猫が三匹寄って猫猫猫しいー②
食後――。
「……えっ、みやこちゃん、ほんとにお嬢様じゃん! あそこってお嬢様ばっかりなんでしょ?」
「そんなのじゃないわよ。試験に受かれば誰でも入れる学校だし、難関校でもないし」
三人はカウンターに頬杖を突き、お菓子をつまみながらああでもないこうでもないと話している。
やかましいわけではないが、とにかくおしゃべりが止まらないのだ。話のわからない耕平はぼんやりと聞き流すだけになっていた。
「じゃ、宮古ちゃんあの制服着てるんだ……いいなぁ、ボレロ……ベレー帽もあるし」
「文美ちゃんに似合うんじゃない? まだ中1だし、しっかり勉強すれば推薦でもいけるでしょ」
「えー、でも、お高いんでしょ? うち、あんまりお金ないからなぁ……」
「それくらいはお兄ちゃんに出してもらいなさいよ。文美ちゃんが高校生になるくらいにはお店継いでしっかり稼いでるから。そうよね?」
「ぁ、いや……そうですね。ははは」
突然水を向けられた耕平は食器を洗いながらもごもご答える。
実際のところ、数年後に店を継いでいるなんてイメージはまったくわかない。それどころか、その前に祖父が店を畳んでしまう可能性だってあるのだ。
しかしふたりの中ではもう話が進んでいるらしく――。
「ほら、耕平もこう言ってるじゃない」
「うーん、お兄ちゃんがお金出してくれるならいいかも……」
「今度来なさいよ。案内してあげるから――」
「ちょっと待ってよ!」
黙々とお菓子を食べていた星川さんがずいっと身を乗り出してくる。
「制服で学校決めるとかおかしいでしょ。そんなお高い学校じゃなくてうちに来なよ」
「まおちゃんの高校かぁ……でも、わたしが入る頃にはお兄ちゃん卒業してるしなぁ」
「文美にはブレザーとかのほうが似合うからっ」
「んー、確かにブレザーも捨てがたいよねぇ」
そんなことを話していると、今度は先輩がぐいっと身を乗り出してくる。
「駄目よ、文美ちゃん。まおの言うこと聞いたら。ギャルにされちゃうじゃない。文美ちゃんみたいないい子はまおみたいになっちゃだめよ」
「いいじゃんっ、そらだってギャル嫌いじゃないでしょ?」
「えっ、あっ、その……うん、嫌いっていうわけじゃ……」
星川さんにじっと見据えられ、耕平はしどろもどろになってしまう。
正直、ギャルは今でもかなり苦手だ。ただ、星川さんに慣れただけであって、やっぱり野良猫みたいな雰囲気は近寄りがたい。
そんな耕平の言葉に勢いづいた星川さんは、文美を抱き寄せて頭をくしゃくしゃと撫で回す。
「ほら、そらも言ってるし、明日私の制服持ってきて着せてあげるっ、絶対文美に似合うから」
「だめよ、文美ちゃんはこんなギャルになったら! あたしが制服持ってきてあげるからそっち着てみなさい」
今度は先輩が星川さんを押しのけて文美を引き寄せる。
「えへへっ、じゃあ、どっちも着てみよっかな」
そんなふたりの間でもみくちゃにされ、文美はくすぐったそうにしている。
どうやら三人とも打ち解けてくれたようだ――こうしていると姉妹のようにさえ見える。それはもちろんふたりが文美を「妹」のように可愛がってくれたからであって――。
(明後日は何作ろうかな……)
キッチンの中のカレンダーに目をやれば、そろそろ文美が家に戻る日が近づいている。
最終日はふたりへのお礼も兼ねて三人の好きなものをたくさん食べてもらおう。そんなことを考えながら耕平はカレンダーを見つめていた。




