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猫が三匹寄って猫猫猫しいー③

 翌日の午前中――。

 もう店の片付けも終わったし、営業のための仕入れも終わってしまった。

 特にやることもない耕平がカウンターに肘をついてぼんやりスマホを弄っていると――。

 耕平の部屋から階段を下りてくる足音がする。ひょい、と姿を現したのは先輩を伴た制服姿の文美だった。

「えへへ、どうかな?」

 言って、彼の前でスカートの裾をつまみ、軽く会釈をする。

 先輩がいつも着ているものと同じベージュのボレロに、同じ色のベレー帽、アクセントの赤いリボン。それにいつものふたつ縛りではなくてゆるくまとめた髪を肩に垂らしている。

「お、なかなか似合うんじゃないか」

 生意気盛りの子猫が手入れされていいところの猫になったみたいだ。

 先輩みたいな生粋のお嬢様らしさはなくても、おめかしした姿は兄としても可愛く見えるものだ。そんな耕平の言葉が嬉しかったのだろう。

「やっぱりこの制服可愛いよねぇ、えへへ」

 文美は自分の姿を確かめるように、振り返ったり、くるくる回ったりしている。

「ほら、耕平も言ってるし、文美ちゃんはこういうほうがいいのよ」

 そして先輩も何やら満足したようにしきりに頷いている。きっと自分が着せてやった制服が決まっていて嬉しいのだろう。

「まぁ、可愛いけど……」

 しかしそうなると楽しくなさそうなのは星川さんだ。不服そうにしながらもスマホで写真を撮っている。

「うん、撮って、撮って♪ お兄ちゃんはお茶淹れてっ、可愛い写真撮るから!」

 どうやらお嬢様らしい写真を撮るために『小道具』が必要なのだろう。

 あれやこれやと楽しそうな妹の注文に苦笑しながら、いろいろ用意してやるのだった。


 それからしばらくして、存分に先輩の制服を楽しんだあと――。

 今度は星川さんを連れて耕平の部屋に上がっていった文美が戻ってくる。

 そして現れた妹の格好はというと。

「……おぉっ?」

 制服を着崩した小さなギャルだった。

 星川さんに手入れしてもらったのだろう。ストレートだった髪は緩くウェーブがかかり、ヘアピンをつけている。いつもよりほんの少し濃いメイクに、ブラウスは袖がまくられ、胸元がはだけられ、スカートはかなり短い。

 そしてピースのようなわけのわからないポーズでウインクまでする。

「んふふ、結構決まってるでしょ?」

「…………」

「ちょっと、文美ちゃんになんて格好させてるのよっ、あんたみたいな不良と一緒にしないでくれる?」

「はぁ? どう見たってこっちのほうが似合ってるでしょ。そらもそう思うよね?」

「えーと、まぁ……」

 誇らしげに腕を組む星川さんに水を向けられ、耕平は言葉に詰まる。

 星川さんと一緒にいて見慣れているものの、星川さんに慣れただけで、やはりギャルは苦手だ。文美だって可愛いには可愛いが、あまりギャルにはなってほしくないというか……。

 そんな耕平に星川さんが探るような目を向けてくる。

「そら、もしかしてギャル嫌い?」

「そんなことないよっ、文美も可愛いぞ」

「あんた、どっちの味方よっ? 文美ちゃんが不良になってもいいのっ?」

「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」

 ふたりに詰め寄られ、耕平は堪えに窮する。

 耕平としては星川さんも先輩も大事な『お客さん』だし、どちらかに与するわけにはいかなかった――文美がギャルになってしまうのは少し困るが。

 とはいえ、文美は両方の制服を着て楽しんでいるだけだろう。重大な進路の決断をするような時期でもない。

「んー、やっぱりブレザーもいいなぁ……まおちゃんも一緒に写真撮ろっ」

 苦し紛れの言葉とはいえ兄にほめられて嬉しかったのだろう。自分のスマホを取り出した文美は星川さんと一緒に写真を撮り始める。

(やれやれ……)

 ふたりが妹に構ってくれるのは助かるけれども、なかなか気を遣う。

 渋い顔の先輩と一緒に、文美と星川さんが写真を撮るのをのんびり見守るのだった。

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