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餌を与える者の責任ー①


 それから数日後。もう終業式も近く、夏本番に差しかかった頃――。

(これと、これと……こっちもか、まだ結構あるぞ……)

 さらに蒸し暑い体育倉庫で、額の汗をぬぐいながら耕平はひたすら備品を数え、書類と照らし合わせていた。

 ボールやだけでなく、旗、グラウンドに置くマーカー、ラインパウダーの袋……。

 委員会の仕事だし、こうしてこつこつやる作業は嫌いではないが。

(どうしよう、二人とも待ってるよな)

 そろそろ二人とも店に来る頃だ。

 作業を終わらせて急いで戻り、身支度を整えて、それから店の仕事をしながらだとかなり遅くなってしまいそうだ。

 店は祖父が開けるが、二人の世話はしてくれない。例え他に誰もいなくても、せいぜい店に入れて水を出して、少し話し相手になる程度だ。

 とはいえ、それも当然だ。二人は『お店のお客さん』ではなく『耕平の客』なのだから、自分が責任を持たなければならない。


(うーん……)

 それに、二人はお店にとってちょっと難しい存在だ。

 毎日のようにやってきて、耕平が作るお店のメニューとは違うものを食べて、お金も払わずに帰っていく。常連客は理解してくれているけれども将来のために我慢してくれているだけだし、初めてきた人は妙に思うだろう。

 だからこそ開店前後の来店が少ない時間に来てもらっているのだが、今日はもうそんな時間を過ぎている。

 となると心配なのは――。

(おとなしく待ってくれてるといいんだけど……うーん)

 星川さんはあまり積極的に人に関わろうとしないし、先輩も気位が高いから常連のおじさん連中には絡まないだろう。でも、二人とも空腹になったらいつもと違うことをするかもしれないし、最近妙に衝突しがちというか……。

(……考えてもしょうがないっ、急がなきゃ)

 気を取り直した耕平は先ほどより急いで備品を数え始めるのだった。



 スマホを取り出したまおはメッセージが届いていないのを確認し、また鞄に放り込む。そろそろ帰ってきてもいい頃なのに、連絡もない。

「耕平、まだだって?」

「わかんない。ずっと連絡ないから」

「そう。委員会の仕事か何かだっけ」

 隣に座る宮古は退屈そうにグラスの水を煽り、頬杖を突く。そしてまおと同じように頬杖を突き、欠伸を嚙み殺した。

 開店して少し経ったせいか、店内には以前も見たことのある男性が雑誌を広げてのんびりコーヒーを飲んでいた。いつもはお客さんが来る前に帰ることもあって、不思議な感じだ。

 と、カウンターから伸びてきた手がピッチャーからグラスに水を注いでくれる。

「どうだい、耕平はまだかかりそう?」

「連絡ないから多分……」

「あんまり遅くなりそうだったらまた明日にするかい?」

 隣の宮古をちらりと見たまおは首を振る。

「もう少し待ちます」

「……私も待つわ」

 そんな二人を見て祖父は困ったように笑い。

「そうか。お客さんを待たせるなんて、あいつにも困ったもんだな」

 そしてまたキッチンで何やらやり始めた。

 そんな様子をぼんやり眺めながら、まおはちらりと横を見る。

「宮古はもう帰ったら? おうちがうるさいんでしょ」

「余計なお世話よ。あんたこそもう帰れば? 学校で会えるじゃない」

 まおに取り合わず、つん、と顔を背ける宮古。かなり強情な感じが伝わってきた。

「ふんっ、なら勝手にすれば? 私は帰らないけどっ」

 私が帰ったあとにそらがきたら、宮古に食べ物をひとり占めされてしまう。だから帰るわけにはいかない。宮古も絶対同じことを考えている。だから我慢競べだ。

 カウンターの隅のスツールに腰かける二人は、頬杖を突き、時折欠伸をし、根気よく少年の帰りを待ち続けた。

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