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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

星に願いを〜切実な彼女の願い〜

作者: MOZUKU

「はぁはぁ、もう少し。」

そう、もう少しなんだ。もう少しで見晴らしの良い丘の上に出る。

今日は夜空に流星群が流れるの。だから私は、とある願いを抱きながら一人歩く。息も絶え絶え、今にも倒れそうだけど、どうしても叶えたい願いが私にはあるのである。

そうして必死に歩き続け、私はようやく丘の上に辿り着いた。情報に間違えがなければ、そろそろ夜空に流星群が流れ始める筈である。

私は地面にへたり込み、ひたすら流星群が流れるのを待った。すると夜空を切り裂くように、一筋の流星が夜空を流れた。

そうして次から次に流れていく流星、流星群なんて初めて見たけど、こんなにキレイだなんて。

『流星群を見に行こうよ』

彼が無邪気な笑顔で私を誘ってくれたのが、今でも鮮明に思い出すことが出来る。あぁ、出来ることなら彼と見たかった な・・・もう無理だけどね。

さて、こうしてはいられない。私は左手で拝みながら夜空にこんなお願いをした。

「どうか、彼を殺した悪霊をこの世から消滅させて下さい。お願いです、跡形もなく吹き飛ばしてやってください。」

私の目から血の涙が流れる。もぎ取られた右腕の傷から血があれだけ流れたのに、まだ血を流せるなんて不思議だ。

私はここに来る前、この丘の下にある廃病院で、彼を含む友達5人と肝試しをしていた。肝試しをしてから流星群を見ようという段取りだったのだ。

廃病院には質の悪い悪霊が住み着いているという噂があったが、高校生の私達は構わずに廃病院に入って行った。今となってはその行為に激しい後悔をしている。取り返しのつかないことになったからだ。

廃病院に悪霊は本当に居て、その長い髪の女の悪霊は侵入者である私達に襲い掛かって来た。そうして首を引きちぎったり、胴体を真っ二つにしたりして、私達を次々に殺して行ったのである。

私は怖くて怖くて、半狂乱になりながら逃げ回った。その内に生きているのは彼と私二人になり、私を逃す為に彼は悪霊に立ち塞がった。

「に、逃げて!!」

私にそう言い放つ彼。逃げるだなんてそんなこと出来るわけない。彼にそう伝えようとしたのに、悪霊は無慈悲に右手で彼の

胸を貫いた。

「うわぁあああ!!」

胸から血を吹き出しながら、断末魔の悲鳴上げる彼。

"ザク!!ザク!!・・・"

容赦なく、悪霊は何度も執拗に彼の胸を貫く。まるで小気味の良いリズムでも刻むように。

そうして彼は動かなくなり、こと切れて倒れた。

その様子を見ていた私は、その場に腰を抜かして座り込み、動くことができなくなってしまった。あまりにショッキングな出来事に、私は茫然自失になってしまったのである。

だが悪霊はそんな私にも危害を加えようとする。私の右手を掴んだかと思えば、そのまま右腕を力任せに引きちぎったのである。

”ブシャアアア!!"

噴水のように引きちぎられたところから吹き出る鮮血。私は激しい痛みでその場をのたうち回った。

「痛い、痛い痛い、痛い痛い痛い痛い痛いっ!!」

痛みに耐えながら、私は必死に制服の袖を千切り、その引きちぎった袖で、血の出るところを締め付け、なんとか止血しようと試みた。

そんな必死な私を見て、悪霊は楽しそうにニタリと笑った。必死な私を見て何がそんなに可笑しいのだろう?理解出来ない、腹が立つ。

そうしてトドメを刺すこともなく、悪霊はその場を去って行った。どうやら放っておいても死んでしまう私に興味を無くしたらしい。

血はどうにか止まったが、悲しみ、怒りがゴチャ混ぜになり、頭は沸騰しそうだった。

どうしよう?最後の力を振り絞って、玉砕覚悟で悪霊に立ち向かおうか?・・・いや、そんな無駄なことするぐらいなら。

だから私は丘の上を目指したのだ。

星に願いを託すために。

私の大好きだったあの人の仇を取ってもらうために。

「お願い!!お星様!!どんな手を使っても良い!!あのクソ野郎をぶっ飛ばして!!・・・最後のお願いだから。」

そこまで言いかけて私は体の力が抜けて、その場に仰向けに倒れた。

あぁ、私死ぬんだな。失血死。本当に今日は星が綺麗。私の願い叶えてくれるかな?たっくん今行くね、無駄死にさせてごめんね。


こうして一人の少女が息絶えた。


廃病院で悪霊は彷徨っていた。何をするでもなく。ただ廃病院を彷徨う。

廃病院に来た人間を殺す理由は、悪霊本人にも分からない。ただ生きている人間を見ると無性に殺したくなるのだ。

悪霊になった経緯も、何を恨んで悪霊になったのかも忘れてしまった。ただ彷徨い、人を殺す害悪、それが今の彼女だった。

"ゴォオオオオオオ!!"

彼女はこれから自分がどうなるか知らない。知る由もない。自分が圧倒的な物量に押し潰されることを。

"ドォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!"



次の日、全国のニュースに〇〇市の病院跡地に巨大な隕石が落ちたことが報道された。廃病院は跡形もなく消し飛び、直径40メートルの大きなクレーターが出来て、〇〇市は一躍有名になった。

少女の願いが叶ったのか?それとも何かの偶然なのか?それは分からないが、宇宙の神秘が未知の悪霊を押し潰した。そう考えると胸がスカッとするではないか。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  うーん。タイトルを読んできれいな話かと思ったら、なんともやりきれない話だった。それでまちゃんと読ませて、ちゃんとオチもつけちゃうのは流石ですね。毎回思うことですけど引き出しの数がすごいで…
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