星川さんは手を握りたい①
★
それから数日後の夕刻――。
「じゃ、明日の10時ね」
「うん、わかった……」
星川さんが店のカウンターにぱんっ、と叩きつけたチケットを眺め、耕平はわけがわからないまま答える。
そして星川さんは早足に店を出て行ってしまった。
(何なんだろ?)
耕平はカウンターのチケットをまじまじと観察する。
何やらおどろおどろしいデザインでどうやら人気のホラー映画らしいのだが……。
話は数分前、食後、そわそわしていた星川さんから突然コレを押しつけられたのだ。
どうやら友人と一緒に観に行くはずが急な用事で行けなくなり、チケットを無駄にしたくないので耕平と一緒に行きたいらしい。だからお金もいいとのことだ。
断る理由もなく、店の営業に障りのない時間帯という条件で行くことにしたのだが……。
(星川さん、何か変だったな……)
そんなことを考えながらぼんやりチケットを見つめていたとき、来店を告げるドアベルがガラガラ鳴る。
ハッと我に返った耕平はソレをポケットに突っ込み、慌てて接客に向かうのだった。
☆
「よーしよし、よくやったぞ、まお」
「チケットさえ渡せばこっちのもんだっ」
店を出るなり、まおはいつものファーストフード店で友人達と合流していた。
そして映画のチケットを渡したことを告げると、まおの頭を撫でたり、ジュースのストローを口に突っ込んだりとそれぞれにねぎらってやる。
何しろこのすべて彼女たちの差し金なのだ。実際のところまおは状況よくわかっておらず、友人達に頭をくしゃくしゃ撫でられながら、ずるずるストローを鳴らす。
「ほんとにこれでいいのかな」
「大丈夫、大丈夫。あとは明日の準備だけすればいいからっ」
「じゃあ、今からトリミングだ♪ 前に買ったまま着てないワンピあったよな?」
「……アレ? 全然着ないし処分しようと思ってたんだけど……」
本当に友人達に任せて大丈夫なのだろうか。何だか楽しんでいるフシもあるし……わけのわからないまま友人達を連れて家に向かうのだった。




