野良猫の置き土産
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教室のざわめきに目を覚ました耕平はむくりと頭を上げ、あたりを見回す。
いつの間にかホームルームが終わっていたのか、同級生は帰ったり、部活に向かったり、自分の席でだらだらしたり、思い思いに過ごしていた。
「…………」
いつから寝てしまったのか覚えていない。確か最後の国語の授業の途中までは起きていた気がするのだが……。
既に綺麗にされた黒板をぼんやり見つめていたとき。
机の隅――突っ伏していたときに空いていたスペース――に置いてあるものが目についた。紙パックのジュースと、小さなお菓子の箱も――クリームを挟んだビスケットのやつだ。
(……星川さんか、最近よく置いていってくれるよな……)
休み時間や放課後、寝ている間にいつの間にかこうしていろいろなものが置かれている――大半はお菓子やジュースだ。
テスト前なのにノートを貸してくれようとするのを断ったり、テスト範囲を教えてくれようとしているのを断ったり、自分が意地を張っているだけなのに。それでも邪魔にならないように助けてくれる。そんな気遣いがありがたかった。
「いただきます」
ぱちんと手を合わせた耕平は紙パックのジュースにストローをさし、ひと口飲む。
普段あまり飲まない野菜ジュースだが、今は本当に栄養を取っている感じがする。それにビスケットも小腹が空いたあたりでちょうどよかった。
(頑張ろう……無理しないように)
先輩だけでなく、星川さんだってきっと自分の作るものを楽しみにしてくれている。
でも、どんなに腕が上がってもテストの結果が悪かったり、お店の仕事に支障が出たら続けられない。
これからも毎日、ずっとふたりに料理を作れるように頑張らなければ。
「ふぁ……」
今日は店も休みだし、涼しい図書室で勉強してから帰ろう。そんなことを考えながらまたジュースをひと口吸うのだった。




