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そらのお弁当ー①


 翌日の午後――。

 既に夏休みに入って数日。

 学校があるときは毎日が忙しかったのに、数日でもうやることがなくなってしまった。

 耕平はキッチンを整理しながら、階上の様子を窺っていた。

(何やってるんだろ……)

 今日も変わらず、星川さんと先輩は部屋で何やらやっている。

 祖父は放っておけとはいうものの、やはり気になって仕方なかった。

 それよりも、ここ数日二人が自分の作ったものを食べてくれないというのは一大事だ。もしかして飽きてしまったんだろうか。不安な気持ちが渦巻き始めたとき。

「耕平っ、お茶とコーヒーっ! 置いといて!」

 上から先輩の厳しい声がしてふすまがぴしゃっ、と締められる音。

「はーい! 今持っていきますよ」

 こうなったら少し探りを入れてみよう――もちろんルール違反にならないように。

 耕平はお湯を沸かしつつ、こそこそキッチンの冷蔵庫を漁り始めるのだった。


 しばらくして――。

 お盆にお茶とコーヒー、即席のおやつ――火を使わずに作ったサンドイッチ――を乗せた耕平はそろそろ階段を上がっていく。

 そして言われた通りにふすまの前にそれを置き。

「置いておきますよ。今日はおやつもつけておきました」

 巣にこもっている動物を餌で呼び出すような声音でふすま越しに話しかける。

 きっとこれで二人とも誘い出されて――。

 次の瞬間、さっ、とふすまが開かれる。

「…………」

 先輩がいつになく厳しい顔でこちらを見ていた。

「飲み物だけで結構よ!」

「その、お腹いっぱいにならない量ですし……」

「おやつ……!」

 先輩の背後では頭をかきむしっていたのか、髪をぼさぼさにした星川さんがお盆の上のサンドイッチを見て腰を浮かせていたが。

「今まおは大事なところなの! 甘やかさないでっ!」

 先輩はアイスティーのグラスとコーヒーのマグカップを取り上げ、ぴしゃっとふすまを締めてしまった。

 床に置いたお盆にはサンドイッチの皿が二つ残される。

「…………」

 先輩の剣幕に呆然としていた耕平だったが、やがてお盆を持ってそろそろ階段を降り始める。

 が、一瞬ではあったものの室内の様子は目にできた。

 頭をぼさぼさにした星川さん、ちゃぶ台の上にあった教科書やノート……。

(赤点だな、あれは……)

 以前少し話したとき適当に回答していたし何となくそんな気はしていたが、きっと先輩に泣きついて勉強を教えてもらっているのだろう。

 それなら今までの二人の妙な様子も納得がいく。最近食べてくれなかったのも、きっと星川さんが寝ないようにだろう。

(でも、星川さん、そんなタイプだったかな?)

 星川さん含めギャル連中は前回も赤点だったし、補習を受ければ済むはずなのに。何故

必死になって追試を受けようとしているのかは謎だった。

(うーん……)

 祖父の言う通り、放っておいた方がいいんだろうか。

 そんなことを考えながら階下に降りていった。

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