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ボリューム×可愛さ=破壊力


「どうかな?」

 夕方の教室の一角――。

 机の上に乗っているのは、まおが何やら描いた一枚のルーズリーフ。

 それを囲んだ友人達はしばらくそれを検分していたかと思うと。

「まおー、せっかくなんだからもうちょっと色気出せよ……食欲で考えただろ」

「うん、これはさすがに可愛くなさすぎかな……」

「うついのほうがまだ可愛く作るよ、これは」

「しょうがないじゃん、難しいんだから……」

 友人達に散々言われしょぼくれるまお。

 彼女達が囲んでいるのはお弁当をどう詰めるかのレイアウトだ。

 いくらおいしく作れても見た目が可愛くなければ効果がない。そう言われ、まおなりに頑張って考えたのだが。

「弁当箱のサイズは……まぁ、これでいいか。男子だし」

「こっちのおかずはもうちょっとこうやって詰めた方がよくね?」

「……それだとこっちのおかずが詰められなくなっちゃう」

 友人がペンで描いたおかずの配置をまおが描き直しては。

「だから、何で詰め込む前提なんだよ? ボリューム以外も考えろよっ、せめてこれくらいにしろって」

「そしたらこっちの野菜が減っちゃうよ、さすがにバランス悪くない?」

「だから、そこはこの『絵』でカバーするわけですよ」

 友人達がさらにそれを描き直す。

 しかしまおにも譲れないものがあり――。

「これはたくさん食べてほしいから、一個も減らさない」

「……え~? まおも頑固だなぁ、じゃあ、これを『絵』の周りに置けば? そうするといい感じに組み合わせられるでしょ」

「それやるとお米の部分が変になるだろ。これをこっちに置けばバランスもいいじゃん」

 まおの食欲重視の配置と友人達の可愛さ重視の主張がああでもないこうでもないとぶつかり合ったのち――。


 ――――♪

 とうとう最終下校を告げるチャイムが鳴り始める。

 夏の長い日も暮れかけていた。

 机を囲んで椅子にこしかけていた友人達は背もたれに寄りかかったり、机に突っ伏したり、みなぐったりしている。

「まぁ、こんなもんか……」

「そうだね……これなら全部入るし、結構可愛いし……」

「これより破壊力のある弁当はさすがにうついでも作れないだろ……」

 みんなでああでもないこうでもないと描き散らしたルーズリーフはもうぼろぼろだ。

 ちゃんとボリュームも可愛さもあるし、何よりもまおのために工夫してくれたのだ。

「みんな、ありがと……これで作る」

 ルーズリーフを手にしたまおはそれをじっと眺める。

 実のところ、まお自身はあの先輩がどうこうという気持ちはない――一回しか会っていないのだから。それでも、あの人が現れてから今まで『自分だけ』だったものが脅かされている感覚は強烈だった。

 自分だけが座っていた席、自分だけが知っているそらの料理の味、自分だけが知っているそらが料理を作るときの顔……。

 このお弁当があればきっとそれを取り戻せるに違いない。

「ここからが勝負だぞ」

「ん……」

「何かあったらアタシらに聞くんだよ。失敗したらちゃんと作り直すこと」

「ん、わかった」

「うまくできたからってつまみ食いしちゃだめだからな」

「……ん」

 友人達はまおの頭をくしゃくしゃ撫で、やがて帰り支度を始める。

 彼女達の言う通り、ここからは自分ひとりでやらなければならないのだ――そうでなければ作る意味がない。

 これから家で簡単な下ごしらえをして、明日の朝少し早く起きて完成させる。

「…………」

 うまくできなかったら……という不安で足がすくみそうなのに、早く帰って作りたいという居ても立ってもいられない高揚感も同居している。それらが相まった妙な感覚のまま、まおはルーズリーフをじっと見つめていた。


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