No.90
よろしくお願いします。
一階のおじいさんの店に行くと、武器を担いだごつい奴らがたくさんいた。どうやらここは雑貨屋のようだ。それも戦闘に関する回復薬や、マガジン、弾を売っている。武器も売っており、レジの奥に立てかけてある。
「こっちじゃ。」
俺はおじいさんの後を追っていくと、店の奥の倉庫に案内される。
「どうでもいいけど、こういう裏方来るとわくわくするよな。」
「わかるーなんか掘り出し物とかありそう!」
俺と紫苑はわいわい話しながら進んでいると、後ろから大矢野が追い付いてくる。
「ごめん。ちょっとパパと話してたら遅れちゃった。」
「全然大丈夫。まだこれから開けるところだ。」
俺たちはおじいさんに言われて指示された当たりの棚でレーダーを起動する。これはエーデルワイスから送られてきたデータを基に作ったものだ。
「えっと…この棚の…この列…ここのどこかにあるみたいです。」
そこには三メートルくらいの棚がそびえ立っていた。俺たちはその中にあるものを一つ一つ確認しながら調べていく。五人いるので作業もどんどん進んで行く。
そして、一番上にあった箱を動かした時、レーダーの反応も動いた。
「大矢野、それの中身がキーだ!慎重に頼む!」
「わ、わかったわ!」
俺は大矢野が降りやすいように梯子を抑えて支える。大矢野はゆっくり降りてくる。手には俺たちが持っている箱と似たような形をしていた。
「あれがキーなの?」
紫苑が下から興味深そうに見ていた。当然俺も興味津々だ。
「こいつは昔キャラバンが来た時に買ったもんじゃ。当時はよくわからんが厳重なロックが掛けられていたので貴重品だと思って買ったんじゃったな。懐かしい話じゃ。」
おじいさんが昔を懐かしみながらそんなことをつぶやく。キャラバンということは旅する商人のことだろうか。
地面に降りると全員で取り出した箱を見つめる。たくさんの埃を被っており、薄汚れていた。
とりあえず店の射撃場に置いてあるテーブルまで持ってくる。客たちが野次馬のように集まってくるがとりあえず無視だ。
雑巾で箱を拭きとり、上部の手形の部分を綺麗にする。
「それじゃあ、開けるか。」
念のため俺は自分の手を当てる。だが、開かない。ここまでは予想通りだ。
俺はエーデルワイスの目の前に箱を動かし、手をかざしてもらう。すると箱は青く光り、ロックが解除される。周りからはおおっという歓声が上がる。そして、蓋を開けると、中に入っていたのは、歪な形をしたカードキーのようなものだった。
「これがキーですか?…天童、箱の位置情報が流れてきます。」
「マジか。やっぱりキーとNo.は相互に影響し合ってるのか?箱の上に置いてみてくれ。」
「わかりました。」
エーデルワイスがキーを置くと、箱が青く光り始める。そして、ロックが外れ、プシューという音と共に空気が抜ける音がする。エーデルワイスが蓋を開けると、そこにはやはり、ハンドガンがあった。ホルスターも付いており、恐らくエーデルワイスの戦闘服に付けられるようになってる。
「…なんか思ってたよりしょぼいわね。おじいちゃんがあんなに騒いでたからもっと凄いのが出てくるかと思った。」
「ねー。紫苑ちゃんももっと面白いのかと思ってた。」
大矢野と紫苑が文句を言っているが、俺達三人にはこれがどれだけ凄いものか見ただけで分かった。
「エーデルワイス、持ってみてくれ。大矢野、いいか?」
「ええ。私が監視してるからいいわよ。」
「わかりました。」
手に持った瞬間、エーデルワイス体中に青い光の線が走り、ハンドガンに集まっていく。そして、機械的な音声で、エーデルワイスが話し始める。
「確認しました。No.90福音の滅連銃。本来の所有者の元に戻ったので、封印された記憶及び解除コードのロックを解除します。」
そう言って徐々に光は収まっていく。そして、エーデルワイスが何度か瞬きして、正気に戻る。
「なんか思い出した?」
「はい。ですがその話はまた後で。今はこちらの方が先でしょう。」
そう言って、エーデルワイスはNo.90に目を向ける。
俺はエーデルワイスから受け取って、銃の口径を確認する。おそらく使われているのは一般的な9㎜弾みたいだ。マガジンも現在流通している物と同じ型だ。
「おじいさん、9㎜弾ありますか?」
「ちょっと待っとれ。すぐ取ってくる。ええい、散れ散れ、見せもんじゃないぞ。」
おじいさんは人ごみを抜けて、弾とマガジンを取りに行く。それはそれとして、俺は自分のパソコンにNo.90を接続して、中のデータをコピーしておく。だが、その中にエーデルワイスの記憶はなかった。すでにエーデルワイス本体に取り込まれたようだ。
(いや、そもそもロックが掛かっていたし、本人以外には見れない仕組みになっているのか。)
だが、No.90の情報はどこかで見たことがある内容だった。というか俺が見た夢の中に出てきたやつだ。文字化けしていた情報もそのままだ。同じもので間違いない。
「おーいあんちゃん。とって来たぞ。」
「ありがとうございます。」
俺は弾を受け取って、マガジンに装填してしていく。弾を込めた後、俺はマガジンを手渡す。エーデルワイスはまるで長年使い慣れた武器のように滑らかな動きでリロードする。
そして、射撃練習用の的に向けて、発砲する。
ガァン!!という大きな音と共に的の中心を撃ち抜く。
周りからは再度おおっという歓声が上がる。威力としては俺が渡したマグナムに勝るとも劣らない。だが、射程を考えるなら、こちらの方が上位互換だろう。
「じいさん、この武器と同じやつ見せてくれ!ぜひこの手で使ってみたい!」
「俺も俺も!」
「俺も────」
「ええいやかましい!これはこのお嬢ちゃんの一点ものじゃ!同じもんはないわ!」
おじいさんがそう言って野次馬を黙らせる。
「続けてもいいですか?」
「おう、うちの客が悪かったな。進めてくれ。」
俺は席を移動して自分のパソコンの画面をおじいさんに見せる。
「エーデルワイス、ストップ。おじいさん。これ見てください。こいつの内部データです。流石に設計図は載ってませんでしたが、これを基に複製することもきるかもしれません。」
「ちょっと見せとくれ。」
おじいさんは老眼鏡をかけて、画面の中に書いある説明を読み込んでいく。
「完全な複製は無理じゃな。メテオニスがない。じゃが、形だけのもんは作れるかもしれねえな。」
俺はそれを聞いて嬉しくなる。もしこれが量産できるなら、人間側の戦力を微力ながら上げることができるだろう。そうすればシュネルヴァイスを倒すために一歩近づくことができる。
「中断してごめん。続けてくれ。」
「わかりました。解除コード入力。極封火弾。」
エーデルワイスが静かにそう言うと、銃の形が大きく変わる。格納されていた動力部が起動し、排熱の為に銃全体を覆っていたカバーが開き、中の青い光が漏れ始める。
エーデルワイスが的に向けてトリガーを引くと、まるでAPピストルのように弾が連射される。そしてその音がとてもハンドガンの音ではなかった。
ガガガガッとまるでマシンガンでも撃っているような音がする。
「うるせえええ!!」
横で紫苑が叫んでいるが、銃声の方がうるさくてよく聞こえない。
連射によってマガジンの弾はあっという間に底をつく。だが、既に木製の的は木っ端みじんに破壊されていた。
それを見た周りの野次馬がわいわい騒ぎ始める。
そして、しばらく経つと銃が光らなくなる。エーデルワイスがマガジンを入れ替えて撃とうとするが、トリガーがロックされているようで、撃つことができなかった。
「全ての機能がロックされています。解除コード使用後はしばらくこの状態になるようです。」
「はえー。すごいねそれ。本当にすごい。よくわかんないけど。」
「余りの衝撃に語彙力が死んでるぞ。だけどまあ、すごいのは確かだ。この世に一つしかないっていうのも理解できる。」
「そうじゃのう。わしが今まで見たNo.は解除コードっつうのを使っていないものじゃったんだろうな…そんな情報いくら調べても出てこんかったが…やはりお嬢ちゃんが持ったことが意味があったんじゃろうな。」
その後はNo.90の細かい性能を確認していった。解除コード使用後は一分間連射が可能になる。そして、クルールタイムはきっかり五分間だった。五分が経つと機能が回復し、元の形に自動で戻った。
俺とおじいさんはその場でできる限り情報を集めた。
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一度解散した俺たちは部屋のソファで休んでいた。
おじいさんが数日かけてNo.90の模倣品を作ってくれることになった。
「久々のNo.じゃ。それにこんなにデータが揃っとるのは他に見たことがない。やれるだけやってみよう。」
そう言ってやる気になっていた。俺たちはそれが終わるまでの間。大矢野家のマンションの一室を貸してもらえることになった。No.の情報をくれたお礼ということだった。滞在費が掛からなくていいのは助かった。
俺たちのお金は余裕があるとは言えない。ここの町で何とか稼がなければいけないだろう。食料一つとってもお金がかかるのだ。弾は正次がくれたやつがあるのでいいが、食料をはじめとした生活雑貨にはお金がかかる。
紫苑がペットボトルの水を飲みながら横に座ってくる。
「ねえ、これからどうするの?しばらくここに居るんでしょ?」
「そうだなぁ…適当に町の警備の仕事でもやるか。」
稼ぎは少ないけど、堅実に稼ぐならこれが一番だろう。
そこで俺はふと思ったことを聞いてみる。
「そういえばエーデルワイスの記憶ってどんなのが戻ったんだ?」
俺は後回しにして忘れかけていたことを思い出す。
エーデルワイスはNo.90の手入れをしていた手を止めて、こちらに向き直る。
「私が作られた理由を思い出しました。私はシュネルヴァイスをサポートするために作られた機体だったようです。」
「つまりどういうこと?」
紫苑が首をかしげながら聞き返す。
「言ってしまうと機皇神の正体はNo.です。それぞれ特化した性能を持った機体は本来、人類の文明を更に発展させるために作られました。EU、米国、中国、AU、中東、日本で製造された彼らは、No.1~No.6に該当します。シュネルヴァイスはNo.6として日本を守るために作られました。」
「守るため…?今人間を攻撃してるけど…」
「それは…わかりません。おそらく別の武器にその部分の記憶があると思います。」
結局今の状況を打破できるようなことは何もわからなかったか。だが、彼らの正体がNo.だと確定できたのは一歩前進だろうか。敵を知り己を知れば百戦危うからずだ。エーデルワイスは自分のことも殆ど覚えていない。彼女が最初に覚えていたのは機皇神を倒すということだけ。それを考えれば大きな進歩だ。
「それもこれも頑張った紫苑ちゃんのおかげだねー。早く褒めろ?」
「はいはい。すごいすごい。」
俺は膝の上に寝転んできた紫苑の頭を撫でる。
実際はこれをくれた斎藤さんのおかげなのだが、あの人と話を付けてくれた紫苑のおかげとも言えなくもない。
「はぁー褒められるの最高。やっぱこれがないとやってられないわ。」
「人間誰かに見ていてもらわないと生きる意味がなくなるらしいからな。その点紫苑は男には大人気だから問題ないな。」
「女には嫉妬心を向けられるし、その男たちの視線も性欲まみれだから全然よくないけどね。男は下半身で生きてるからまだわかるけど。」
俺はそれを無言でスルーする。自覚はあるからだ。こんな外面完璧な紫苑の裏の顔を知っているというのは、控えめに言っても優越感がすごい。そんなこと言うと絶対調子に乗るので言わないが。それに昔は女としては意識してなかったが、最近は体の発育もいいので困る。
「女の嫉妬心が醜くて醜くて。本当にやめて欲しいよね。紫苑ちゃんに絶対に勝てないって頭では理解しているからって、陰口言うの本当にダサい。だからブスなんだよ。そんなこと言ってる暇があれば、可愛くなるために努力すればいいのに。」
「紫苑はたまにすごく口が悪くなりますね。」
「昔からこんな感じだよ。まあ、一緒に紫苑が可愛くなるように協力してきた身としては、紫苑が言ってることもわかるんだけどな。」
こいつがいじめられていた時から今日に至るまで、どれ程努力してきたのか俺だけは知っている。だから、紫苑の可愛さを俺は尊敬している。髪をサラサラにして、肌のハリとつやを保って、爪先を綺麗にして、化粧を勉強して、体形を維持するために運動もする。そんな努力をする紫苑は最強の美少女なのだ。
「その努力は天童以外には絶対に見せないけどね。だって可愛くないし。」
「確かに可愛くはないな。」
俺がそう言うと紫苑はムスッとした顔をする。俺はそれを見てクスリと笑う。
「でも世界一格好いいよ。」
「…バカ。」
紫苑はそう言って立ち上がり、自分の部屋に戻っていった。本当に可愛い奴だ。
「あーあ。なんだか恥ずかしくなってきたし、俺たちも寝るか。」
「そうですね。天童も格好良かったですよ。」
エーデルワイスはそう言ってクスクス笑っていた。俺はそれを聞いて少し恥ずかしくなる。
「茶化すのはやめろ…」
俺はエーデルワイスと一緒に寝室に向かった。
読んでいただきありがとうございました。




