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今日はみんなが勝者にー①


 午前最後の英語のテストが終わり――。

 残りは昼食のあとの数学だけだ。

「まおー、どうだった?」

「一応大丈夫っぽい。全部埋めたし」

「は? マジで英語の空欄のやつとかわかったの?」

「合ってるかはわからないけど、全部書いた」

「おいおい、どうしちゃったんだよ、まお」

 教室の隅に集まった友人達とああでもないこうでもないと言い合いながら、まおは机の横にかけていた紙袋を取る。午前はずっとこのお弁当のことを考えて頑張ってきたのだ。

 中に入っていたのは大きな『☆』マークのついた平べったい紙箱――これは私用できっと宮古用もあるのだ――と丸いプラスチックの容器。フォークと紙ナプキンも入っていた。

 そっと紙の蓋を開けてみると。


(カツサンドだ……!)

 綺麗に切られたカツサンドの断面がずらっと並んでいた。

 横には付け合わせにフライドポテトもついている。

 そして丸い容器の蓋を取ると何かの葉野菜のソテー。

「っていうか、まおのお昼ごはん豪華すぎじゃない?」

「これね、そらに作ってもらった」

「は? うついが作ったの?」

 驚く友人達に自分でもにやけてしまうのがわかる。


 さっそくカツサンドを口に詰め込みながら、その合間に友人達に経緯を話すのだった。

 宮古に相談したこと。

 ずっとお店で勉強していたこと。

 結局そらにバレて頑張ったごほうびにお弁当を作ってもらったこと。

 宮古にも同じお弁当を渡したこと。

 カツサンドを食べる合間に話すまおを見ながら、友人達は何やら考え込んでいる。

「なんか、ここまで完全に餌付けしてるなら立派だわ……」

「あいつの前世は聖人かよっ」

「いや、まおを餌付けして悪いことを考えてるのかもしれん」

 友人達が何やら言い合っているのを聞きながら、まおは夢中でカツサンドを頬張る。

「ほんとおいしそうに食べるよね、まおは」

「ん……っ、だっておいしいもん……んぐっ」

「よかったな、これからもたくさん食べさせてもらうんだぞ」

「ん……っ!」

 カツにはソースがしみ込んでいるし、パンとカツの間のキャベツともよく合っている。マスタードはちょっと辛いけど、傷まないようにしてくれているのがわかった。

 噛むたびにぎゅっ、ぎゅっ、とカツのおいしさ、ソースが混じるし、キャベツと一緒に思いっきりほおばる楽しさもあって、ついつい口に詰め込んでしまう。

 付け合わせのしょっぱいフライドポテトもカツサンドと絶妙な組合せだ。


「まお先生、付け合わせの野菜はどうですかな?」

「んっ、カレー味のほうれん草……結構おいしい」

「そっか、あいつはほんとに豆だなー」


 口にものを入れたまま喋らないよう気をつけながら、カツサンド、フライドポテト、野菜のソテーをバランスよく食べていく。

(うん、これで数学も頑張れそう……絶対夏休みはそらのお店に通うんだからっ)

 一番苦手な教科だけど、そらのお弁当で元気が出たし、宮古のノートもあるし、何とかなる。食べながらもう追試に合格した気分になっていた。



 その少し前の時間――。

(んふふっ、なかなか悪くないおやつね……飲み物も買ったし、部屋でゆっくり食べましょ)

 こっそり帰宅した宮古は外出したのがバレないよう、片手にスニーカー、片手に『おみやげ』を手に、ほくそ笑みながらひたひたと屋敷の階段を上がっていく。

(中身は何かしら……?)

 帰りながらも何度開けてしまおうかと思ったことか。

 平たい紙箱に『ミ』と大きく書かれているとうことは自分用に違いない。それだけでまた期待が高まり、にやつきながら階段を上がりきったとき。

 人の気配に反射的に固まったとき、ぎっ、と姉の部屋の扉が開いた。

「あら、こっそり出かけたと思ったらおみやげ持ってお帰り?」

「あんたねぇ、もうちょっとバレないように出かけなさいよ。誤魔化すの大変だったのよ」

 ふたりの姉は呆れた顔だ。が、妹の悪事に好奇心を隠しきれていないのがありありと伝わってきた。

「あぅ……ごめんなさい」

 安全な場所でこっそり食べるつもりだったのに。

 結局姉ふたりに部屋に引きずり込まれてしまうのだった。


 それから――。

「お、なかなかおいしいじゃない」

「そうね。あんまり辛くしてないし、宮古に合わせてあるのかしら」

「そうでしょっ? これ、耕平があたしのために作ったのっ」

 すべてを白状した宮古はカツサンドをおすそ分けしながらも、夢中でそれをを頬張っていた。

 甘めのソースはあたし好みだし、マスタードも少なめだから食べやすい。キャベツの千切りとカツの組み合わせも甘いソースだから抜群だ。

「フライドポテト、結構好きなのよね」

「ちゃんとバランス考えて野菜もあるし、うん、おいしいわ」

「ちょっと、あんまり食べないでっ」

 姉がフライドポテトをつまむのを制止しつつ、やっぱり宮古の手は止まらない。

 おいしいのはもちろん、耕平があたしのために作ってくれたのだ。それが嬉しくて、またカツサンドがおいしくなってしまう。

 それに、姉が耕平のことを認めてくれるのも嬉しかった。

「それにしても悪い男の子ねー、こんなことされた宮古が夢中になっちゃうじゃない」

「でも、ギャル子ちゃんにも作ってあげたんでしょ? 今日は引き分けかな」

「まぁ……あたしのほうがおいしく作ってもらってるはずだけど」

 あたしのほうがまおのために頑張っているんだから、耕平もわかっているはず。

 もちろんまおのプライドを守るために手伝ったのもあるけど、まおが合格すればあたしの株が上がるし、失敗すれば耕平の作るものを独占できる。まおには悪いけど、どちらにしろあたしの勝ちだ。

 そんなことを考えながら買ってきたペットボトルのお茶を煽り、またカツサンドを頬張るのだった。

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