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星川さんは手を握りたい①


 それから数日後の夕刻――。 

「じゃ、明日の10時ね」

「うん、わかった……」

 星川さんが店のカウンターにぱんっ、と叩きつけたチケットを眺め、耕平はわけがわからないまま答える。

 そして星川さんは早足に店を出て行ってしまった。

(何なんだろ?)

 耕平はカウンターのチケットをまじまじと観察する。

 何やらおどろおどろしいデザインでどうやら人気のホラー映画らしいのだが……。


 話は数分前、食後、そわそわしていた星川さんから突然コレを押しつけられたのだ。

 どうやら友人と一緒に観に行くはずが急な用事で行けなくなり、チケットを無駄にしたくないので耕平と一緒に行きたいらしい。だからお金もいいとのことだ。

 断る理由もなく、店の営業に障りのない時間帯という条件で行くことにしたのだが……。

(星川さん、何か変だったな……)

 そんなことを考えながらぼんやりチケットを見つめていたとき、来店を告げるドアベルがガラガラ鳴る。

 ハッと我に返った耕平はソレをポケットに突っ込み、慌てて接客に向かうのだった。



「よーしよし、よくやったぞ、まお」

「チケットさえ渡せばこっちのもんだっ」

 店を出るなり、まおはいつものファーストフード店で友人達と合流していた。

 そして映画のチケットを渡したことを告げると、まおの頭を撫でたり、ジュースのストローを口に突っ込んだりとそれぞれにねぎらってやる。

 何しろこのすべて彼女たちの差し金なのだ。実際のところまおは状況よくわかっておらず、友人達に頭をくしゃくしゃ撫でられながら、ずるずるストローを鳴らす。

「ほんとにこれでいいのかな」

「大丈夫、大丈夫。あとは明日の準備だけすればいいからっ」

「じゃあ、今からトリミングだ♪ 前に買ったまま着てないワンピあったよな?」

「……アレ? 全然着ないし処分しようと思ってたんだけど……」

 本当に友人達に任せて大丈夫なのだろうか。何だか楽しんでいるフシもあるし……わけのわからないまま友人達を連れて家に向かうのだった。

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