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機皇世界  作者: 小土 カエリ
各務原
25/33

出発

よろしくお願いします。

 朝食を食べた俺はエーデルワイスを起こして、四人で一階まで来ていた。店はまだ開店前だったが、俺たちはおじいさんに招き入れてもらった。


 店の開店準備で忙しいのではないかと聞いたが、気にすんなと言われた。


 そして、おじいさんが店の奥から桐箱を持ってくる。


「これがNo.90を模倣品だ。悪いがわしにはここまでしかできんかった。」


 桐箱を開けるとそこには大型のハンドガンが入っていた。No.90に比べて二まわりほど大きくなっていた。


「ありがとうございます。有効に使わせてもらいます。」


 とりあえず今はそれだけしか言えなかった。これにどれほどの価値があるのかは未知数だ。今の俺にはただの武器としてしか使い道がないが、いつかそれ以上の価値を持つ日が来るかもしれない。


 俺はそれを受け取って、このマンションを出ていくための準備を始めた。


─────────────────────────


 思えばこの町での生活もなんだかんだ言って楽しかった。甘草らくとは正次に比べれば救いようのない屑だったが、それ以外は本当にいい町だった。


(約二か月、あっという間だったな…)


 俺はそのまま部屋に散らかっている機械のパーツやガラクタの取捨選択をする。ここにいる間に荷物が大分増えてしまった。それをまとめておく。彩乃が後で掃除しておくと言っていたが、世話になったのだから自分で掃除するのが筋だろう。


「天童、これはどうしますか?」


 俺が振り返ると、そこには紅蓮の頭を持ったエーデルワイスがいた。


「また会う約束をしたんだろ?なら持って行こう。」


「わかりました。」


 そう言うとエーデルワイスは荷物の運搬作業に戻る。疲れ知らずの機械兵なのでこういう荷物運びには最適な人材だ。


 ゴミをひとまとめにしてキッチンなどを掃除して回る。折角ここのキッチンにも慣れてきたのにもう行かなければいけないのは残念だ。


 これからはまた移動の日々が続くだろう。そうなればこうした設備が整った場所を使う機会も減る。


 だが、俺はその未練を断ち切るように綺麗にしたキッチンを後にした。


 いつかまた復讐を終えた後でまた立ち寄ればいい。俺はそう考えて、外にゴミを捨てに行った。


─────────────────────────


「それじゃあ、天童の新しい出発を祝って、乾杯!」


 彩乃の掛け声と共に、俺はジュースの入ったグラスを掲げる。


 俺たちは夕飯を食べる為にビュッフェ形式の店に来ていた。


 灯りさんが気を利かせて予約してくれたのだ。テーブルにいるのは灯りさん、いろはさん、刀祢さん、おじいさん、彩乃、紫苑、エーデルワイス、俺の八人だ。エーデルワイスは食べることができないので、ニコニコしながら俺の横に座っているだけだ。


 それにしても灯りさんはかなりいいお店に連れてきてくれたようで、和食から洋食までなんでもござれだった。俺は和食が好きなので天ぷらや川魚の塩焼きを食べていた。


 紫苑は寿司を食べていた。


「ネギトロ美味しいー!!」


 初めての寿司は衝撃的だったようで、紫苑は笑顔で食事をしていた。俺も後で一つ二つ食べておこう。


「天童はこれからどうするの?」


 俺がキスの天ぷらにかぶりついていると、彩乃が話しかけてくる。


「俺たちは滋賀県に向かうつもりだ。そこに次の目標がある。」


「それって他のNo.?」


「正解。」


 エーデルワイスのおかげで俺たちは紅蓮が持っていたNo.に関する情報を手に入れることができた。でも、大まかな位置はわかっているが、細かい位置はわからない。向こうに行ったら自分の足で探すしかないだろう。


「あんちゃん更にNo.を手に入れるつもりか?こう言っては何だが、二つ持ってるだけでも今の人類側ではかなり上位の戦闘力じゃぞ?」


「まだまだ足りません。シュネルヴァイスを倒すためには戦力がいくらあっても足りない。それこそ軍隊が必要なレベルです。」


 俺がそう答えると、おじいさんは難しい表情をしてから、俺に一枚の紙を渡してくる。


「もしも行き詰った時はこいつのとこを訪ねてみろ。わしの弟子じゃ。好きなだけこき使ってくれて構わんからな。」


 俺はその紙を開いてみると、そこには住所と人の名前が書いてあった。


神代かじろ圭介けいすけ…ありがとうございます。」


 俺はそれを受け取ると、おじいさんにお礼を言う。


「わしからも連絡しておく。安心せい。わしが知る中で一番の技術者じゃ。必ず役に立つ。」


 それからは彩乃たちと談笑しながら楽しく最後の夜を過ごした。俺たちがエーデルワイスを拾った時のことや、初めて起動するとき苦労したこと。みんな楽しく聞いてくれた。俺が昔から機械を弄ってきたこと。昔に機械兵を直して逃げられたこと。今となってはどれも笑い話として話すことができた。


 でも、消えてしまった町のみんなのことを思い出すと、少し寂しくもあった。それと同時にあの町に生まれていて俺は本当に幸せだったんだなと再確認する。


 そんなみんなを奪ったシュネルヴァイスを俺は絶対に許さない。


 その憎しみを心の奥底に秘めて、俺は食事を続けた。


─────────────────────────


 翌朝、俺は町の西側に来ていた。見送りに彩乃とおじいさんの二人が来てくれた。


 トラックの荷台は半分くらいが荷物で埋まっていた。


「それじゃあ、お別れだな。」


 俺は彩乃にそう言うと、彩乃は悲しい顔をする。


「そうね。寂しくなるわ。」


 彩乃はそう言うと、いきなり俺のことを抱きしめる。


「また、会えるわよね…?」


「絶対会える。再開するまでは死なないよ。」


 俺はそう答えて彩乃の背中を軽く抱きしめる。彩乃の目には涙が浮かんでいたが表情は笑顔になっていた。


 彩乃は俺から離れると、次に紫苑を抱きしめる。


「紫苑も、また会いましょう。」


「うん。彩ちゃんも元気でね。」


 紫苑の次はエーデルワイスだ。


「エーデルワイスも、二人を守ってあげてね。」


「はい。必ず守ります。」


 俺たちは別れを済ませると、トラックに乗り込む。


 シートベルトを締めて、キーを回す。町のゲートが開いて、山脈の間から日の出が見える。


 本当にいい町だった。


「二人ともありがとう!行ってきます!」


「彩ちゃん、またね!」


 俺は運転席から手を振って、二人に別れを告げる。


「おう!行ってこい!」


「必ず帰ってくるのよ!」


 二人が大きな声で返事をくれたことを確認して、俺はアクセルを踏む。


 ゲートを抜けて西側関門まで来ると、そこには刀祢さんをはじめとした部隊のみんながいた。


「天童君!彩乃と友達になってくれてありがとう!またいつでも遊びに来てくれ!」


 ゲートが開くまでの間にみんなが駆け寄ってくる。その中には俺が助けた人や、一緒に戦闘の勝利を喜び合った人もいた。


「刀祢さん、皆さんも、一緒に戦ったこと忘れません!ありがとうございます!」


「じゃあな!」


「簡単に死ぬんじゃねえぞ!」


 俺はその言葉を聞いて、各務原の町を出発した。




読んでいただきありがとうございました。

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