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すろぅらいふぅ

※本作は二十歳未満が飲酒しますが、それはフィクションであり実際の団体や人物とは関係なく、また、主人公は非実在少女なので、実年齢は二十歳未満とは限らないというていですので、諸々ご了承ください。


肩慣らし短編です。

宝くじで10億当たった。

なので大学行くのをやめようと思う。


ーーーー


私の名は堂前 銀。

銅なんだか銀なんだか聴いただけではイマイチ分からん。そんな名前の人間である。


私に家族はいない。

兄弟は無く、両親は小学生の時に事故で他界。

以来父方の祖父に育てられるが、その祖父も二年前に病死した。

親戚はいるらしいが、どうやら祖父の代から仲が悪いらしく、疎遠。

どこにいるのかも知らず、また調べる気も無い。

母は施設育ちの孤児らしく、親戚の類を持たない。


よって、完全なる天涯孤独と相成る私である。


そんな私が10億を手にした。

これはもう、大学にはいかんわ。


祖父の遺産で、大学には余裕で行けた。

祖父の遺産はそこそこあるので、切羽詰まってはいなかったが、一生遊んで暮らせるほどではない。

ので、大学に行って、就職しようと考えていた。

大学には推薦で受かり、さぁ春から大学生だと思っていた矢先に、年末のヤツが大当たりしたのだ。

これはもう、大学なんていきませんわ。

私一人なら、十分に生きていけるだけの金だ。頑張る気などさらさら無い。

年明け早々に、入学を取り消した。


ーーーー


とはいえ、ずっと無職でいるというのも体裁が悪いし、何より暇だ。

なので暇つぶしに、喫茶店のマスターなんぞをやってみる。


これで、肩書きは「飲食店経営者」だ。


私は既に18歳で成人だ。店を持つのに問題は無い。

店の場所はせっかくなので、行く予定だった大学の近くにする。

というのも私はこの場所の景観が気に入っていて、それが大学選択の決め手になっていた程だ。


田舎の、海沿いの、自然豊かな街。

大学があるくらいなので、アクセスはそれほど悪くなく、そこそこ人口もいる。

でも、どうにも寂れていて田舎くさい。

でも、そこがいいのだ。


ーーーー


海の見える高台。

街の外れ。


そこにあった、元喫茶店。

丁度この前、一年の終わりと共に店を閉めたらしい。


席は、四人がけのテーブルが二つ。

そしてカウンターが4席。

小さく狭い店だ。


小綺麗だが、これといった特徴は無く、いまいちパッとしない。

海の見えるこの景色は確かに素晴らしいけど、この街にいればこれくらいの景色はどこでもみれる。

頑張って三年続けた店らしいのだが、ついぞ流行ることはなかったらしい。


さもありなん。


この店を、土地ごと買った。

借り店でなく、買い上げた。

丁度、持ち主も手放したがっていたらしい。それも決め手であった。


そこそこ安く買えた。


二階が居住スペースの喫茶店。

これが私の、愛すべき城である。


ーーーー


免許を取り終え。

食品衛生管理者と防火管理者の申請をした。


一階の喫茶店にも、二階の居住スペースにも、家具や備品が揃った。

まぁ、家財ごと居抜きで買い上げたので、あまり買うものは無かったが。


エスプレッソマシンは一番高くて使いやすいのを買った。

私はコーヒーに詳しいわけじゃないので、マシン任せである。

豆はいいのを買った。なんか、アマゾンで一番評価が良かったのを定期購入することにした。


カウンターは業者さんを呼んで改築し、カウンタービールサーバーを入れた。ちなみに、カウンターのサーバーから出るのは、祖父が好きだったエビスのいいやつだ。

私の喫茶店はお酒も出す。18歳だから本当はお酒は買えないが、飲食店として業者から買う分にはあまり突っ込まれなかった。突っ込まれたら無知を装ってやめるつもりだったが、いけた。


ビールとワインと日本酒とエスプレッソとソフトドリンク。

酒類の種類は、卸の人のオススメをそのまま買った。

食事は冷食と缶詰と乾き物。


メニュー表は面倒臭いので作らなかった。


ーーーー


四月の某日。

本来なら入学式であったこの日を、あえて開店の日とした。


年始から始動して、ゆっくりゆっくり準備して、ようやくの開店である。

ちなみに、この店の名前は「すろぅらいふぅ」という。

定休日は未定、休みたいときに休む。

別に客はこんでも良い。来ても良い。


オープンの看板なども、出さない。


「さぁて」


お気に入りのトマト煮の鯖缶を開けてスライスチーズを乗せ、それをオーブントースターにぶち込む。

キンキンに冷えたジョッキを冷蔵庫から取り出して、エビスのビールをカウンターサーバーから注ぐ。


鍋つかみで缶詰を持ってカウンターに座り、大きな窓から水平線を見る。

海がキラキラしてる。静かで、蒼い。


「…は、ひ」


熱々の鯖を箸で解して、チーズを絡めて舌にのせる。

熱くて、トマトで、脂が乗ってる。チーズがトマトで美味しい。


「…ん」


そんで、ビールをゴクゴク飲む。

喉にぶちまけるように、流し込む。


「…ぴぃ」


涙がにじむくらい、最高だ。

朝っぱらから飲む脱法ビールは最高が過ぎる。


ああ。これが幸せな。


需要があれば続きを書きます。

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