眠たい少年と硬い先生
「起きろよー」
その言葉で過去を思い出していた青波は
現実に引き戻された。
次の授業は始まっていて堅苦しい社会の先生が
教卓の前に立っていた。
先程の言葉は青波だけに向けられた言葉ではなく
このクラスの寝そべって寝ている皆に向けられた言葉らしい
ことは先生の目線ですぐに分かる。
ちょっとホッとして社会の教科書を机の中から出していると
また先生の声が響いた。
「おい、鈴木!隣起こしたってくれ」
その言葉に皆の視線は廊下側の一番後ろの席の
鈴木さんに一斉に向けられる。
ノートに何か書いていた鈴木さんは急に
名前を呼ばれたことに少し焦りながら隣の
寝ている男子の肩を揺さぶる。
陸也だった。
「志貴、眠たいんやったら顔洗って来い!」
「・・・・大丈夫です」
起き上がって少し眠たそうに答える陸也。
それを見ているクラス一同は何も言わず
また前を向きなおす。
もしそこで何かを言うと次に先生に標的にされるのは
絶対にその発言した人になることは確かなことを
分かっているからだ。
いつも騒がしいこのクラスでも社会の時間だけは
絶対に静かになる。
これは先生の力・・というか怒られたらかなり長い時間
話が続くのが嫌なだけだろう。
青波もさっきまで陸也を見ていた視線を前に戻す。
いつもそうだ。
陸也は授業中ボーとしているか寝ているかしかない。
それなのに頭はそこまで悪くない標準。
うらやましいことだ。
そんなことを思いながら青波も皆の様にノートに
黒板の文字を写し始めた。