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お気に入り小説2

皇妃になる決意 女装した弟が皇太子殿下との結婚を狙って卒業パーティに乱入致しました。わたくしは弟に譲る気はありません。

作者: ユミヨシ

今日は王立学園の卒業パーティ。卒業生達やその保護者は、和やかにパーティを楽しんでいた。


そこへ、このフィレスト帝国のアレスティ皇太子殿下。金髪碧眼の美しい皇太子殿下であり、女生徒達にとても人気があった。


そんな人気者のアレスティ皇太子は皆に向かって宣言する。


「私は婚約者であるメリーディア・カルデルク公爵令嬢と、卒業を機に結婚を宣言する。

式はかねてからの予定通り、来月の一の日に行われるであろう。」


隣に立っているのは、黒髪碧眼の美しき公爵令嬢メリーディア。


寄り添うように立つ二人は、本当にお似合いで、卒業生たちは皆、拍手喝采で二人を祝った。


そこへ、ドレス姿で二人の前に憤然とした面持ちで進み出た人物がいる。


ミード・カルデルク公爵子息。

メリーディアの弟だ。


「この結婚に異議を唱えますう。ふさわしいのはあたしよ。あたしが皇太子殿下と結婚するの。帝国の皇妃になるのよぉ。」


皆、ミードをあきれたような顔で見つめる。


化粧は濃く、180cm越えの大男のミードが、ピンクのドレスを着て、アレスティ皇太子とメリーディアの前に立っているのだ。


「まぁなんて醜い。」

「さすが市井の生活が長いだけありますわ。」

「まったく、何かしでかすとは思っていたが…」


卒業生達は口々にミードの陰口を言う。


メリーディアはミードの前に進み出て、


「みっともない真似はやめなさい。わたくしは、貴方にアレスティ皇太子殿下も、帝国の皇妃の座も譲る気はありません。カルデルク公爵家の名を穢すつもり?下がりなさい。」


卒業パーティに出席していた、二人の父であるカルデルク公爵は青くなって、すっ飛んできて、


「ミード。下がるんだ。」


「いやですう。お父様っーー。私が皇妃になるのおーー。」


カルデルク公爵夫人は、扇を手に二人を睨みつけ、


「これだから、下賤の女の息子は…。だから、引き取るのは嫌だとわたくしは反対したのです。」


「しかしだな。ミードは私の血を引いているのだっ。だから。」


「おだまり。」


ミードはカルデルク公爵が平民の女と浮気して出来た息子である。

カルデルク公爵夫人に強く言われたら、黙るしかない。



そこへ、フィレスト帝国の皇帝と、皇妃が現れた。皆、頭を下げ、敬意を示す。


皇帝はアレスティ皇太子に寄り添うメリーディアに向かって、


「メリーディアよ。未来の皇妃としてのお前の決意。今、皆の前で話して欲しい。」


メリーディアはカーテシーをし、


「今更、わたくしが話さなくても、皆、解っております。皆の協力が無ければ、わたくし達は、結婚出来ていたかどうか。でも、皇帝陛下の命ならば、わたくしは皇妃としての決意をお話したいと思いますわ。」


顔を上げて、皆を見渡す。アレスティ皇太子がそっとメリーディアの手を握り締めて来る。

その顔を優しく見つめてから、メリーディアは2年前の事を思い出しながら、はっきりとした口調で話し始めた。


「皆が存じている通り、わたくしが皇太子殿下の婚約者として、指名されたのが今から2年前。カルデルク公爵家が帝国一の名門だと言う事が理由でした。そして、示された条件が、未来の皇妃になる事。それはもう、驚きました。だって…わたくしは、カルデルク公爵家を継ぐ為に、王立学園に入学して一年間、勉学に励み、自らを鍛えて過ごしてきたのですから。」


母であるカルデルク公爵夫人も、


「そうでしたわね。メリーディア。お前の婚約者をもっと早く決めておけばよかったと、この時ほど、後悔した事はありませんでしたわ。」


その言葉を聞いて、皇帝陛下は苦い顔をする。


メリーディアは頷いて、


「皇族の命令は絶対。その日からわたくしは、メラルドと言う名を捨てて、メリーディアと言う名で生きる事になったのです。

他国の公爵令嬢が、王妃教育が辛い、苦しいと愚痴っていると聞きましたが、それが何なのです?わたくしは16年間、男として生きて来たのに、卒業までの2年間。皇妃教育を受ける事になったのですわ。ドレスなんて着た事はない。化粧なんてした事もない。女性としての話し方なんて、した事はない。それなのに、マナーから、外国語から、ドレスの着こなしから、ダンスから。この二年間、毎日毎日、学園の授業の他に皇妃教育に追われてわたくしは苦しかった。」


メリーディアが涙を流す。

女子生徒達が皆、涙を流している。

男子生徒達もウンウンと頷いていて、


アレスティ皇太子がメリーディアを抱き寄せて。


「私が悪いのだ。だが私はどうしても皇帝になりたかった。この国を統べるのに、ドレスで出来るか。化粧に割いている時間などあるか。帝国の唯一の後継者である私は女である必要はないのだ。私に必要なのは王配ではない。私を支え、社交をしてくれる皇妃だ。だが、私は後継者を残さねばならん。フィレスト帝国の皇族の血が途絶えてしまうからな。だから、私が皇太子の間に、必ず男の子を産む。私と結婚する相手は褥では男性で無くてはならない。そして、皇妃として私を支えてくれる相手でなくてはならない。」


メリーディアは頷く。


「解っておりますわ。わたくしは入学当初から、皇太子殿下の事を尊敬しておりました。だから、辛くても苦しくても命とあらば、皇妃として、頑張って行こうと決意出来たのですわ。」


ルイス・ハミルトン公爵令息が近づいて、


「メリーディア様はよく頑張りました。心からお二人の結婚を祝福します。」


他にも数人の高位貴族達がメリーディアの前に進み出る。


「おめでとうございます。お二人に祝福を。」

「本当に良かった。」


メリーディアは涙を流して、


「お前達のお陰だ。お前達が時々、私を連れ出して気晴らしに付き合ってくれた。

一緒に、ご飯を食べたよな…。愚痴も聞いてくれた。本当に有難う。お前達は私の親友だ。」


思わず男言葉に戻ってしまう。


メリーディアにとって、この令息達は本当に仲の良い友だったのだ。


そこへ、レティシア・ミルディアルク公爵令嬢が数人の令嬢達と進み出て、


「おめでとうございます。アレスティ皇太子殿下はわたくし達の憧れでしたわ。

それからメリーディア様。おめでとうございます。」


メリーディアはレティシアに向かって、


「有難うございます。貴方には本当に助けられましたわ。」


アレスティ皇太子も礼を言う。


「レティシア。其方には本当に力になって貰った。」


ミルディアルク公爵家も名門である。

もし、アレスティ皇太子が男だったら、間違いなくレティシアが皇妃に選ばれたであろう。

しかし、アレスティ皇太子は女性だった。


レティシアは、二人の為に力になってくれたのだ。


「このクリームは肌を美しくするクリームですわ。どうか、メリーディア様、お使いになっては如何。」


教室で美肌のクリームを勧めてくれたり、隣国の言葉の習得にメリーディアが苦戦していた時、


「わたくしの母は隣国の出ですから、わたくしも隣国の言葉は得意ですの。わたくしとメリーディア様の会話は隣国の言葉で致しましょう。その方が習得が早いですわ。」


お昼ご飯を令嬢達と食べながら、隣国の言葉でレティシアと会話をしたりした。

他の令嬢達も、マナーの見本を見せてくれたり、メリーディアに協力的だったのだ。


「おめでとうございますっ。」

「本当にめでたいですわ。」


数人の令嬢達が二人を囲んで祝いの言葉を述べてくれた。


「有難う。皆様の協力のお陰でわたくしは、皇妃教育を耐え抜く事が出来ましたわ。」


令嬢達にも感謝の言葉を述べる。


すっかり無視されて、立ち尽くしている弟のミードは喚き散らした。


「だからってっ…あたしだってカルデルク公爵の血を引いているのよぉ。あたしでもいいじゃない。」


メルディーナは扇を手に、


「おだまりなさい。貴方は皇妃の器ではない。お話を聞いてはいなかったの?今やわたくしは、数か国語をマスターし、ダンスもマナーも全て習得したわ。警備員。この不届き物を摘み出しなさい。」


警備員がすっ飛んできて、不気味な女装をしたミードを両脇からがっちり拘束し、引きずっていく。


「あたしが皇妃になるのよぉーーー。離してっつーーー。」



野太い声が、会場の外へ連れ出されてからも、しばらく聞こえていた。



カルデルク公爵は皇帝陛下に向かって、


「息子が失礼をっ。」


「跡継ぎを考え直さないとならないのではないか?」


「そ、そうですな。」


ミードは3か月前に、公爵家に引き取られたばかりだった。

メリーディアが嫁いでしまうので、跡継ぎをミードにする予定だった。


しかし、このような騒ぎを起こしたのだ。

彼はカルデルク公爵家を継ぐことは出来ないだろう。

何よりも公爵夫人が許さないに違いない。


メリーディアは宣言する。


「わたくしは、皇太子殿下を支え、この帝国の繁栄の為に、身を捧げる事をここに改めて宣言致します。皆様、アレスティ皇太子殿下と、わたくしの為に、どうかお力をお貸しくださいませ。よろしくお願い致しますわ。」


卒業生全員が拍手をする。


皆に祝福されて、パーティも無事に終わり、

アレスティ皇太子とメリーディアは二人きりで、皇宮の庭を散歩していた。


アレスティ皇太子に声をかけられる。


「来月が結婚式だな。」


「そうですわね。あっという間の学生生活でしたわ。」


「本当にすまなかった。私の為に、メリーディアには苦労させた。」


「いえ、皇太子殿下の志に尊敬の念を抱いたから耐えられたのです。」


「メリーディア。お前は私の事を愛してはくれないのか?」


アレスティ皇太子が見上げて来る。

メリーディアはそっと抱き締めて、


「勿論、愛しておりますわ。わたくしも皇太子殿下の事が愛しくてたまりませんわ。」


その唇にキスを落としてから、


「結婚式が終わったら、急いて子作り致しませんといけませんわね。皇太子の間にお子を産んで頂かなくては…わたくし、うんと褥で頑張らせて頂きますわ。」


アレスティ皇太子は赤くなって、


「期待している。」


男としての全てを捨てて、この2年間生きて来た。

だが、褥では男であらねばならない。


メリーディアは愛しいアレスティ皇太子を、優しく抱きしめるのであった。



二人の結婚式は盛大に行われた。

全ての帝国民達に祝福され、帝国一の美男美女だと、口々に褒め称えられた。


結婚後、二人の仲は良く、アレスティ皇太子は男子を三人程産み、その後、皇帝へ即位した。

メリーディアは優秀で美しい皇妃として、諸外国に名を馳せた。


力になってくれた王立学園のクラスメイト達も出世をし、生涯、皇帝陛下と皇妃と交流があったと言う。


美しき皇太子殿下と、皇妃の銅像は、皇宮の庭に今も残されている。


婚約を申し込もうとした相手が、皇太子殿下にかっさらわれた上、性別が転換してしまいましたわ( ゜Д゜) レティシア視点書きました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっと読めました!!! なんて斬新な設定!(笑) 最初のミード公爵子息の『この結婚に異議を唱えますう』にまず???となったら、なんと、メリーディアまで男だったとは! この展開、むっちゃ面白…
[良い点] 最初、なぜ弟は女装?と思ったのですが、そういう事だったのですね。 [気になる点] 女王が後継ぎではいけなかったのか? ても、こんな話無かったので、面白かったです。
[気になる点] ミードは素ですか? [一言] 国に価値観を合わせるしか選択肢がなかった、という新しい価値観。 面白い展開でした!!
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