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機皇世界  作者: 小土 カエリ
各務原
22/33

次の目標

よろしくお願いします。

 機械兵との戦闘を終えてから一日が経った。


 俺は疲れた体に鞭を打って、夜通しエーデルワイスの整備をしていた。機体の損傷はパーツを交換すれば直せた。


 問題は強化服の方だった。


 エーデルワイスが自己修復を始めてから、俺は強化服に取り掛かったが、やはり最初に見た時と同じようにブロックされてしまった。


(あーだめだ…眠い…もう午後に回そう…)


 俺はそのまま強化服の上に腕枕を作り、机に突っ伏して眠った。


─────────────────────────


 俺が目を覚ますと、そこは何もない黒い空間だった。


(ここ前も来たような気が…)


 俺の目の前にはボロボロになったエーデルワイスの強化服があった。


 そこまで歩いていくと、前と同じようにウィンドウが表示される。


 アイテム番号──No.89冷酷なアクシアス。解除コードは縺�∴縺翫°縺上────


 説明────NULL。


(なんだこれ…)


 前来た時は長々とした説明があったのに、今回は何も書いてない。解除コードすら読めなくなっている。


(やはり前に来た時と何かが違う。)


 俺がエーデルワイスの強化服に手を伸ばそうとしたその時だった。


「君、中々鋭いね。」


 俺の背後から誰かが声をかけてきたのだ。


 俺の中に緊張が走る。既に背中を取られている。声は不思議な感じで、近いようにも遠いようにも感じる。振り返ってすぐに制圧できるかわからない。


(どうする…!)


 俺が後ろから掛けられた声に対して対応を決めかねていると、更にそいつは話しかけてくる。


「そんな警戒しなくていいよ。僕は君の敵じゃないから。」


「詐欺師は全員そうやって近づいてくるんだよ。で、あんた誰?」


 俺は僅かに後ろ足を引いて、振り返る準備をする。


「これは手厳しいね。まあ、いいさ。その用心深さに免じて名乗ろうじゃないか。こっちを向いてごらん。」


 俺はその言葉の後に間を開けて、構えを取りながら素早く振り向く。そこには誰もいなかった。


「ははっ引っかかった。残念、僕はそこじゃないよ。」


 今度はどこからともなく声が聞こえてくる。どこで喋っているのかわからない。


(馬鹿な!?さっきは確かに後ろから聞こえたはず…!)


 俺はハッと気づいて後ろを振り返ると、そこにあったはずの強化服がなくなっていた。


「しまった!狙いはこれか!」


 俺は焦って辺りを見渡す。すると、すぐ耳元で声が聞こえてくる。


「気付くのが少し遅かったね。」


 俺は振り返るそぶりを見せて、相手に対してフェイントをかける。すると、俺の目の前に黒いもやが強化服を着て浮いていた。


「見つけたぞ。」


「やっぱり君、鋭いね。」


 俺の目の前には黒い靄の中に目のような二つの光を持った謎の存在がいた。


「それで、お前は誰なんだ。」


「仕方がない。こうなっては名乗らざるおえないね。僕の名前はアクシアス。冷酷なアクシアスさ。」


 俺はその名前を聞いて、不思議に思う。それは強化服の名前のはずだ。


「それはその服の名前だろ。」


「だからその中に入ってるのが僕なの。君は賢いから理解できるでしょ?」


 少し考えてから、この靄の正体について仮説を立てる。


「…No.にはそれぞれブレインが搭載されている。その中にもし自我があったとしても不思議じゃない。」


 俺は淡々と答えを述べると、アクシアスは手を叩きながら足を組む。


「その通ーり。賢い人間は好きだよ。話が早いからね。」


 拳を降ろして構えを解く。こいつの話をもう少し聞いてもいいだろう。


「で、お前は俺をこんなところに呼んで何がしたいんだ?」


「別に大したことじゃない。さっさと他のNo.を回収してくれと言いに来ただけだよ。」


 アクシアスは肩を竦めながらそんなことを言う。一々動きが鬱陶しい奴だ。


「お前はエーデルワイスの何を知ってるんだ?」


「僕は何も知らないよ。だって他のNo.とは違って記憶を渡してもらえなかったからね。まあ、この間れんちゃんに少しだけ話を聞いたから、大まかなことは知ってるけどね。彼女、さっさと記憶を取り戻した方が良いと思うよ。このまま突き進めば多分彼女は後悔することになる。ねー、れんちゃん。」


 アクシアスは俺の背後に話しかけると、そこにはNo.90福音の滅連銃を持った別の靄がいた。


「お前はさっさと失せろ。その軽口を聞いているとイライラする。」


 その二人目の靄がこちらに近づいてくる。俺が警戒していると、そいつは急に俺の頭に靄を伸ばしてくる。


「な、何を!?」


「安心しろ。ただ見せたいものがあるだけだ。」


 靄が目の前に迫ってきて、俺は堪らず目をつむる。


─────────────────────────


 しばらくして目を開けると、そこには戦場が広がっていた。


(これは一体なんだ…?)


 機械兵同士が争っている。それらに目を向けると、どれもかなり古い機体だった。中には見たことがない機体がいくつもある。


「これが俺の中に封印されていたエーデルワイスの記憶だ。お前もよく見ておけ。」


 俺はその声に言われるがまま流れていく映像に目を通す。


 映像はエーデルワイスの目から見たものをそのまま映し出しているようで、酷い酔いにあう。


 エーデルワイスは今の何倍もの速度で戦場を走り、味方の誰よりも最前線を駆け抜ける。周囲には複数の武器が浮遊しており、その時々によって武器を持ち替えながら戦っていた。


「すごい…」


 その中にはNo.90の姿もあった。


 敵を一通り掃討した後、弾の補給のために、自陣まで飛行して帰ってくる。


「全ての武器の補給をお願いします。シュネルヴァイスはどこにいますか?」


「こちらの天幕です。」


 エーデルワイスは装備を全て他の機械兵に任せて、エーデルワイスは通路を歩いていく。そして、角を曲がった後そこにはテーブルを囲む複数の機械兵が何かを話している。その中央にシュネルヴァイスがいた。


「あいつっ!」


「これは記憶だ。殴り掛かることはできないぞ。」


 横の靄に窘められて、俺はやりきれない気持ちで拳を降ろす。だが、自分の大切な人を殺した奴が憎くて堪らなかった。


 エーデルワイスは机の側まで歩いていく。


「戦況はどうですか?」


「こちらが優勢だ。エーデルワイスの活躍のおかげで敵を押し返しつつある。」


「それはよかったです。今度はどこに向かえばいいですか?」


「それなんだが────。」


 エーデルワイスとシュネルヴァイスが話していると、新しい通信が入る。


「報告です!No.4フェリキタスが戦場に姿を現しました!前線が押し返されつつあります!」


「ついに来たか。私が出る!エーデルワイス、一緒に来てくれるか?」


「もちろんです。」


 そして、映像はそこで終わった。


─────────────────────────


 再び暗い世界に戻った俺は複雑な思いを持っていた。


「それで、あれを見てどう思った?」


 No.90が俺に対してそう聞いてくる。そんなことを言われてもどう答えればいいのかよくわからない。


「複雑だった。シュネルヴァイスは憎いけど、エーデルワイスはそれを信頼しているように見えた。でも、憎いことに変わりはない。」


「そうか。すぐに受け入れるのは難しいだろう。だが、心して聞け。」


 No.90はそう言って、俺の胸に銃を当ててくる。


「真の敵は機皇神にあらず。」


「…は?それはどういうことだ!?」


「わからない。だが、博士はずっと言っていた。機皇神を作ったのは外国と戦争をする為ではなかったと。俺から言えることはそれだけだ。何か聞きたいことはあるか?時間は少ないが少しだけなら答えられるぞ。」


 俺はそう言われて、何を聞けばいいか考える。機皇神について聞きたいことはもっとあるが、時間がないとNo.90は言った。なら聞くべきことは他にある。


「…なんで俺はお前たちと話ができる?」


「お前が適合者だからだ。」


 俺はその答えを聞いて更に質問を重ねる。


「適合者ってなんだ?」


「適合者はNo.を使うことができる者のことだ。こうしてNo.と意識を繋げることができる。メテオニスを通して、生命力をエネルギーに換えて戦うこともできる…そろそろ時間みたいだな。次会えるのは半年後といったところか。」


 俺は以前と同じように瞼が重くなってくる。


「待て…!まだ聞きたいことが…」


「夜花天童。生き残りたいならNo.を集めることだね。あと僕のロックは解除しておいたから修理お願いね~。」


 俺はそれだけ聞き取ると、意識が闇の中に沈んでいった。


─────────────────────────


「待て!!」


 俺が跳ね起きて目の前に手を伸ばすと、そこには紫苑の胸があった。


 俺の手の中に柔らかい感触が広がる。まるでマシュマロみたいな柔らかさに人肌の暖かさが合わさってすごい手触りだった。


「あの…そういうことがしたいならちゃんと前もって言ってもらっていいですか?あと早く手を離してほしいんですけど…」


「ご、ごめん!そんなことする気はなくて…!俺はNo.を…」


 俺はハッと気が付いて、夢で見たことを紙にメモしていく。


 No.は自我を持っていること。エーデルワイスがシュネルヴァイスと戦っていたこと。敵は機皇神以外にもいるということ。適合者という人間がいること。俺は忘れないうちにできる限りの情報を書き出していく。


「確か強化服の名前は…No.…えっと、なんだっけ?そうだ!No.89冷酷なアクシアス!」


「天童さっきからどうしたの?深夜テンション?ちょっとキモいんだけど。」


「うっさいわ。それより朝食は?」


 俺は書きなぐったメモをリュックのポケットに突っ込んで立ち上がる。


「ないから呼びに来たに決まってるでしょ。むしろ起こしに来た紫苑ちゃんに感謝しろ?いいから早く作ってよ。」


「さいですか…」


 俺は眠たい体を動かしながら、リビングに向かった。


─────────────────────────


 軽い朝食を作りながら夢であったことを思い返す。


(No.たちと夢の中で会えたのは俺が適合者だからだとNo.90は言っていた。だとしたらそれで何ができる?わからねえ…)


「ちょっと天童!焦げる焦げる!」


「え?ああっ!?」


 俺はフライパンの上の目玉焼きをすぐに火から避けて皿に移す。


「あ、危ねぇ…」


「ちょっとしっかりしなさいよ。今日のあなた変よ。」


「その焦げかけのやつ天童が食べてね。」


 横で何もしずに喋っているだけの二人ががやがや言ってくる。これはこの後で情報を整理した方が良さそうだ。


 俺は二人の目玉焼きをさっさと作って朝食にした。


 結局俺が全部作る羽目になったが、そんなのはいつものことなのでどうでもよかった。


 俺はすぐにご飯を食べて、パソコンを開く。


 そしてパソコンの画面に出たエーデルワイスの強化服を調べる。


「…解除されてる。」


 そこには全てのロックが外された強化服があった。そして、見えなくなっていた強化服の名前が表示される。夢で見たのと同じ、No.89冷酷なアクシアスと書いてあった。


「あの夢はやっぱり…」


 俺は無言でNo.89の状態に目を通していく。


(動力炉とブレインは無事だが、かなりガタが来ている。特に銃撃を浴びたらしい肩がやばい。)


 これまでこの強化服は一度も整備をしたことがなかった。


 それはつまり今までの全ての戦闘の負荷を放置してきたということだ。


(これは…かなり時間が要るな…)


 俺は壊れている場所を上から順番に解析していく。壊れる前のデータはちゃんと残っているので、パーツを交換すれば直すことはできるだろう。


 No.特有のプロテクトが外れた今、それは難しいことではない。


 しかし、壊れている箇所も決して少ないとは言えなかった。


 彩乃のおじいさんのところで経験を積んだとはいえ、俺一人で直すのは無理だろう。


 俺はまだ寝ているエーデルワイスを起こしに行く。ベッドの中で自己修復をしているエーデルワイスの上に修復率が表示されている。


(98%。もう動いても大丈夫か。)


「エーデルワイス、起きてくれ。」


 声をかけるとウィンドウが閉じて、エーデルワイスが目を覚ます。服はジャージを着ている。


 ベッドから起き上がると、エーデルワイスが挨拶をしてくる。


「おはようございます天童。昨日は修理していただき、ありがとうございました。自己修復では時間が掛かり過ぎるので直してもらえて助かりました。」


「おはよう。俺が直せるくらいの破損でよかったよ。」


 俺はとりあえず二人におじいさんのところに行くことを伝える。


 そして、強化服を持ってエーデルワイスと一緒に一階に向かった。






読んでいただきありがとうございました。

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