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幸せ

作者: こはな

初めて書いた短編小説です!

 気が付くとそこは知らない場所だった。少し暑さを感じ目を覚ますと、満天の星が夜空いっぱいに輝いていた。綺麗だな。と思い夢中になり、少しでも星に近付きたいと思い、手を伸ばそうとしたら、手に何かが触れた。見て見ると地面にはたくさんの花が咲いていた。あまり花には詳しくないので花の名前は知らなかった。知らない場所なのに何故か懐かしさを覚えた。

 そういえば探し物をしていたんだった。けど、何を探していたか思い出せない。何か特別で大切なものだということは確かだった。それを持ってあの人のところへ行くんだと思っていても、その人が誰なのかすら思い出せない。何も思い出せないし、わからない。

とにかく探そうと思った。しばらく歩いていてもずっと同じ場所にいる、気がする。私は今どこに向かっているのかすら分からない。右も左も分からない、赤子にでもなってしまったようだ。

 すると突然、遠くで人のような声がした。ああ、この声は…。瞳から一筋の涙が流れた。何故泣いているのか自分でもわからない。けれど、胸の中で悲しみと喜びの感情がぐちゃぐちゃになっていっぱいになっていることだけは確かだった。その声の方向へ私は無我夢中に走った。こんなに息が切れそうになるくらい走ったのはいつぶりだろうか。でも走らずにはいられず、全身の穴という穴から大量の水が溢れようとも、肺中の酸素がなくなろうとも、血の味がしようとも私はどこにいるかもわからないあの声の主の方を目指して走った。

 声がした辺りに着くと、そこには私が探していたであろうものがそこにあった。多分これだ。確証はないし、覚えていないけど、確かにこれに違いないと思った。ああ、これであの人に渡せる。そう思った。私はその人と面識がないどころか顔さえ知りはしないというのに、どうしてそんなことを考えてしまうのか、わからない。でも、心の中では知っていると思ってしまう。こんなことを思ってしまう自分が不思議で仕方がない。声がしたところには確かに人の声がしたはずだが、私以外の人影は認められず、思わず世界に私しかいなくなったと錯覚してしまいそうだ。

 そもそもどうして私は知りもしない人のために、なんのためのものかわからないものを渡そうとしているのだろうか。なぜ懐かしさを感じるのだろうか。いったい何故こんなにも考えてしまうのだろう。

 すると、綺麗な夜空に一筋の流れ星を見つけた。そう言えば、流れ星が流れているうちに3回願い事を言えたら叶う―と言われていたような気がする。本当かわからないが、昔はそれを信じ試みたことが何度かある。懐かしさを覚えつつ、少し残念に思っていると、突然空からたくさんの流れ星が降ってきた。今日はもしかして…私の中で1つの考えが浮かんだ。

 そうだ、今日はあなたが亡くなった日だったんだ。今日は8月12日―そう、ペルセウス座流星群の日であり、最愛の夫を亡くした日だった。色々な不思議な感覚は、私が前世での記憶をなくしていたからだったのだ。今更彼を探しても見つからないのにこんなにも探してしまう。最後にもう一度彼の姿を一目見たいと心から願ってしまう。夢なら覚めたくないと思ってしまう。

 そう言えば、さっきから音が聞こえる。よく耳を澄ましてみると、さっき聞いた声がする。彼の声がどこからか聞こえてくるのだった。どこにいるの、隠れてないで出て来てよ。そう口にした、つもりだった。何故か声が出ない。呼びたいのに言葉が、声が発することができない。それどころかだんだん体が重くなっている気がする。ああ、もう終わってしまう。結局私は会えずに、あなたにこれを渡せずに終わってしまうのか。と思った。

 瞼もだんだん重くなってきて、動くことができなくなたその時、脳に直接声響いた。彼の声だ。そうわかった途端私は思わず泣いてしまった。優しくて温かい彼の声、それを聞けただけで十分だった。でもやっぱり彼の姿が見たいと思い、重たい瞼を無理矢理こじ開けた。

 するとそこには彼の姿があった。なんだか少し透けていたが、彼の姿に間違いなかった。動きたいけど、目を開けているのでもう精一杯だった。せめて、これだけでも渡そうと彼に渡したのは、あなたへの感謝と謝罪を綴った手紙だった。謝りたかったが謝れず離れてしまった後悔がずっと残っていたのだった。ずっと悔やんでいて今やっと渡せた。あなたに会えて本当によかった。

 そろそろ終わりそうだと思った。そう言えば、あの花はなんて言うのだろう。そう考えながら、消える意識の中で考えていると、彼が

 「あれはクチナシだよ。」

と言った。そして私は意識を手放した。

 気が付くと私は泣いていた。

読んでいただきありがとうございました!!

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