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東雲宮古は毛並みがいい


 午前八時前――。

 玄関の姿見の前に立った少女はくるりと回り、身だしなみを確認する。

「…………」

 よく手入れされ、ふわっとしたボブカットは校則に従った長さ。

 紺色のボレロが可愛いという評判の制服だけど、これが着たかったわけではなくて、この学校しか許されなかっただけ。

 同じく紺色のスカートは校則より少し短いけど、ぎりぎり許される範囲だし、皺ひとつない。

 最後にベージュのベレー帽を整えて完了だ。

「ま、こんなものね」

 鏡の向こうから見つめ返してくる少し幼い顔立ちと、くりくりとした瞳。

 年齢の割に子供っぽく見られるこの顔も体型もあまり好きではなかったが、折り合いをつけていくしかない。

「では、行ってきます」

 誰もいない家の奥に声をかけ、少女が玄関の重厚なドアについたレバーに手をかけたとき、ぱたぱたと忙しそうな足音がやってくる。

「お嬢様っ、今日は傘をお持ちになった方が――」

「いらない。降水確率は50%」

「それならなおさらお持ちにならないとっ」

「50%ってことは降るか降らないか五分五分ってことでしょ? それなら私は降らない方に賭けるわっ」

「はぁ、そういうことでは……」

 やってきた中年の女性は何か言いたそうにしていたが、思い直したのかぺこりと頭を下げる。

「行ってらっしゃいませ」

「うん、行ってくるわ」

 そして少女は分厚い玄関ドアを開け、屋敷を出ていくのだった。

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