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東雲宮古は甘いものに逆らえない①


 週明け――。

 6月も終盤となり、そろそろ7月にも差しかかっている。

 どんよりと曇った空は先ほどからぱらぱら降り始めたところだ。

(今日の準備は少なめでいいよな……終わったら奥の整理して……)

 雨なので来客も少ないだろう。下準備は無駄を作らないように、早く終わらせれば在庫の確認もできる。いつも慌てていてできないことをやっておこう。

 それに星川さんも委員会の用事があるとかで遅くなるみたいだし、今日はかなり落ち着いているはずだ。

 小走りにそんなことを考えながら店のそばについたとき。

(あれ?)

 軒先に誰かが佇んでいる。雨脚が強くなってきた空をぼんやりと見上げていた。

(星川さんじゃないか……)

 もしかしたら委員会の用事をサボってきたのかとも思ったが、明らかに別人だ。

 見慣れない制服に、セットになっているのかベレー帽は雨に濡れている。肩にかかるくらいのボブカットの髪も湿っているようだ。

(でも、ちょっと星川さんみたいだよな)

 まったく別人なのに、何となくそんな感じがする。

 星川さんが雨宿りしていたときと同じ、猫が雨宿りしているような。でも、この人は野良猫というよりもいいおうちの猫みたいだ。濡れた髪をわずかに苛立たしげ弄っているところから気位の高さが窺えた。

 そんなことを考えながらも店の前に着くと。

「っ?」

 雨宿りをしていた少女がぴくっ、と反応し警戒するような視線を向けてくる。

 そばに立ってわかったが、かなりの小柄だ。顔立ちも割と幼い感じだし、下級生だろうか。

「な、何よ? 声出すわよっ?」

 身長差のせいでわずかに睨み上げてくるような少女は、ドアの前に立ちふさがっているが、抵抗しようか逃げ出そうか迷っている感じだ。

「ごめん、ここうちの店だから、入らせてもらっていい?」

 耕平が恐る恐る声をかけた途端、少女の警戒が緩み、わずかに気まずそうな表情に変わる。そしてそっと横にどいた。

「ぁ……ごめんなさい。邪魔だったわね」

「別にいいよ。今日はお客さんもそんなに来ないから」

 思ったより素直な子だ。耕平はベルをがらがら鳴らしてドア開けるがそこで考え直して立ち止まる。少女は結構濡れているし、雨もしばらくは止まない予報だ。

「よかったら入って。外だと濡れちゃうでしょ」

「え、でも……」

 少女は耕平の顔と店内をちらちらと見比べたのち。

「じゃ、お邪魔するわ」

 開けてやったドアの隙間から恐る恐る中に入ってくるのだった。


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