時間を要した。

「う、うーん……まぁ、とにかく! お前は城に連絡して応援を呼べ。残りは武装しろ。砦を救援に行く」

「了解!」

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