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「わたしのことは放っておいて!」


 それだけ言うと、魔女は遠くへ飛び去ろうとします。しかし、あなたは魔女に手を伸ばして言います。


「待て! そなたはこのままでよいのか⁉ 夏の王国の王子が好きなのだろう?」


 魔女がほうきから落下します。あなたは間髪入れずに馬を走らせ、そのきゃしゃな体を間一髪抱きかかえました。


「どうして……それを……」


 魔女の、いいえ、冬の王国の王女のひとみが、青色に輝きます。あなたは口を真一文字に結んで、王女を抱きかかえたまま馬を走らせました。


「……若き王よ、わたしを放っておいてくれませんか……」


 冬の王国の王女を抱きかかえたまま、あなたはあの小屋へ戻っていました。小屋にはまだ、夏の王国の王子がうずくまって涙を流しています。あなたは一喝しました。


「一国の王子が、自らの好きな女性すら手に入れられぬとは、情けないと思わないのか!」


 ハッと顔をあげる夏の王国の王子に、あなたは冬の王国の王女の手を取り近づけます。


「あぁ、王様、おやめください。わたしたちは結ばれることなどないのです。掟で」

「そのような掟は、我ら三人で変えてしまえばいいだろう! この宝玉が、三つの宝玉が集まることで、『春』という季節を生み出せば……」


 あなたの言葉と共に、夏の王国の王子の黄色の宝玉が、そしてあなたの王冠に埋め込まれた、赤色の宝玉が、そして……王女のひとみに封じられた、青色の宝玉が、そろって輝き始めたのです。そして……。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


 三つの宝玉は目もくらむ光を放ち、その光は大陸中を覆いました。王女の悲しみの氷を溶かし、ずっと地下に眠っていた種たちは、芽を出し、そして花を咲かせていきます。四季の大陸から失われていた、最後の季節、春が、ようやくこの地に戻ってきたのです。


「……王……」

「季節が巡るように、我らの運命もめぐっていく。掟も変えていけばいいのだ。……これからは、そなた二人がこの『春の王国』の王と女王だ」

「ですが、あなたは……」


 あなたはきびすを返すと、小屋の外へ出ました。なんと美しい陽の光でしょうか。それに、からだを包む陽気は、夏の王国のような強い暑さでもなく、秋の王国のようなたそがれた温かさでもありません。生命力に満ちた温かさに、あなたの冒険心は強くくすぐられました。


「わたしは旅に出る。もしかするとまだ、この温かさが届いていない地域があるかもしれん。この大陸中をめぐり、調べ、そのあとは……そうだな、他の大陸にでも渡るとしよう」


 その言葉をあとに、あなたは小屋から去りました。新しい王と王女の旅路に祝福があらんことを祈りながら。そして、これからの冒険の数々に想いを馳せながら……。


HAPPY END!


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