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慢心ギャルを苛む


(どうしよう……)

 終業式前の最後の英語の授業――。

 教室全体が既に夏休みムードで浮かれる中、席に戻ったまおは返された答案用紙を呆然と見つめていた。どう考えても赤点だ。

 追試を受けて、だめなら補習を受けて、あとは最終日にほぼ答えがわかっている小テストで温情裁定を受けて、少し遅い夏休みスタート。

 今まではそれでよかったけど。

(そんなことしてたらそらに会う時間がなくなっちゃうじゃん!)

 元々スケジュールに縛られるのが嫌なまおにとって補習自体が億劫だ。

 しかも、その間に宮古がお店に行って、そらとふたりだけになるかもしれない。

 夏休みが少なくなるうえに、そらを取られるかもしれないなんて……。

(みんなに――)

 助けを求めようと友人達を見ると。

「どうだったー?」

「なはは、話にならないわ、こりゃ」

「あたしが一番点数高いじゃん!」

「2点だけじゃんか」

(……だよね)

 いつもと変わらず、答案を見せ合って笑っている友人達を見てまおはげっそりする。今までなら自分もあそこに加わっていたのに。

「星川さん、どうだった?」

「っ!」

 隣の声にまおは慌てて答案を隠す。こんなひどい点数をそらに見られるわけにはいかない。

 代わりに答案をくしゃくしゃに丸めて鞄に詰め込みながら、曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。

「うーん……まぁまぁかな」

「そっかぁ、俺はぎりぎりだったよ。まぁ、赤点じゃなかったらいいよね」

「そうだね……」

 まさかこんなことになってしまうなんて。答案が返ってくるまで考えもしなかった。

 せめて前日にもう少しだけでも……テスト時間中に適当に書いて寝たりせずにもう少し真面目に考えるだけでも違ったかもしれない。

「まおー、どうだったよ?」

「…………」

 椅子に力なく寄りかかるまおは友人達の言葉にも耳を貸さず、やがて机に突っ伏す。

 頭の中でずっと『どうしよう』だけがぐるぐる回っていた。


 そして放課後――。

 昼前に授業が終わり同級生達が帰っていく中、ずっと突っ伏していたまおはむくりと起き上がる。隣はもう帰ったのか鞄もなかった。

 その席を見てまおは溜息をついてスマホを取り出す。

(しょうがないか……)

 気が進まないけど、もうこれしか手がない。夏休みとそらを奪われないためにはなりふり構っていられないのだ。

 そしてある連絡先にメッセージを送り始めた。

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