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シリーズ最強の敵現る


「ケーブル……よし、着替え……よし、お風呂セット……よし、宿題……よし」

 大きな鞄に詰め込んだそれらをひとつひとつ指差し確認していく。

 一週間分の荷物だから少し多いけど、これくらいはもうひとりで運べる。それに、どうせ駅まで迎えにきてもらえるし。

「うん……全部ある」

 あとは部屋の姿見で身だしなみの確認だ。

 少し大きめのTシャツに、ざっくりしたデニムのハーフパンツ、くるぶしまでの靴下に、日差しを避けるためのつばの広いキャップ。

 ふたつ縛りにした髪はしばらく伸ばしていたし、少し大人っぽくなった気もする。

 振り返ったり、くるりと回ったり、何度も自身の姿を確認したのち。

「うん、よしっ……よいしょっ!」

 荷物を詰め込んだ鞄を気合を入れて持ち上げ、よろよろと部屋を出て、危なっかしい足取りで階段を降り、玄関に向かう。

 そして履き慣れたスニーカーにつま先を突っ込んでいると。

「文美、お兄ちゃんに連絡した?」

 居間からぱたぱた足音がリモコンとお菓子の袋を抱えた母がとことこやってくる。お父さんが仕事で出かけている時間にこうしてぐうたらしているのだ。

 そんな母に溜息が出てくる。

「うん、今日行くって言ってあるし、電話すればすぐ迎えに来るって」

「あんまり迷惑かけるんじゃないわよ? 困ったことがあったら最初におじいちゃんに相談しなさい」

「わかった」

 適当に応えながら、スニーカーに足を突っ込み、踵を叩いて慣らす。

 その間も母の質問責めは続く。

「おじいちゃんにおみやげは?」

「入ってる」

「電車代は?」

「チャージした」

「お兄ちゃんが迎えに来てくれなかったらお店までの道は?」

「わかる」

「お店の電話番号は?」

「登録してある」

「急行じゃなくて各駅に乗らないとだめだからね?」

「わかってる……」

「ちゃんとティッシュとハンカチ――」

「もう、大丈夫だってば! 子供じゃないんだからっ……行ってきます!」

 母の質問責めを振り切った少女はキャップをかぶり直し、大きな鞄を肩にかけ、よろよろと日差しの中に出ていくのだった。

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