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猫(ギャル)の手も借りたいっ①


 開店前ニ十分前――。


 皿の上に乗ったトーストにマヨネーズを塗り付け、カリカリに焼いたベーコンを2枚、カットしたレタスを3枚、薄切りのトマトを1枚、1番上にちょうど火が通った目玉焼きを乗せる。

 仕上げにほんの少しのバーベキューソースをかけて、最後にトーストで挟んで……。

 小さなプラスチックの楊枝をサンドイッチを通す。

「はい、お待たせっ」

 耕平は完成したサンドイッチを乗せた皿を星川さんの前にとん、と置く。

 サンドイッチの横には少し形が悪いけれどもフライドポテトも多めに添えられていた。

 昨日の残りの生野菜を消費するようなメニューになってしまったけれども、あまり贅沢なものを使うと祖父に怒られる。これくらいが彼に出せるぎりぎりの工夫だ。

「…………」

 目の前に置かれた皿に目を輝かせていた星川さんは鼻を近づけ、じっくり匂いを嗅いでいたかと思うと。

「……いただきますっ」

 トーストを掴み、大胆にかぶりついた。

 そしてもぐもぐ口を動かしていたかと思うと、機嫌よさそうに目を細め、またかぶりつく。

 時々フライドポテトをつまみ、アイスティーを煽り、またサンドイッチにかぶりつく姿は一心不乱そのものだ。

(おいしそうに食べてくれるよな……)

 正直、店に居つかれてまだちょっと面倒な気はするけれども、それでもやっぱり星川さんは一番のお客さんだ。

 そんなことを思いながら星川さんを見守っていると――。

「おい、そろそろ開店だぞっ」

「ごめんっ、すぐやる! それじゃゆっくりしてね」

 祖父にどやされた耕平は慌てて開店準備を始めるのだった。



(やっぱり、そらのごはん……おいしいな)

 そんなことを考えながら、まおは夢中でサンドイッチを頬張る。

 トーストの焼き具合も、香ばしいベーコンの風味、マヨネーズやトマトの酸味、レタスの青臭さ、すべてが絶妙だ。

 それに、付け合わせのフライドポテトも嬉しい。多分お客さんに出す用の中から形があんまりよくないのを選んだんだろうけど、それでもおいしいことに変わりない。

「ごく……ごくっ、うんっ」

 アイスティーでサンドイッチを流し込んだまおはまたサンドイッチにかぶりつく。

 これはまた作ってもらってもいいかもしれない。

 そんなことを考えながら食べていたとき。


 いつの間にか開店していたのか、ドアベルをガラガラ慣らして人が入ってくる。

 しかも、常連ではない人達がかなりのペースで。

(?)

「じいちゃん、シチュー六つねっ」

「おうっ、すぐ出すからパン用意しとけっ」

 キッチンの中も何やら騒がしい。

 注文を取った耕平も慌ててキッチンに入って何やら忙しく動き回っている。

(???)

 その様子を眺めながら、まおは最後のひと口を食べ終わりアイスティーを煽った。



「耕平、パンやってる間に皿用意しとけっ」

「わかった! 何やってるんだよ、まったくもぅ――」

 厚く切ったバゲットにガーリックバター塗ってオーブンに入れるなり、耕平は慌てて皿を出しに行く――今日は相当使うことになるだろうから全部出しておこう。

「何で言っちゃうんだよ、もぅ!」


 普段よりも入店が多いのは、ただひとつ――祖父が特製シチューを仕込んだからだ。

 手がかかるのであまり作らないのだが、その味は評判で、この店の幻の一品扱いになっていた。

 今回も祖父が作りそれだけならよかったのだが、どうやらそれを商工会か何かの飲み会で口を滑らせてしまったらしく、一気に広まったらしい。

 祖父は覚えていないとのことだが、恐らくそんなところだろう。


 本来なら客が来てくれるのはいいことだ。

 けれどもシチューも毎日たくさん出すわけではないし、常連になってくれる人は非常に少ない――そんな人はもう常連だ。

 要はシチューだけ食べに来て、あとはさっぱり。

 逆に常連が遠ざかることもあるし、あまり歓迎すべき状態とも言えなかった。


「耕平、パン焼けてるぞ! 次にシチュー以外の二番目の伝票な」

「はいよ!」

 オーブンに急いだ耕平はパンを取り出し、小皿に乗せてカウンターにあるシチュー皿の横に置く。

 今度はこれを自分が運んでいかなければならない。

 急ぎ足にキッチンから出たとき、ドアベルがガラガラ鳴った。

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