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猫(ギャル)の帰還ー②


(……よしっ)

 フライパンを持つ手を軽く叩いてオムレツを浮かせた耕平は、すばやくチキンライスの上にそれを乗せる。練習を続けていたこともあって、前よりもうまくできるようになった感覚はあった。

 そしてオムライスの上にいつものちょっといいケチャップをかけて――。

「はい、お待たせ。スプーンはそこのを使って――」

「いただきますっ」

 カウンター越しに星川さんの前に皿を置くと、既にスプーンを持って待ち構えていた。

 そして、早速食べ始める。

「…………」

 しばらく無言で口を動かしていた星川さんは、やがて幸せそうに目を細める。

 見ているこちらまで嬉しくなる顔だ。

 そんな星川さんを眺めていると。

「ちょっと、早くあたしにも作りなさいよっ、何でまおの方が先なの?」

 先輩のうろんげな視線に気づき、耕平はハッと我に返る。

「すいません、すぐ作りますねっ」

「それより、さっきから何かまおに甘くない?」

「い、いえ、そんなことないですよ。一人ずつしか作れないんで……」

 確かに星川さんを少し優遇しすぎたかもしれない。

 先輩だって彼にとっては大事なお客さんなのは同じだ。慌てて二つめのオムライスを作り始めるのだった。



 やがて――。

「……うん、おいしい」

 口に入れたオムライスをしばらく味わっていた宮古は思わず口にしていた。

 正直、あまり期待はしていなかったけれども、想像以上にうまくできている。

 中のチキンライスは水っぽくなく、ぱさぱさでもなく、卵の火の通り具合も自分好みだ。極端にぐずぐずしていないのがいい。

 たっぷり使われているケチャップも安物でないのがわかる。

「そうですか、お口に合ってよかったです」

「なかなかいいわよ」

 気がつけば二口目、三口目、とぱくぱく食べ始めていた。

 と、先に食べ始めていたまおがコップの水をぐいぐい煽り、たんっ、と置く。

「ごちそうさま。おいしかった」

「そっか、練習しておいたよかった」

 言いながら、お皿を下げた耕平は代わりにまおに何かの箱を手渡す。

 どうやら弁当箱らしい。

「こっちもおいしかったよ。今度また交換しようね」

「…………」

 弁当箱を受け取ったまおはしばらく呆けていたかと思うと。

「~~~~~っん」

 それをきゅっ、と胸に抱き、喉の奥で何やら声にならない声を上げて微かに頷く。その顔もわずかに上気しているようだった。

 それをちらちら見ていた宮古は口の端で笑みを浮かべる。

(……はん、そういうわけね)

 まだこの小娘のことも、カウンターの奥にいる少年のことも実はほとんど知らないが、それでも直感した。

 この前初めてお店に来たときからなんとなくわかっていたが、キッチンで料理をしている耕平を見つめる視線、料理を食べているときの表情、話しかけられたときの声のトーン。どうもおかしいと思っていたけど……。

 しかも、どうやら耕平は気づいていないらしい。

(……ちょっと面白いじゃない)

 宮古にとってはまだ他人の二人だ。しかし、箱入り娘――しかも幼い頃からずっと女子校だった――彼女にとって、同年代の男女の恋愛模様はどうしても気になってしまう。

 それに、この生意気な小娘が独り相撲するの姿もなかなか見ものだ。食事も悪くないし、もう少し通ってやるのもいいかもしれない。

 そんなことを考えながら、宮古はオムライスを食べ続けた。

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