希望の灯り
朝日が昇る前、町役場の前には長い列ができていた。老人たちが、身を寄せ合いながら静かに待っている。ボランティア募集の張り紙を見て、皆が同じ思いで集まったのだ。
佐藤さん(72歳)は、年金だけでは生活が苦しく、この機会に賭けていた。「1日500円でも、月に1万円以上になる。それだけあれば...」と、つぶやく。
募集開始時間になると、役場の職員が現れた。「申し訳ありません。募集人数は10名です」その言葉に、100人以上いた老人たちのため息が漏れた。
選考が始まり、時間が過ぎていく。佐藤さんの番が来た時、彼女の手は震えていた。「お願いします。私にこの仕事をください」と、必死に訴えた。
結果発表の時、佐藤さんの名前は呼ばれなかった。周りの喜ぶ声を聞きながら、彼女は静かに涙を流した。「もう、希望はないのかもしれない...」
しかし、帰り際に声をかけられた。「佐藤さん、実は追加で5名募集することになりました。あなたも採用です」
その瞬間、佐藤さんの目に光が戻った。「ありがとうございます!」と、声を震わせながら答えた。
翌日から、佐藤さんは明るい黄色のベストを着て、笑顔で交通整理に立った。たった500円でも、それは彼女にとって希望の灯りだった。毎日の生活に意味が生まれ、顔なじみの通行人と挨拶を交わす楽しみができた。
佐藤さんは思った。「これが私の居場所。この町の役に立てることが、何よりの幸せ」と。小さな黄色いベストが、町に、そして彼女の人生に、新たな輝きをもたらしていた。