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東雲宮古は甘いものに逆らえない④


「星川さんも甘いものにする? 昨日フレンチトースト仕込んでおいたんだ」

「ん」

 誰かわからない子が座っている隣の席に腰を下ろし、耕平が出してくれたグラスの水をひと息に煽る。

「…………」

 耕平がキッチンの中で動き回る様をぼんやりと眺める。

 隣ではかちゃかちゃと控えめにナイフとフォークを動かす音、ときおりグラスを煽ってはことりと置く音がしていた。

(何だろ、変な感じ……)

 店に入ってきたときからおかしいと思ったのだ。

 いい匂いがするし、知らない人間が私の席に座っているし、その子が食べる様子をそらも見守っていた――もう少し早く来れば私のほうが先だったのに。

 自分はその隣で他人事のように座っている。

「…………」

 頬杖を突いたまま、まおは隣の少女をちらちら確認する。

 制服を見てすぐにわかった――いいところの子だ。ナイフとフォークを使う様子も慣れていて、行儀がいいのもわかる。それでも、そらの作ったフレンチトーストに夢中になっているのもわかった。

(だって、そらの料理、おいしいもん)

 おじいちゃんには敵わないかもしれないけど、それでもまおにとっては一番だ。だからそらの料理が誰かにほめられればやっぱり嬉しいし、時々他のお客さんにほめられたりもしている。何も変わらないはずなのに。

(もうちょっと早く来ればよかったな……)

 そうすれば全部私の方が先だったのに。

 他のお客さんが先でもいいけど、やっぱり自分が一番でないと――。

 そのとき、熱したフライパンにバターが落とされるじゅっ、という音。直後、香ばしい匂いがまおの鼻をくすぐった。

(ま、いいか)

 途端、今までの思考が食欲で塗り替えられていく。

 隣の子よりもごはんの方が大事だ。目の前でそらが私のために料理を作ってくれているのだから、ただ待っていればいい――いつも通り。

 またグラスの水を煽ったまおは彼が作る様子をそわそわと見守るのだった。


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