頑張れなかったことと、席替え
頑張れなかった。
せっかくのチャンスだったのに。
考えすぎた。
分からなくなった。
しゃべりかけてほしくないかも、とか・・・
本当は自分のことが嫌いなのかも、とか・・・
いつもならこんな風にマイナスに考えることはないけど
どうしてかこの時は考えてしまった。
「なんでしゃべりかけなかったんさー!!」
「そうやん!メッチャチャンスやったやん~」
柚麻と杏の2人はそう残念そうに言っていた。
青波は2人に協力してくれたのにごめんっと一言言って
それ以上何も言わなかった。
秋祭りが終わり、12月になるとすぐ冬休みに入り
結局、陸也からの返事はないまま3学期になり
最後の席替えをすることになった。
「やったー席替え~」
「今の席から逃れられる!!」
柚麻と杏といつものメンバーで青波の席で話していた。
2人は席替えということに喜んでいたが今の窓際で
先生にもあまり目の届かない席の青波は少しその席から離れるのは
残念だった。
「じゃあ書くから自分の席が分かった人は移動して」
そう言って担任が席順を黒板に書くのをクラス全員が見る。
どんどん書かれていく名前を見てやったーとかえーとか
口々に話していく。
「あ、青波けっこう前じゃん~残念」
「え?あー本間や・・。まあ窓際やからいっか」
杏に言われて黒板を見ると青波の席は窓際側の前から3列目だった。
その席に決まり少し残念そうな顔でため息をつきながら席を移動する。
_____あ、そういえば隣誰かな?
そう思って後ろを振り向く。
ふと、後ろから机を持って歩いてくる陸也がいた。
_____志貴くんどこの席やねんやろ・・・
そう思いながら見ていると、丁度青波の隣で陸也の動きが止まって
青波の机の横に静かに机を置いた。
「え・・」
驚きでポツリと声が出てしまった。
_____隣・・・志貴くん!!!!?????
陸也は何も言わず席の移動を終えると静かに座る。
その様子を気配で感じながら青波は目線を下にする。
今の青波には神様の存在を心から信じれるだろう。
青波は黙って心の中で今日だけ信じれる神様に感謝をする。
この席で本当に、よかった。
これが青波と陸也の一番心に残る毎日の始まりだった・・・_____。